この記事は2007年3月に掲載されたものです。
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Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/概要
fringeが2006年6月2日(金)~4日(日)に実施した「Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー」(略称:PmP2006)のアーカイブです。資料及び特設ウェブログに掲載された主要記事等を再録します。所属・肩書等は当時のものです。
企画意図
小劇場演劇の制作者を支援するサイト「fringe」では、地域の制作者を支援するリアルな企画として、財団法人セゾン文化財団の助成を得て、「Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー」(PmP2006)を企画いたしました。
これは、地域の次代を担う中堅制作者を東京へ招き、普段なかなか訪れる機会のない演劇人や劇場と出会う場を提供するものです。経済的・人脈的な理由で他地域との交流や情報収集に限界を感じている人材に、積極的に参加してもらいたいと考えています。旅費(往復航空機または新幹線)は無償とし、宿泊も稽古場に貸し布団の実費程度で泊まれるようにいたしますので、参加者の実質的な自己負担は市内交通費・食費程度です。行程に観劇も2本組み入れますが、チケット代も上演団体のご厚意で特別割引とさせていただく予定です。人材育成が目的ですので、招聘対象者から参加費は徴収いたしません。
単なる東京事情の見学ではなく、自分なりの戦略・方法論を発見してもらうのが本企画の狙いです。地域の制作者の中には、目的意識が不明確なまま東京公演を実施したり、東京に本拠を移せば動員を獲得出来ると錯覚しているケースもあります。そうではなく、カンパニーが100あれば100通りの道があることを自覚し、地域にいながら個性と存在感を発揮する方法を模索する契機にしてほしいのです。本企画が地域間の手打ち公演やネットワークに成長していくことを期待しています。
演劇における制作者の重要性は、創造環境整備に目配りされている皆様なら充分にご理解いただけると思います。制作者の育成は不可欠ですが、その方法論が確立されていないことに加え、中堅以上のプロデューサーが次の展開を考える場が乏しいのが現状です。地域にあると言われる閉塞感を打破するためにも、制作者にこそ元気を与える必要があるのではないでしょうか。本企画は関西での制作者経験が長い私自身が、相手の境遇になって「こんな研鑽の場があれば」という思いで発案した内容です。
公共ホール職員には財団法人地域創造の「ステージラボ」や社団法人全国公立文化施設協会の「アートマネジメント研修会」といった、地域を超えた場が用意されていますが、民間の芸術団体の制作者にはそのような場が存在しません。特に地域の小劇場系カンパニーの制作者は、手探りで活動している状態です。演劇の創造環境整備を考える上で、まずそこを変えたいというfringeと財団法人セゾン文化財団の思いが一致し、本企画が実現することになりました。
本企画の趣旨にご賛同いただける皆様のご協力を心よりお願い申し上げます。
fringeプロデューサー/荻野達也
実施要領
実施体制
主催
助成
後援
NPO法人FPAP
運営協力
NPO法人アートネットワーク・ジャパン、(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
特別協力
燐光群/(有)グッドフェローズ、Oi-SCALE
協力(推薦団体は北から、ゲストは登場順)
NPO法人コンカリーニョ、財団法人盛岡市文化振興事業団、せんだい演劇工房10-BOX、東海シアタープロジェクト、財団法人広島市文化財団アステールプラザ、ピカラック、アサヒビール株式会社、Ort-d.d、ネオゼネレイター・プロジェクト、世田谷パブリックシアター、しのぶの演劇レビュー、有限会社ゴーチ・ブラザーズ、ザ・スズナリ、メジャーリーグ
事務局
fringeプロデューサー・荻野達也、この企画を後援するNPO法人FPAP(福岡パフォーミングアーツプロジェクト)から無償で派遣されたスタッフ2名、東京の公募スタッフ2名の計5名で構成しました。
参加者
