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小劇場演劇でフルカラーの仮チラシを複数作成した例としては、2007年にin→dependent theatre(大阪・日本橋)が劇場プロデュースとして2劇場同時公演した『ポーカーフェイスアパートメント』『ファイティングブロードキャスト』で30種類を作成したのが最多と思われるが、これは劇場保有の「オルフィス」(理想科学工業のインクジェット式高速プリンタ)を使用したものだった。

fringe blog「30種類の仮チラシ」

あれから10年、フルカラー印刷の仮仮チラシ4種類、仮チラシ9種類、ポスター、本チラシを駆使した鵺的トライアル『フォトジェニック』が上演される(1/10~1/15、東京・SPACE梟門)。鵺的(本拠地・東京都江東区)の番外公演で、俳優と並行して写真家の活動を続ける橋本恵一郎氏(欲棒仙人π)が出演と宣伝写真を担当、09年の鵺的旗揚げから宣伝美術を手掛ける詩森ろば氏(風琴工房)が仮仮チラシの段階から宣伝美術を担当している。

SNSで確認出来る各チラシの作成状況は次のとおり。

  • 2016年5月中旬~
    仮仮チラシ(A4判)×4種類(2,500枚×4種類=10,000枚)
    ※奥野亮子氏(鵺的)をモデルにした4種類
    ※各画像はFacebookの紹介記事へリンク

    鵺的トライアル『フォトジェニック』仮仮チラシ 鵺的トライアル『フォトジェニック』仮仮チラシ 鵺的トライアル『フォトジェニック』仮仮チラシ 鵺的トライアル『フォトジェニック』仮仮チラシ 仮仮チラシ

  • 2016年8月下旬~
    仮チラシ(A4判)×9種類(2,500枚×8種類+500枚×1種類=20,500枚)
    ※出演する女優4名(奥野亮子氏、川添美和氏、小崎愛美理氏、堤千穂氏)×2種類+1種類(画像非掲載)
    ※各画像はFacebookの紹介記事へリンク

    鵺的トライアル『フォトジェニック』仮チラシ 鵺的トライアル『フォトジェニック』仮チラシ 仮チラシ(奥野亮子版)

    鵺的トライアル『フォトジェニック』仮チラシ 鵺的トライアル『フォトジェニック』仮チラシ 仮チラシ(川添美和版)

    鵺的トライアル『フォトジェニック』仮チラシ 鵺的トライアル『フォトジェニック』仮チラシ 仮チラシ(小崎愛美理版)

    鵺的トライアル『フォトジェニック』仮チラシ 鵺的トライアル『フォトジェニック』仮チラシ 仮チラシ(堤千穂版)

  • 2016年10月下旬
    本チラシ(A2判縦1/2三つ折り)
    ※6面中4面が出演する女優4名
    ※各画像はFacebookの紹介記事へリンク

    鵺的トライアル『フォトジェニック』チラシ外面 チラシ外面

    鵺的トライアル『フォトジェニック』チラシ中面 チラシ中面

  • 2016年11月25日
    先行発売開始
  • 2016年12月1日
    一般前売開始
  • 2016年12月下旬~
    ポスター
    ※画像はTwitterのオリジナルへリンク

    鵺的トライアル『フォトジェニック』ポスター ポスター

  • 2017年1月10日~15日
    公演

印刷費用が下がったことで、フルカラーのチラシを複数外注することは容易になったが、ただ種類を増やしただけでは意味がない。今回は殺害した遺体を撮影する猟奇的なカメラマンを描いた物語で、『フォトジェニック』というタイトルで女優のポートレートをチラシにすること自体が作品世界とつながる。なぜこんな仮仮チラシ、仮チラシをつくるのかという興味と相まって、作品への興味を抱かせる独特の展開となった。複数チラシの存在に気づいてコレクションしていた観客は、その行為が物語そのものであることに気づいた瞬間、戦慄を覚えるのだ。

さらに、公演後の2月3日~8日には新宿眼科画廊(東京・新宿)で橋本氏の写真展も開催される。本チラシではこの告知も大きく掲載され、仮仮チラシから目にしていた観客は、これが写真展も含めたトータルな表現につながることに気づく仕掛けだ。

本番7か月以上前から緻密なプロモーションを展開した制作スタッフの発想力に注目したい。制作は鵺的制作部、J-Stage Navi(東京都練馬区)

(2017年1月7日追記)

画像非掲載だった9枚目の仮チラシが公開された。

鵺的トライアル『フォトジェニック』仮チラシ仮チラシ(希少版)
※画像はTwitterのオリジナルへリンク