●長期連載です。2015年に掲載した(予告)から順にお読みいただけます。
全く知らない芸術団体の公演を観るきっかけは、次のどれかではないでしょうか。1、2が自発的なきっかけとなります。
- 信頼出来る友人、影響を受けている著名人からのオススメ
- その団体・出演者を以前から知っていて、興味を持っていたため
- 学校や家庭の行事として参加
2はもう少し細分化出来ると思います。
2-1. 友人知人や関心のある人物が関わる公演
2-2. 普段から存在を目にしていて、一度観てもよいと思っていた団体
2-3. 公演以外の活動で気になっていた団体
2-1は周囲の人が出演するような場合です。普段演劇を観ない人でも、知人が出るなら観たいと思うでしょう。発表会が成立するのも、こうした身内客の存在があるからです。2-2は学生演劇などで、連日キャンパスで立て看を目にしていて、存在を認識しているような場合です。学生時代に演劇に触れる人が多いのは、こうした必ず目に触れる宣伝効果が大きく影響していると思います。社会人になってからも、ポスターやチラシを劇場以外の普段から接する場所に貼ったり置けたりすることが出来ればよいのですが、それには宣伝費や人海戦術が必要です。費用や労力をかけられない団体は、そこを工夫しなければなりません。
そして2-3ですが、これは公演以外の活動で先に存在を知り、そこが公演するのなら観てみたいと感じる場合です。映画やドラマに出演している俳優の舞台作品に興味を持ったり、団体自体が演劇以外の表現で先に有名になっていたケースもあるでしょう。SNSを使って動画配信の世界で知られることは演劇系カンパニーでも可能で、フォロワーを集めれば一定の観客は集まると思います。しかし、作風によって動画配信が向いている団体と、そうでない団体があるでしょう。動画の完成度にこだわりすぎると、演劇のプロモーションという本来の目的と外れてしまう場合もあります。そう考えると、演劇に関心のない人も興味を持ちそうな配信で、その活動自体がそのまま舞台につながっていくものが望ましいことになります。
私がいま無名の団体をプロデュースするなら、旗揚げ公演前に著作権切れの小説をラジオドラマ化したり、複数の俳優によるリーディングを収録したものを無料配信すると思います。せっかくならオリジナルのラジオドラマにしたいところですが、それだとその団体を知っている人しか興味を持ちません。観客を広げるには、知られている原作を使うことがポイントだと思います。もっと手軽に俳優一人による朗読という手もありますが、すでにネット上で朗読の無料配信は多数あり、いまから始めて演劇の職能を活かすとすれば、それはラジオドラマやリーディングではないかと思います。音声ファイルだけなら容量も大きくないため、MP3でダウンロード可能にすればオフラインでも楽しめます。収録風景も楽しめるYouTubeの動画配信に加えて、そこからMP3配布用の公式サイトに誘導するとよいでしょう。
著作権が切れた小説は、「青空文庫」で公開されています。著作権が切れている場合は、許可なしで実演や翻案が出来ます。その団体の世界観に近い作品を探してラジオドラマやリーディングにするとよいでしょう。それが何本か集まっていくことで、その団体のオリジナル作品への期待が高まるような、そんなライブラリに出来れば理想的です。なお、著作権が切れていても著作人格権は保護されますので、作品に敬意を払い、著者や翻訳者は必ず表示し、同一性を損なうような改変には注意しましょう。