本企画の趣旨に基づき、首都圏及びすでに東京と交流の盛んな関西圏を除いた全国から、小劇場演劇が盛んと思われる7地域を選びました。7地域は、fringeが開設以来培ってきたネットワークや取材から総合的に判断しました。
一過性のイベントではなく、本企画終了後は地元で実践的な活動を推進してもらえるよう、各地域から2名ずつの招聘としました。孤立することなく、互いに相談相手となれることを意図しています。人選と仲介業務は、地元の創造環境整備に目配りしている財団、NPO 法人、制作者組織に依頼しました。選考方法(指名・公募)は推薦団体が当該地域で最善と思われる方法を採りました。福岡が公募、他の6地域は指名となりました。
招聘参加(各地域2名、計14名)
- 札幌(NPO法人コンカリーニョ推薦)
住吉アキヨ(フリー)、小森望美(yhs) - 盛岡(財団法人盛岡市文化振興事業団推薦)
川村睦(劇団ゼミナール)、澤田綾香(香港活劇姉妹) - 仙台(せんだい演劇工房10-BOX推薦)
森忠治(tripod)、柴田環(TIME Create) - 名古屋(東海シアタープロジェクト推薦)
大橋敦史(東海シアタープロジェクト)、西杢比野茉実(少年王者舘) - 広島(財団法人広島市文化財団アステールプラザ推薦)
中井久美(演劇ユニット体温)、金沢章子(@label) - 北九州(ピカラック推薦)
北村功治(飛ぶ劇場、北中)、市原幹也(のこされ劇場≡) - 福岡(NPO法人FPAP推薦)
太田美穂(藍色りすと)、鶴田佳奈子(万能グローブ ガラパゴスダイナモス)
公募により、上記以外の希望者を自費参加で受け入れました。選考は事務局で行ないました。
一般参加(4名)
- 東京
三宅規仁(ホチキス、アーノルド.S.ネッガーエクスプロージョンシステム) - 岐阜
大原朋子(劇団あとの祭り) - 京都
植村純子(劇団衛星、NPO法人フリンジシアタープロジェクト) - 高松
植田良子(ポケティプロジェクト、シアター・プロジェクト香川)
(参考)
- 参加資格
- 地域の次代を担う中堅制作者。年齢不問。制作専任でなくても構いませんが、地元でプロデュース公演が打てる程度の実力を備えた方が望ましいです。
- 本企画に参加していることを実名(チラシに掲載される通り名含む)で公表出来ること。
- 本企画の趣旨に鑑み、公共ホール職員は対象外とします。ただし、公共ホールに勤務している場合でも、民間カンパニーの制作者を兼務していれば、その立場での参加を認めます。
- パソコン(携帯不可)でのメール送受信、fringeへのアクセスが可能なこと。
- 文章を書くことが苦にならず、本企画の特設メーリングリスト及び特設ウェブログに参加し、事務局の要請に応じて本企画に関する投稿が出来ること。
- ツアー中の行動についてはすべて自己責任を負うこと。
- 著作権や守秘義務を遵守出来ること。
- 参加費
- 招聘参加
無料、旅費無償(往復航空機または新幹線代を主催者負担)、宿泊は稽古場に合宿(貸し布団実費負担)。市内交通費・食費・観劇代(特別割引)は自己負担。- 一般参加
運営経費の一部として7,000円負担。旅費自己負担。その他は招聘参加と同じ。
スケジュール
2006年6月2日(金)~4日(日) 2泊3日 東京現地集合・現地解散
地元で別の仕事を持つことが多い制作者を考慮し、週末2泊3日で密度が濃い行程を組みました。移動時間を極力減らし、限られた時間で最大限の方とお会い出来ればと思いました。比較的公演の少ない時期を選び、FIFAワールドカップ日本戦の日程も考慮しました。
- 6月2日(金)
【セッション1】財団法人セゾン文化財団事務局 ●兼昼食会
【セッション2】根本ささ奈氏(アサヒビール株式会社社会環境推進部)
【セッション3】倉迫康史氏(Ort-d.d主宰)
【セッション4】にしすがも創造舎見学+蓮池奈緒子氏(NPO法人アートネットワーク・ジャパン事務局長)
【セッション5】大西一郎氏(ネオゼネレイター・プロジェクト主宰、横浜演劇計画代表、横浜舞台芸術活動活性化実行委員会(SAAC)委員)
●夕食会(懇親会) - 6月3日(土)
【セッション6】こまばアゴラ劇場見学+松尾洋一郎氏(青年団制作)
【観劇1】燐光群『民衆の敵』俳優座劇場
【セッション7】古元道広氏(燐光群/(有)グッドフェローズ制作部)
【セッション8】矢作勝義氏(世田谷パブリックシアター制作部)
【観劇2】Oi-SCALE『キキチガイ』シアタートラム(終演後、バックステージツアー)
