Pocket

3月25日、『ぴあmapホール・劇場・スタジアム 全国版』が発売された。

これまでエリア別になっていたものが一冊にまとまり、全国の1,205施設が収録された。2001年9月発売の首都圏版が820施設だったので、約7割を首都圏が占めていることになる。首都圏版の320ページ1,320円が、全国版では496ページ1,980円となり、表紙デザインも一新された。

巻頭で全国の四季劇場を特集しているほかは、従来と同じ内容である。新たな劇場の収録もあるが、その一方で盛んに演劇公演が行なわれているのに、未掲載のままになっているところも目立つ。同マップは従来から首都圏版が小劇場も図面入りで詳しく紹介しているのに対し、関西版は中劇場以上が中心で小劇場は巻末リストのみの紹介と、同じシリーズとは思えないほど編集方針の差があった。それをそのまま踏襲しているので、首都圏と他エリアの格差がさらに目立つ結果となっている。東海は名演小劇場、七ツ寺共同スタジオが図面入りなのでまだいいとして、関西はアトリエ劇研、HEP HALL、AI・HALLさえ巻末リストというのは理解に苦しむ。福岡に至っては地域を代表する西鉄ホールが未掲載だ。

fringeでは以前から疑問に感じているのだが、ぴあmapを作成しているMOOKS編集部と『ぴあ』本誌の演劇担当者は意思の疎通が出来ているのだろうか。本当に使われている劇場を優先的に掲載するという当たり前のことが、首都圏エリア以外は出来ていないのではないか。大阪では一般貸出のない太融寺本坊が載っているのに、小劇場に門戸を開いているシアトリカル應典院が未掲載。ぴあ社内には完璧なものがつくれる情報と経験があるはずなのに、本当に残念である。東京でも麻布die pratzeや西荻WENZが未掲載など、少し注意すれば防げるミスが直っていない。

これを読んでいる『ぴあ』演劇担当者の方々へ。ぴあの出版物は『ぴあ』本誌だけではないでしょう。ムックも単行本もWebサイトも、すべてがぴあの作品のはず。ならば演劇に関係のある部分は、たとえセクションが異なっても口出しして、完璧なものを目指していただきたい。昔『ぴあmapホール』首都圏版が初めて出たとき、私は小劇場をきちんと扱っているのに感動した。演劇を愛する方が編集に参加しているのがはっきり伝わってきた。その精神を引き継いで、本当に有意義な劇場案内にしてほしいと思う。関西の劇場閉鎖問題は『ぴあ』にも身近な問題のはずだが、この全国版に関西の小劇場をきちんと掲載することこそ、ぴあが出来る大切な支援ではないでしょうか、ぴあ関西支社の皆さん。

今回から全国版となった背景には、チケットぴあ電話番号がナビダイヤルで全国統一になったことや、編集の合理化が考えられる。類書がないのは確かで、次回発売が何年になるかも不明なので、制作者としては購入しておきべきだろう。東京で公演するカンパニーは、眺めているだけで参考になるはずだ。