3月発行予定のAICT(国際演劇評論家協会)日本センター『シアターアーツ』(晩成書房)70号に掲載される「2025AICT会員アンケート」に参加させていただいた。作品5本は今回から順位なしになったが、私の順位は書いたとおりの順番である。
小劇場演劇に観客が戻らない中、チケット代の値上げやソワレの減少が目立ち、常連客とそれ以外の二極化、タコツボ化を強く感じた一年だった。一定の評価を得た団体が、商業演劇と変わらないチケット代で上演するのは理解出来るが、そうではない団体までがギャラをチケット代に転嫁するのは、「業」になることを急ぎすぎていないだろうか。チケット代を抑えて公演する方法は、小規模ならいくらでもある。ワーク・イン・プログレスやトライアウトを重ねるのではダメなのか。若手にこそ、こうした上流過程から伴走する制作者が必要で、本当に魅力的な作品なら制作者のほうから手伝いたいと思うはずだ。
私が長年小劇場演劇を支援してきたのは、チケット代だけではどうしても採算が合わない構造的矛盾に、人生を懸けて向き合っている演劇人に共感するからだ。いまのところ、公演をショーケースにして、マスコミや教育で演劇の職能を活かすことがセオリーになっているが、それだけではない可能性があると思うし、前例のない道を切り拓くことが演劇に関わるロマンだと思う。そのためにも観劇の間口を狭めないでほしい。公演以外で収益化出来ることはないのか。予算を公開して寄付を募る努力はしているか。どうしても値上げするなら、席種を細分化して幅広い価格帯を設けてほしい。
作品では、ほろびて、あやめ十八番、滋企画が集大成とも言える内容だった。ポウジュは問題作に挑んだ覚悟、かるがも団地は再演だが新しい世代の『わが町』に出会った感覚に惹かれた。アーティストは、音楽監督がいてこその完成度だと感じる瞬間が多いあやめ十八番から2人を入れた。
■優れていた作品(5本まで)
○ほろびて『ドブへ INTO THE DITCH』吉祥寺シアター
○あやめ十八番『金鶏 一番花』東京芸術劇場シアターイースト
○滋企画『ガラスの動物園』すみだパークシアター倉
○ポウジュ『Downstate』駅前劇場
○かるがも団地『意味なしサチコ、三度目の朝』吉祥寺シアター
■優れていたアーティスト(3名まで)
○細川洋平
○堀越涼
○吉田能
■年間回顧(400字程度)
演劇分野全体の市場規模はコロナ禍前を超えたが、小劇場演劇は観客が戻らず、物価高騰や待遇改善でチケット代の値上げが止まらない。観客が入らないからとソワレも激減している。演劇のタコツボ化がさらに進む負の連鎖ではないかと危惧する。文化庁のクリエイター支援基金による海外展開のための人材育成は進んでいるが、足元の国内公演の脆弱性への施策こそが急務なのではないか。演劇界の裾野を支えてきた小劇場演劇が「業」になるのか、正念場を迎えている。
厳しい状況下で、中堅団体による集大成とも言える作品が記憶に刻まれた。壮大なメタファーが特徴のほろびては、抑圧による過去と未来を重ねた。テレビ黎明期を二部作で描いたあやめ十八番は、歌舞伎を映像で見ることの是非という背反二律を問い掛け、コロナ禍で不要不急とされた演劇を劇場で観る意味を再確認させた。滋企画は満を持しての三作目。こまばアゴラ劇場から飛び立った才能がその名を馳せた。
■年間の観劇本数
約70本