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福岡県を中心に、LPガス販売など「住」に関する事業を展開する株式会社明治産業。地元では「明治ガス」の愛称で親しまれている。これまで様々な分野のCSR活動を行なってきたが、2024年から演劇の手法を活用とした社内研修や会社説明会のリリースが目立っている。

(2024年)
7月19日 演劇作品を用いたリスペクト・コミュニケーション研修
※PUYEY『おんたろう』が初の企業研修として上演。
10月24日 【大学生限定】オープンカンパニー×アートワークショップ「ちょっといきなり本読み」
※会社説明会のあと、参加者と戯曲の読み合わせ。「福岡で演劇体験を楽しむ一週間 岩井秀人のコミュニケーションワークショップ」の一環で企画され、講師は岩井秀人氏(ハイバイ主宰)。

(2025年)
1月22日 【大学生限定】オープンカンパニー×アートワークショップ「演劇」(2024年8月から延期開催)
※会社説明会のあと、参加者と演劇的な手法を用いたワークショップ。講師は古賀今日子氏(yum yum cheese!、月光亭落語会)。

これは内部に演劇界とつなぐキーパーソンがいるのだろうと思ったら、制作者である菅本千尋氏(演劇空間ロッカクナット、本拠地・福岡県&東京都)が22年4月に入社していた。同社の公式note「明治産業 presents 文化の熱源」で詳しく紹介されているので、公然情報として紹介したい。このnoteを読むと、学生時代から演劇に関わり続けた菅本氏がなぜ明治産業を選んだのか、照明家と制作者を兼ねている経緯などもよくわかる。

菅本氏と言えば、24年だけでも演劇空間ロッカクナットとして全国各地で複数のアート作品をプロデュース、個人ではNPO法人Explat×一般社団法人ベンチのアートマネージャー・メンターシッププログラム『バッテリー』第3期に選ばれ、コトリ会議『おかえりなさせませんなさい』の共同制作者として参加し、年末年始には創作を直接の目的としないアーティスト・イン・レジデンス「めぐりめぐって現在地。ここから、」を企画・運営し、すでに全国区の知名度ではないだろうか。一般企業に就職しながら活動を続けているのは驚きだ。

てっきりCSR専門職で入社したのかと思ったら、営業が本務とのこと。確かに第一線の営業部員として「リクナビ」に登場している。同社では23年3月から社員自身がアート活動を企画・実施する「MAC(Meiji Art Culture)会議」が設けられ、就業時間中に活動することが認められている。

さらに菅本氏は、23年11月~12月は演劇の現場が集中したため、同社初となる「アート休職」として2か月間休職し、PUYEY(本拠地・福岡県)、マルレーベル(本拠地・福岡県)の各3都市ツアーや、がらくた宝物殿(本拠地・東京都&福岡県)第1回東京公演、BUoY無為フェス「クロス×クロスin北千住BUoY」などに演出助手や照明で参加。復職後は「すんなり平常運転に戻ることが出来ました」という。こうした経験が24年以降の活動につながっているのだろう。

地域では社会人と演劇活動の両立はめずらしくないが、その経験を勤務先にフィードバックし、社内研修や会社説明会に活かしていくのは特筆される。企業規模にもよると思うが、ロールモデルとして得るものは多いのではないだろうか。