この記事は2001年3月に掲載されたものです。
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照明の種類
照明機材そのものを灯体(とうたい)という。照明は灯体の設置されている位置による名称と、その灯体がつくる明かりの状態による名称がある。
位置で定義すると、舞台上の長方形ボックスのライト群をボーダーライト(ボーダー)、照明バトンに単独で吊り下げるものをサスペンションライト(サス)と呼ぶ。ボーダーはエリア全体、サスは限定された位置を照らすことになる。このため「(役者が)サスに入る」「サス位置」など、サスという言葉は演出用語にも広く用いられる。ボーダーライトと同じものが舞台前端の足元に用意されているのがフットライトである。舞台面に埋め込まれている劇場もあれば、舞台上に置く場合もある。客席天井から舞台を照らすものをシーリングライト(シーリング)、客席側面から照らすものをフロントライトと呼ぶ。
舞台最後部にはホリゾント(ホリ)と呼ばれる白幕があり、これに照明で変化を付けることが出来る。ホリゾントを上から照らすものをアッパーホリゾントライト(アッパーホリ)、足元から照らすものをロワーホリゾントライト(ローホリ)と呼ぶ。小劇場ではホリゾントはあまり使わず、大黒(おおぐろ)と呼ばれる暗幕を吊って隠すことが多い。ただし、舞台装置を使わない素舞台の作品では、ホリゾントは大きな演出効果をもたらす。
客席後方や横から役者の動きに合わせて照らすものをピンスポット(ピンスポ、ピン)という。舞台横から照らすものはサイドスポット、英語を略してSS(エスエス)という。客席上部に回廊(ギャラリー)がある劇場では、ギャラリースポットを置く場合もある。大黒に散らせて星のような効果を出す電飾を星球(ほしきゅう)という。
舞台上の照明器具を隠す横長の幕で最前列のものを一文字幕、それより後ろをカスミ幕と呼ぶが、小劇場では機材が見えて当然なので、こういったものは存在しない。上記の各種ライトも、プロセニアム形式の中劇場や大劇場でこそ備わっているが、小劇場は単にバトンだけがある場合が圧倒的である。
明かりの状態では、舞台全体を均等に照らす地明かり(じあかり)、特定の場所だけを照らすサスなどがある。サスは前述のサスペンションライトのことで、それによって照らされた状態そのものを意味する。サスを客席に向かって照らすことをバックサスといい、観客にとっては逆光となる。特に観客の目に入るようにするのが目潰しで、衝撃的な登場シーンなどに使われる。仕込み時の色なし照明を作業灯といい、ボーダーによる地明かりや小劇場の天井にある蛍光灯などが使われる。