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in→dependent theatreグループ(大阪・日本橋)は、2018年度から季節によって劇場費が変動する「シーズンプライス」の試験導入を8月15日発表した。新料金体系は即時適用となり、契約済みの場合は利用者が有利になる場合に限って適用する。

in→dependent theatre公式ブログ「シーズンプライス導入のおしらせ」

シーズンプライスでは同劇場で公演の少ない春季を5%割引とし、公演の過密な秋季を3%割増にする。対象はin→dependent theatre 1st/2ndの両劇場。2018年の具体的な日程は次のとおり。

  • 春シーズン:4月2日(月)~5月6日(日) ⇒5%割引
    ※連続5日間以上利用の場合は8%割引
  • 秋シーズン:10月1日(月)~11月11日(日) ⇒3%割増
    ※連続5日間以上利用の場合は割増なし

春秋とも5日間以上利用の場合は有利となり、公演の分散と長期化を誘導している。閑散期である春季の長期利用が最も優遇される。

劇場費は平日と休日で変わるのが一般的だが、季節による変動はめずらしい。同劇場では、「劇場の公式な仕組みとしては、国内ではほぼ前例の無い試みだと思います」としている。

今回導入する理由は、社会人比率の高い関西小劇場界では、異動・期初である4月の公演が打ちづらく、ゴールデンウィークも集客が厳しいことから、春季の劇場稼働率が大きく下がっているため。この時期は助成金の採択結果が直前になるまでわからず、朝日放送がABCホール(大阪・福島)でゴールデンウィーク中に開催する「中之島春の文化祭」に多数のカンパニーが参加することも、利用が低迷する一因になっているという。17年春シーズンの6週間では、in→dependent theatre 1stは1週しか稼働していないとしている。

単なるディスカウントは、「早くから劇場を押え、きちんと定価を支払って劇場を使って下さるお客様に対して不誠実な事だと私たちは考える」とし、劇場費自体を改定することとした。劇場費は現状でも「劇場として存続できる底値」で、これが最大限の企業努力であることを示している。

是非、このシステムを利用して「少しでも安く使えるなら春公演を少し前倒ししよう!」「どうせ秋の公演で割増になってしまうなら、使用日程を1日伸ばして、もっと沢山のお客様に見て貰う努力をしよう!」など、劇団の公演時期や制作方針を見直すキッカケにもなればと思います。

このようにシーズンプライスの導入は、劇場稼働状況のバランスによっては経営に打撃が出る可能性もある、かなりリスキーなものです。それでもインディペンデントシアターは踏み切ります。当劇場が20周年を迎えたあと…、このあと5年や10年、さらにその先の演劇環境がより良くなっているために。

特定の時期に公演が集中し、その期間も週末だけの場合が多い関西小劇場界の現状に対し、劇場側が劇場費の面から改革を促す注目の試みと言える。