演劇の創客について考える/(40)小劇場のロビーに必要なのはハイカウンターではないか

カテゴリー: 演劇の創客について考える | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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映画のミニシアターと演劇の小劇場。どちらも心躍る空間ですが、異なるのは前者が終日開かれているのに対し、後者は上演時間以外は扉を閉ざしていることでしょう。上演がなくてもロビーまで常時オープンしている小劇場は、複合施設の中でホワイエとして共用している場合だけではないかと思います。

そして、ほかにもミニシアターをミニシアターたらしめている什器の存在に気づきました。ロビーのハイカウンターです。多くのミニシアターにはハイカウンターがあり、チケットやグッズ販売、コンセッションで使われています。小規模なのでシネコンのように分かれておらず、同じスタッフがハイカウンター内で兼務出来るようにつくられています。

これに対し小劇場は、常設のハイカウンターはほとんど見かけず、長机を置いて対応していると思います。確かに仮設の長机のほうが、普段はロビーを広く使えて作業の邪魔にならないからでしょう。しかし、観客の視点で考えると長机に比べてハイカウンターのほうが、圧倒的に劇場に来た感覚がするのです。長机の受付というのは、観客も職場や学校でいつも体験していることなので、その延長に思えてしまうのです。

ハイカウンターの大きなメリットは、観客に手元が見えないことです。小劇場の受付で多く見られる名前の付箋を貼った取り置きチケット、予約客のリストなど、見えなくてもよい個人情報がハイカウンターだと隠せます。金庫も直接見えないので、防犯上も優れていると思います。なお、ハイカウンター=立って接客するという意味ではなく、ハイカウンター用の折り畳みイスを用意すればよいでしょう。

常設のハイカウンターがある小劇場として、私が思い浮かぶのはシアター風姿花伝(東京・目白)です。「SPICE」掲載の写真がわかりやすいと思います。ロビーは決して広くありませんが、コンクリート打ちっぱなしの壁に木製のL字ハイカウンターがぴったりで、ミニシアターに近い雰囲気です。受付や物販はもちろん、劇場プロデュース公演のときはここでドリンクを販売することもありました。現在は観客以外の方も訪れる路面店の「COFFEESTAND FUUSIKADEN」になりましたが、カウンターでの販売も素敵でした。

カウンター裏側の観客から見えない高さに、チケットやリストを広げられる作業台がある既製品は意外に少ないです。ハンドメイドのショップですが、この作品が私のイメージに近いです。内装を自前でやってしまう小劇場のスタッフなら内製も可能でしょう。キャスター付きで動かせるようにすれば、作業の邪魔にもならないと思います。制作者も備品に長机しかないから使っているわけで、もしハイカウンターがあれば、ロビーの雰囲気が変わると考えている方は少なくないと思います。

ハイカウンターがあると、そこにグッズやPOPを置いて、受付のときに興味を惹かせる「レジ横販売」も効果的です。ロビーが狭い小劇場で、長机の物販コーナーに立ち寄る観客が少ないと感じている制作者は、最初の受付でのアプローチが重要ではないかと思います。

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