Pocket

現在、ほとんどの印刷物がコンピュータによるDTPで作成されている。そのため印刷会社に発注する前の手順も、カンパニーから文字原稿をデザイナーに送り、デザイナーがレイアウトしたものを文字校正して、そのままMOでデータ入稿というのが一般的ではないかと思われる。

印刷会社では、通常のオフセット印刷では入稿→製版→青焼き・色校正→下版(げはん)→本刷→断裁の順に作業される。青焼きは製版フィルムからの青い校正刷りで、1色の場合に用いられる。なにか修正が発生した場合は、最悪ここで直すことが可能である。希望しなければ青焼きは出ない場合もある。色校正は多色の場合に必須。校正が終わった版を本刷工程に回すことを下版、本刷可能になることを校了、修正が発生しているが、あとは印刷会社に任せて本刷へ回すことを責了という。本刷では大きな紙に同時に複数枚印刷し、サイズに合わせて断裁する。4枚同時に印刷する場合は4丁付け、8枚同時に印刷する場合は8丁付けなどと呼ぶ。チラシとチケットを同時に印刷する場合など、この点を考慮して発注するとよい。用紙サイズをはみ出して印刷し、断裁して余白が残らないようにすることを断ち切りと呼ぶ。

格安な印刷方法として、最近はデータから直接印刷するオンデマンド印刷もあるが、校正が一切出来ないため人気は低い。部数が多くなると逆に割高で、数千枚の限られた用途向きである。チラシやポスターなど、クオリティを求める印刷物には使われないのが一般的である。

カラー印刷ではCMYK、Cyan=シアンMagenta=マゼンタYellow=イエローblacK=墨(BlackのBにするとBlueと混同しやすいので、わざとKを使う)のインクを重ねて、すべての色を表現する。この4色をプロセスカラーと呼ぶ。これで物足りない場合、実際にその色をした特色(とくしょく)インクを追加して、デザイナーが指定した色を印刷する。特色は料金が高くなるので、小劇場クラスでは使っても2色程度ではないだろうか。

用紙も印刷料金を大きく左右する要素である。サイズから考えると、チラシはB5またはA4判、ポスターはB2判が最も多い。A0判やB0判を全紙と呼び、紙の厚み(重さ)は全紙1,000枚の重量で指定する。種類としては普通の上質紙、表面に光沢をつけたコート紙、さらに光沢の多いアート紙、光沢のないマット紙、その他の特殊紙がある。カラー印刷にはコート紙が最も用いられるが、表現によってはマット紙も好まれる。コート紙・アート紙の場合はPP加工する(上からポリプロピレンフィルムを貼る)場合も多い。

DTPでない場合は、レイアウト用紙写植を貼り、写真などの素材は当たりと呼ばれる位置の指定をする。写真などの階調がある素材は、スキャナで網点と呼ばれる点に分解しないと潰れてしまうので、直接貼り込むことはしない。版下に引かれた位置合わせの線をトンボと呼び、すべての版下に必要。四隅のコーナートンボ、中央のセンタートンボなどがある。ページ番号はノンブル。冊子の場合、デザイン上の理由によりノンブルを入れなくても、版下の印刷されない部分には必ずノンブルを入れる。

印刷会社に発注する場合は、製版フィルムを保存して安価に増刷可能かも確認しておきたい。最初から製版するのとは金額が大きく異なる。