この記事は2003年4月に掲載されたものです。
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京 チラシアートワーク指南/第2回宣伝美術発注の基本(2)
●分割掲載です。初めての方は「はじめに」から順にご覧ください。
チラシと違う醍醐味が
あってこそのDM
――通販会社でデザイナーをされていた京さんにとって、DMは最もお詳しい分野だと思います。いまの演劇DMについて、率直なご意見をお聞かせください。
通販のDMをつくるとき、いちばん気にするのは開封率で、いかに封筒を開けてもらうかというところに気を遣うんです。公演のDMの場合、知ってるカンパニーから届けば開けてもらえると思うんですけど、それにしても封筒がお粗末なDMが多いと思いますね。カンパニー名を刷ったオリジナルをつくっている劇団ばかりではないじゃないですか。茶封筒にスタンプを押しているのはつらいなあ。中から4色チラシが出てきても、なにかバランスが悪い。パラフィン紙系の薄い茶封筒を使うのでも、文字が透けて見える効果を考えて使うのならいいけれど(笑)、なにも仕掛けずにペラペラの茶封筒というのはつらいな。
――もっと経費を抑えているところは郵便書簡(ミニレター)ですね。
お金のないところが見えるわけじゃないですか。それはちょっと寂しい。コストを削るにしても、ちょっとの工夫だと思うんですね。確かにみんながオリジナル封筒を持つのは難しいと思うんですよ。だからハガキにしたり工夫されていると思うんですけど、プリンタでシールを打ち出し、それをきれいに貼るほうが、かすれたり斜めになったハンコよりいい。茶封筒よりも長形3号のきれいなのを選べば、それだけでもずいぶん見栄えがよくなります。
――デザイン面から見たDMとはなんでしょう。
DMは一度観に来てくれた顧客に送るものですよね。顧客リスト化しているカンパニーがほとんどだと思うので、先行割引とか先行予約の案内、そのDMにしかない「なにか」が一つ加わっているとうれしいですね。演出家がエッセイを載せているとか、なんでもいいんです。劇場で折り込みチラシを手にしたのとは違う醍醐味があってこそ、DMだと思いますね。それがあれば読もうという気になるじゃないですか。出来れば封筒も毎回オリジナルにして、そこに期待を持たせる文句を織り込んだり、デザインとして統一させるといいでしょうね。あまり例は見ないですけど。
――同封物を三つ折りにするときは、どちらを向けて折るべきなんでしょう。
チラシは基本的に表面が外側。タイトルの配置などの関係で折る位置を指定することもあります。三つ折りになった上下どちらの部分を表に出したいかです。通販では同封物の封入順序、なにを表にするか裏にするかまで全部指定します。カンパニーのDMではそこまでやらないですけれど。
――同封する案内状なども印刷面が外側ですか。
テキストの同封物は印刷面が内側でしょうね。でも、Z折りって手もありますね。
――封筒の印刷ロットは最低1,000枚ですね。どこでも1公演でそれくらいは使うでしょうから、使い切りという考え方で、公演名を入れたオリジナルなものを毎回刷ってもいいのでは。封筒に公演期間や会場が入っていると、開封率も上がると思いますが。
ご提案はするんですけど、なかなか刷るところは少ないですね。これはshelfの立ち上げでつくった封筒です。使い続けられるようにシンプルなデザインにしました。
shelf封筒
コストを抑えるのはいいけれど
そこでもう一工夫したい
――最近、チラシとDMを兼ねたポストカードをよく見かけますが、あれはどう思われますか。
ポストカードが折り込まれている場合ですね。本来送るべき形態のものが本チラシとして入っていると、宛名が書かれるべきスペースが丸空きになってしまっているので、「兼ねちゃったんだな」というのが見える。それに、ポストカードの折り込みは束から落ちてしまうので嫌われます。どうしてもポストカードにするのなら、その辺りを克服する必要があると思うんですよ。コストを抑える意味でチラシを兼ねるのはいいけれど、そこでもうひと工夫したいと思うんです。
1 本チラシ(B5) 2 ポストカード宛名面 3 ポストカードイラスト面
1 | 2 | 3
このときは本チラシとは別ですが、クリスマスカードとDMを兼ねたハガキをつくりました。宛名面を4色にして、チラシのデザインを前面に持ってきて、イラストレーターに書いてもらった絵を裏面に使っています。
これはチラシはつくらなかったんですよ。ポストカード自体が本チラシですね。送る場合は宛名をラベル出力して貼ったんです。写真が透けて見える厚さのラベルを選んで、大きさや貼る位置も指定しました。コストも押さえ込んだ1色/1色です。
――宛名面が全面写真ですから、これなら折り込まれても違和感ないですね。
そうでしょう。そこをなんとかクリアしたかったんです。ただハガキつくるだけじゃおもしろくないと思ったんで。これは私のほうからプレゼンさせてもらって、主宰者にOK取りました。boundは折り込みよりもカフェ置きなどに力を入れているので、それもありました。
(この項続く)
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