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サンモールスタジオプレゼンツ・iaku+小松台東『目頭を押さえた』

前売券を販売した場合、入金確認後にリアルなチケット(原券)を郵送するか、システムを使ってコンビニ発券するか、スマートフォン上のeチケットを受付で見せるか、なんらかの形でチケットが事前に観客の手元にある状態にするのが一般的だろう。

事前にチケットを受け取ることにより、当日は受付不要でスムーズに入場出来るわけだが、サンモールスタジオプレゼンツ・iaku+小松台東『目頭を押さえた』(1/30~2/4、東京・サンモールスタジオ)では、事前決済はするがチケットを郵送しない方法を採用している。

この公演はプレイガイド(チケットぴあ)以外にCoRichチケット!を利用しているが、前売(1週間以内に銀行振込)・予約(当日精算)の2料金体系とし、前売は予約より料金を下げている。笑の内閣(本拠地・京都市)、エイチエムピー・シアターカンパニー(本拠地・大阪市)が採用した事前購入割・事前入金割と同じ考え方だ(2016/6/18付本欄既報)。

前売 予約 当日
チケットぴあ 3,500円 - -
CoRichチケット! 3,500円 3,800円 -
当日券 - - 4,000円
U-25 - 2,500円 2,500円

この公演で注目なのは、前売が予約より安価なだけでなく、前売を選択して銀行振込してもチケットが郵送されないことだ。チケットは当日受付で渡される。これはめずらしい。

前売は受付での現金のやりとりを減らし、当日運営の負荷を下げることが大きな目的だが、小規模な劇場でチケットを渡すだけなら、この方法でも問題ないだろう(サンモールスタジオはキャパ約110名)。本人確認が重要になるが、それが出来ればチケットを郵送しなくてもよいことになる。発券機能がない票券管理システムを利用した場合、郵送の手間や郵送中のトラブルがネックだったが、観客に振り込んでもらうだけでよいのだ。「事前決済=チケット郵送」の既成概念を打ち破るもので、まさにコペルニクス的転回だ。関西を代表する制作者の一人である、笠原希氏(iaku、ライトアイ)のアイデアだろう。

銀行振込させてチケットを郵送しないのは、観客の立場では上演団体が有利に思えるかも知れないが、銀行の振込明細書が領収書になる。あとは上演団体がメールで必要な情報を送り、念のためメールを当日持参してもらえば問題ないだろう。

架空予約や無断キャンセルの対策を考えた場合、事前決済が安全なことはわかっていても、決済機能があるシステムは手数料がかかり、決済機能がないシステムだとチケット郵送が手間というジレンマがあった。しかし、無料または安価な票券管理システム上で観客に銀行振込をお願いするだけなら、上演団体の負荷は少ない。観客も当日精算があるから利用しているわけで、銀行振込がデフォルトになればそうするだろう。

改めて書こう。架空予約や無断キャンセルを撲滅するには事前決済しかない。上演団体が事前決済を導入さえすれば、架空予約や無断キャンセルは起こらない(万一起こっても、金銭的な損失は発生しない)。CoRichチケット!、シバイエンジン、カルテット・オンラインなどの決済機能がない票券管理システムを利用しているのなら、予約後1週間以内の銀行振込にすればいい。性善説で当日精算にしている上演団体の側にも問題があるのだ。便利な仕組みがあるから、無料だから、周囲が使っているからというのではなく、自分たちはなんのためにシステムを使うのか、そこでどんな工夫をするのかを考え、システムに利用されるのではなく、逆に使いこなしてほしい。

当日精算は、開演日が迫って時間的に事前入金が不可能な場合だけでよいのではないか。あとは本当に信頼出来る身内客の取り置き。それだけだと思う。