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河北新報が「『劇都』の舞台装置 仙台演劇事情」と題する特集記事を、3月1日付、3日付、5日付朝刊に連載した。カンパニーの現状と展望、稽古場と公共性、集客と長期公演を取り上げ、取材は生活文化部・沼倉淳記者。

仙台のカンパニーは現在90団体近くで、そのうち約40団体が定期的に活動しているという。仙台市市民文化事業団によると、これは広島市の2倍以上で、全国の政令指定都市の中でも多いという。演劇人口は約1,000名と推計している。しかしながら団体の離合集散が目立ち、「群雄割拠の激しさやパワーはない。カリスマ性のある役者もいない。正直言って生ぬるい」という関係者のコメントを紹介している。俳優のフリー化、プロデュース公演の増加は仙台でも顕著な傾向で、仙台を代表する演出家・俳優の井伏銀太郎氏(元・IQ150)は、「混沌とした状態だ。その中から何かが生まれてほしい」と語っている。

仙台でも自前の稽古場を持てないカンパニーが大半で、公共稽古場施設「せんだい演劇工房10-BOX」の利用者は2003年度18,800名、04年度はそれを上回る見込み。市内に公演可能な施設も散在し、「施設面では比較的恵まれている」というのが関係者共通の認識だという。一方でアウトリーチなどで演劇を社会に還元することが重要と、10-BOX工房長の熊谷盛氏は語る。「意思疎通の方法や他者の理解など、舞台づくりに必要な特質は社会生活で求められていることと一致する。芸術性の追求だけではない演劇人の在り方が問われている」という熊谷氏の言葉は、全国の演劇人にも通じるだろう。

集客面では観客の裾野が広がらないのが悩み。アンケートでは著名な劇作家の既製戯曲や古典のほうが面白いという意見が多く、地元のオリジナル作品への評価が低いという。それを打破しようと、仙台で最も勢いがあると言われる「きらく企画」が3月末から試みる15ステージロングランを紹介し、これが「劇都仙台」の試金石になると結んでいる。主宰の鈴木拓氏は、「僕らは演劇で食べていくことを目指している。このロングランでどれだけ観客を集められるかが正念場だ」と語っている。

ほかに記事で取り上げられたカンパニーは、Theatre Group“OCT/PASS”、芝居小屋六面座、青葉玩具店、三角フラスコ、劇団POINTO、劇団麦、ヨネザワギュウ事務所。仙台で活動する制作支援事務所「TIME Create」の柴田環氏も登場している。