【オプション企画】矢作勝義氏(世田谷パブリックシアター制作部) - 6月4日(日)
【セッション9】高野しのぶ氏(現代演劇ウォッチャー/ライター)
【セッション10】伊藤達哉氏(阿佐ヶ谷スパイダース制作代表)
【セッション11】市川絵美氏(ザ・スズナリ主任) ●兼昼食会
【セッション12】笹部博司氏(メジャーリーグ)
6月3日は、燐光群の上演時間が2時間30分(休憩込み)あるのはわかっていたのですが、Oi-SCALEも2時間10分あったため、実際には矢作勝義氏によるバックステージツアー以降がその分ずれました。店を出たのが24時になったため、こまばアゴラ劇場へは渋谷経由で電車で帰りました。
それ以外はタイトなスケジュールながら、ほぼ予定どおりに行程を進めることが出来ました。参加者全員による撤収作業と、事務局員の機敏な動きに支えられてのことです。天候に恵まれたこと、交通機関の乱れがなかったことも幸いしました。
限られた時間で最大限の方とお会いするということは、ともすればセッションの内容が細切れになり、印象を薄くする恐れがありました。そこで「講師によるレクチャー」ではなく、参加者自身による「ゲストへの取材」というスタイルを全面的に採用し、参加者が事前に予習を重ねた上でインタビューさせていただきました。一般的に取材は1時間程度だと思いますので、違和感のない時間配分になったのではないかと思います。
取材は地域ごとにチームを組みましたが、どのゲストを担当するかに大きな意味を持たせました。旅公演、人的なつながり、参加者の勤務先との関係などを考慮し、そのゲストから刺激を得て、共通する課題に立ち向かってくれることを願いながらマッチングさせました。倉迫康史氏=北九州チーム、古元道広氏=名古屋チームは、関係を知る方には楽勝に映るかも知れませんが、それぞれトップバッターとして見本を示す役割と、劇場ロビーでの超タイトな進行をこなす役割を担ってもらいました。
ゲストの多くは企画の趣旨にご賛同いただき、無償で「取材」をお受けいただきました。厚く御礼申し上げます。制作者のためになる企画なら協力を惜しまないという方が、演劇界には多数いらっしゃいます。制作者は決して孤独ではありません。
参加者からのリポート
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/セッション概要(1)
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/セッション概要(2)
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/参加者リポート(1)倉迫康史氏を取材して
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/参加者リポート(2)大西一郎氏を取材して
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/参加者リポート(3)松尾洋一郎氏を取材して
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/参加者リポート(4)古元道広氏を取材して
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/参加者リポート(5)矢作勝義氏を取材して
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/参加者リポート(6)高野しのぶ氏を取材して
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/参加者リポート(7)伊藤達哉氏を取材して
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/参加者リポート(8)市川絵美氏を取材して
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/参加者リポート(9)笹部博司氏を取材して
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/高崎大志が全体を振り返る(1)
Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー/高崎大志が全体を振り返る(2)