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今春、小劇場を巡る環境に終了・縮小の動きが目立った。関西では理想的な劇場だった近鉄アート館(大阪・近鉄百貨店阿倍野店内)が3月から演劇公演を中止したのを始め、複数の動きが話題になった。東京でも若手カンパニーの貴重な発表の場であったグローブ座「春のフェスティバル」が終了となった。これらをまとめて紹介する。

多目的ホールである近鉄アート館は、1988年の開館以来、演劇、美術展、販促催事を3本柱に運営されてきたが、今春より販促強化のために演劇を見直すこととなった。NODA・MAP、遊◎機械/全自動シアター、カクスコなど、ここを常打ちにしてきた東京のカンパニーは多い。バリエーションに富んだ客席配置で舞台との距離感を感じさせない劇場だっただけに、大きな波紋を呼んでいる。300名規模で全席指定可能な小劇場演劇向けの劇場が少ない関西では、計り知れない損失と言える。特に、近鉄アート館の四方客席と青山円形劇場(東京・青山)の完全円形との組み合わせは、東京・大阪公演を行なう際の重要な選択肢だっただけに、演劇表現の面でも新たな制約を生むことになるだろう。

劇場契約の関係上、この方針転換は昨年から演劇関係者に広く知られており、今後の来阪ラインナップにも影を落とすものと思われる。MOTHERのように近鉄アート館で育てられた関西のカンパニーもあり、関西の小劇場カンパニーにとっては大きな目標となる劇場だった。非常に残念である。

関西では演劇季刊誌『劇の宇宙』の発刊終了と、扇町ミュージアムスクエア(大阪市北区)によるOMSプロデュースの終了も話題になっている。

前者は大阪市が1998年度~2000年度の3年間に開催した大阪演劇祭の一環として発行してきたもので、期間終了に伴い2月発行の11号が最終号となった。現在、関西では小劇場分野をフォローする専門誌がないため、在阪の小劇場カンパニーの多くが加盟する大阪現代舞台芸術協会(内藤裕敬会長)から存続を求める嘆願書が上がっている。

後者はOMS戯曲賞受賞作に対して行なってきたプロデュース公演を、来年実施の第7回をもって終了するというもの。次回からは賞金50万円と戯曲出版のみとなる。劇作家と演出家の新しい出会いを提供していただけに、公演の終了を惜しむ声は強い。

東京では、グローブ座「春のフェスティバル」が今年3月の第5回をもって終了となった。二つの企業から受けていた助成が2年前に打ち切られたこと、応募団体の数がフェスティバル開始時に比べて半減したことが理由。