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7月2日、約1トンの本水を使用する公演の場当たり中に排水ホースが外れて噴水したと、複数の関係者がTwitterに書き込んだ。当該公演は劇団BOOGIE★WOOGIE(本拠地・東京都千代田区)『弓張月~THE FINAL★ARROW~』(7/3~7/12、東京・d-倉庫)で、照明増員で参加していた米野直樹氏によると、排水ホースが水に無効なビニールテープでつながれ、照明機材の養生もされていなかったため、天井までの噴水で灯体が冠水したという。照明ユニットが浸水する可能性もあったという。

米野氏は大劇場や商業演劇の経験も豊富なベテラン舞台監督で、照明・音響も手掛ける。漏電等、安全面での対応が不足しているとし、「無給でもいいから明日来て対応する」と伝えたが、劇団側がこれを断わったため、「情報を広め、危機管理意識を高めてもらおう」との意図から、Twitterで劇場名を公開した。

本件はTwitterで拡散されて話題となり、3日の初日本番直前に劇場、カンパニー双方がTwitter公式アカウントでコメントを発表する事態となった。

新宿シアター・ミラクルの池田智哉支配人は、この状況を受けて緊急飲み会を呼び掛け、当事者である米野氏も参加した。この模様はUstreamで中継され、録画も見られる。米野氏は、劇場機構を損傷させる寸前でありながら、場当たりを止めなかった劇場側の対応にも問題があると指摘している。池田氏は、(劇場契約にも明記しているため)「シアター・ミラクルでやっていたら、間違いなく公演を止めている」と語っている。

NEVERまとめ、Togetterでもまとめられている。舞台監督の重要性や劇場の安全管理について、改めて強調されている。

NEVERまとめ「d-倉庫  水事件」
Togetter「小劇場と『舞台監督』と『安全』について」

本件については、公演期間中に実名公開することへの批判もあるが、豊富な経験を持つプロフェッショナルのベテラン舞台監督が、増員で呼ばれた先で危険を察知し、対応を申し出たにも関わらず断わられたため「内部告発」したものだ。米野氏は小劇場の現場も多く、Ustreamで語っているとおり「小劇場の限界に挑戦し、無謀とも呼ばれることも行なってきた」方である。その米野氏の判断であることを、批判している人々は真摯に考えるべきだろう。

そもそも本水は危険行為であり、スキルを持つ舞台監督のいる現場でしか出来ないことである。プロの舞台監督を雇えないなら、その演出行為はしてはいけない。安全より重視される表現などない。Ustreamでは、単に予算がないという理由でプロを雇わないのではなく、予算全体の中でプロを雇う工夫が足りないとの指摘もあった。プロを雇うことで逆に大道具代が安く上がったり、効率の良い作業が出来ることもある。プロのスタッフに依頼出来ていないカンパニーは、プロを雇う意味を再確認すべきだろう。

Ustreamでは、演劇界では事故が公表されず、ノウハウとして共有されにくいという話題も出た。動員に影響を与えてはいけないと、死亡事故でさえ隠されることが多い。伝聞ではなく、業界内での「ヒヤリハット事例集」としてアーカイブされるべきではないだろうか。なお、公演制作現場での安全確保については、実演芸術に関わる組織が結集した劇場等演出空間運用基準協議会(基準協)がガイドラインを出している。無償ダウンロード出来るので、参考にしてほしい。

劇場等演出空間運用基準協議会「劇場等演出空間の運用および安全に関するガイドライン ver.2」