この記事は2001年3月に掲載されたものです。
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舞台にて
舞台に出ていくことを出(で)、舞台からいなくなることをハケという。両方合わせて出ハケである。役者だけでなく、装置や道具にもハケるは使う。道具や衣裳が出ハケの邪魔にならないよう、介添えをすることを介錯(かいしゃく)という。介錯は装置の転換などにも必要。出番を忘れて出のタイミングを逃すことを出トチリといい、役者が最も恐れるケアレスミスの一つである。
出ハケを役者別に一覧表にしたものが香盤表(こうばんひょう)である。映画ではシーンの撮影に必要な情報をすべて網羅したタイムスケジュールのことを指すが、演劇では役者別にシーンの出ハケを書いた一覧表のことを指す。演出家や演出助手が作成することが多く、楽屋や舞台袖に貼って出トチリのないよう備える。
役者は袖や装置から出ていくわけだが、最初から舞台にいることを板付きという。板とは舞台のこと。小劇場では緞帳を使わないことが多いので、板付きは暗転で行なうことになる。これを暗転板付きと呼ぶ。狭義では開演時のみを指すが、上演中の暗転後にも使うことがある。
舞台上での役者の位置を、一般的に立ち位置という。演出家は立ち位置を変えながら全体の見栄えを考える。役者だけでなく、舞台装置も含めた全体の配置をミザンス(ミザンセーヌ)と呼び、「その立ち位置だとミザンスがよくない」などと使う。舞台上で役者が演技に使える範囲はアクティングエリアで、装置類を建て込んでいる場合はアクティングエリアが狭くなる。
役者が観客にちょっかいを出すのを客いじり、客をいじるという。客席から声を掛けたり、客席に下りて触ったり、観客を舞台に上げるなどの手法がある。
立ち位置や道具の置き場所にテープで目印を付けることを、バミるという。そのテープ自体はバミリと呼ぶ。元々は、なにもない稽古場で装置を感覚をつかむために、ビニールテープを床に貼って場を見ること、つまり場見ることから派生したと思われる。なにもないところに、あるべきものの位置を示すというのが本来の意味である。最近では放送業界にも広まっているが、語源は知られていない模様。高校演劇などではビニールテープで印を付けることも多いが、小劇場ではテープに頼らず自分で覚える。ただし、暗転中の転換だけは蓄光テープでバミることが多い。