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平日ソワレの開演時間を少しでも遅く

小劇場公演の多くは、平日ソワレの開演時間を7時または7時30分に設定しています。劇場の退出時間は10時がほとんどですから、上演時間を約2時間とすると、7時30分が設定可能なギリギリの線であることは理解出来ます。

しかし観客の立場になってみると、勤め帰りの社会人にとって7時や7時30分はゆとりのない、相当気合を入れて仕事を片付ける必要のある開演時間です。社会人以外でも、落ち着いて夕食を取ってからの観劇は難しいでしょう。新しい観客を開拓するために、場合によっては劇場延長料金を支払ってでもレイトショーを設ける試みはどうでしょうか。

8時開演のレイトショーがあれば、多くの社会人が観劇可能でしょう。演劇ではこうしたレイトショー自体が少ないので、宣伝する際もレイトショーである旨を大きく告知し、社会人に理解のあるカンパニーであることを訴えるべきでしょう。上演時間が事前に決まっているなら、退出時間に間に合う範囲で、毎回の開演時間を遅めに設定することも可能でしょう。

平日ソワレの開演時間を少しでも遅く出来ないか

前半の観客こそクチコミの伝導師

クオリティの高い作品をつくっていれば、たとえそれが無名であってもクチコミで評判を呼ぶと信じている人は多いでしょう。それは事実でもある反面、公演期間が短ければクチコミが広まるころには肝心の舞台は終わっています。次回公演へつながるとしても、観客の興味を半年先まで維持するのは困難ですし、再び同じクオリティを示せる保証はどこにもありません。最高の作品が2回続くことがそうはないことを、制作者であるあなた自身がよくわかっているはずです。

演劇は一度限りの記録出来ない表現です。手応えを感じたならば、その公演期間中に新しい観客の目に触れさせる必要があります。その意味で、クチコミが集客につながる公演期間前半の観客こそが貴重であり、彼らにいかに訴えるかがポイントです。公演初日はプレビュー公演として半額や無料で上演してもいいかも知れません。初日終演後はオープニングレセプションとして観客に残っていただき、無料で飲食をふるまう手もあるでしょう。大々的に告知し、初日へ来場させるインセンティブとして活用するのです。

演劇の世界では、関係者が居残っての初日乾杯はめずらしくありません。しかし、なぜ関係者だけなのでしょう。美術の個展では、観客も交えたオープニングパーティーが開かれることがあります。初日の観客こそ、評判を世間に広めてくれるクチコミの伝導師です。無料でもてなしても、決して損ではないでしょう。客席内は飲食禁止でも、養生シートを敷けば認めてくれる劇場は多いと思います。演劇でも、観客に「残ってお酒を飲みながら感想を聞かせてください」という集団はありますが、なぜチラシにきちんと載せないのでしょうか。

初日の観客をつかむための工夫

平日マチネの可能性

観客によっては平日マチネのほうが行きやすいケースもあります。特に学生向けに安価な平日マチネ料金を設定して公演することは、若い客層の掘り起こしになるでしょう。

平日マチネ料金

イベントは公演前半に企画

ポストパフォーマンストークなど、集客につながる付帯イベントは公演前半に企画しましょう。こうしたイベントは作品の落ち着く後半に持っていきたいと思いがちですが、ゲストを招いてのポストパフォーマンストークは、宣伝によっては動員につながります。なるべく早い段階に実施して観客に来場してもらい、その評価が公演後半につながるようにしたいものです。

ポストパフォーマンストークは比較的運営の簡単なイベントです。逆に準備が必要なワークショップやバックステージツアーなどを、公演後半に設定してはどうでしょうか。どちらも公演の入っていない昼間に設定すれば劇場の有効活用になります。劇場費が全日料金のところはお得ですし、ステージ単位のところも交渉の余地があると思います。

イベントの数々

季節と動員の関係性

興行の一般的傾向として、二八(にっぱち)と呼ばれる2月と8月は真冬・真夏で観客が入らないと言われたものですが、現在は観客の生活も多様化し、一概にそうは言えなくなっています。8月のお盆が閑散期なのは事実ですが、2月は積雪などの天候条件を別にすれば、特別不利ということはないと思われます。

公演を年2回打つカンパニーの多くが、季節としては春と秋を希望しますが、春は観客の生活環境が変わったり、学校や職場での行事や仕事の締切も多く、3月後半~4月前半は集客のマイナス条件が山積しています。また、多くのカンパニーがこの季節に公演を打ちたがるということは、客層の同じ公演が重なることにもなります。春の公演シーズンを意図的にはずし、劇場を抑えやすい2月を選ぶという考え方もあるのではないかと思います。

年末年始の公演は、公共ホールでは職員の勤務上不可能だと思いますが、民間の劇場では受け入れてもらえる場合があります。冒険ではありますが、「やってみると入った」という実例が多いようです。ただし、大晦日だけは人気公演でも苦しいようですので、休演日にするのが無難でしょう。

クリスマスは、観劇をデートコースと考えた場合に最適と思われがちですが、ウェルメイドな人気作品を除いては、集客に非常に苦戦するようです。特にクリスマスイブは入りません。12月23日の天皇誕生日もあるため、一見魅力的な公演時期に映りますが、慎重な日程の設定が求められます。

ゴールデンウィークは評価が分かれるようです。元々映画業界が一年で最も集客の多い時期ということで名付けたものですが、旅行に出かける観客もいれば、祝日の夜にわざわざ外出したくない観客もいるでしょう。土日祝が多く入ることで、劇場費も上がります。劇場の立地や客層などを充分に吟味する必要があるでしょう。

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