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東京の小劇場系カンパニーによる旅公演は増えてきたが、まだ大都市が中心だ。そんな中、トリのマーク(通称)が5月に広島県尾道市で、劇団天然工房が6月に長野県上田市でそれぞれ公演を行なう。そのきっかけを紹介したい。

トリのマーク尾道公演『ゼームズ帽子店』(5/25、尾道・帆雨亭)は、同実行委員会が主催。同市在住の作家で、市立尾道大学芸術文化学部講師の光原百合氏が実行委員長を務め、尾道市や尾道市教育委員会が後援している。光原氏は以前からトリのマークの東京公演に足を運んでおり、尾道での公演を実現させた。現地での会場探しから始まる「尾道公演プロジェクト」のドキュメントが、トリのマークサイトで連載されている。

トリのマーク(通称)のホームページ「おのぷろぺ」(尾道公演プロジェクトページ)
http://www.bananawani.org/tori/onopurope/onopu.html

劇団天然工房上田公演(6/14~6/15、旧上田第一中学校跡地内音楽室)は、同カンパニーと天然工房を呼ぶ会、上田市教育委員会の三者が主催。きっかけは2002年9月に寺を題材にした作品を上演することになり、その取材で座禅修行が出来る寺を探していて、長野県丸子町にある長昌寺と出会ったという。同寺の住職の計らいで、演劇好きな座禅の会メンバーとカンパニーが知り合い、呼ぶ会が結成された。03年2月には東京公演を観るバスツアーも企画され、成功を納めたという。

会場は廃校となった中学校の音楽室。作品も音楽室をモチーフにした新作『ソプラノ』が上演される。すでに4月には現地で1回目のワークショップとプレトークイベントが開催され、6月の公演・ワークショップ・アフタートークイベントと併せて「うえだ演劇体験プログラム2003」のタイトルで告知されている。劇団天然工房は2000年4月旗揚げの若いカンパニーだが、02年にシアターグリーン大賞を受賞、動員も1,000名を超えている勢いのある集団だ。

うえだ演劇体験プログラム2003サイト
http://www.rokumonsen.com/soprano/

両カンパニーとも現地からの熱いラブコールで旅公演が実現したもので、ツアーの理想形と言えるだろう。会場にこだわるトリのマークが尾道という格好の場を得たこと、劇団天然工房が地元を巻き込んでのイベントに公演を昇華させたことは、他のカンパニーにも大きな刺激となるだろう。両公演の成果に注目したい。