演劇の創客について考える/(36)票券管理システム、ソーシャルチケットサービスのメール送信機能を活用し、リマインドメールや御礼メールを送る

カテゴリー: 演劇の創客について考える | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

Pocket

●長期連載です。2015年に掲載した(予告)から順にお読みいただけます。

会場で紙のアンケートに答える観客は、ネット普及前に比べて激減していると思います。公演案内の郵送を希望する観客を除き、感想はSNSでつぶやけばいいし、公演情報もネットで簡単にわかるようになりました。観客にとって、紙のアンケートを書くメリットが感じられないため、Webアンケートを含めても、アンケートの回収率はかなり下がっているのではないかと思われます。

こうした状況ですが、小規模な公演では逆に観客にメールを送ることが容易になりました。プレイガイドよりも票券管理システムやソーシャルチケットサービスが活用されるためで、これらはメールアドレスの登録が必要です。主催者にメールアドレス自体は開示されませんが、管理画面から全員やステージ単位で一斉メール送信することが可能です。つまり、紙のアンケート時代は不可能だった公演前・公演直後のメール送信が、いまでは前売客・予約客に自由に送れるわけです。

メールなら費用もかからないので、来場前のリマインドメールや公演後の御礼メールはぜひ送るべきだと思いますが、実際はリマインドメールのない公演も多いですし、御礼メールに至っては、ほとんど送られていないのではないでしょうか。実にもったいないと思います。

リマインドメールのメリットは、なんと言っても無断キャンセルを防げることです。観客が日時を失念したり、場所を間違える可能性は常にあるわけですから、来場2日前くらいにリマインドメールを必ず送るべきだと思います。

公演の諸注意もここで先に伝えましょう。前説でスマートフォンの電源を切るようアナウンスしても、Androidは機種ごとに設定が違うのでわからないという声を耳にしますが、リマインドメールで電源の切り方を説明したメーカーサイトへのリンクを貼れば、一定の効果があると思います。なぜ電源を切る必要があるのかも、メールでなら詳しく書けると思います。

劇場への行き方、近隣のお店の紹介なども、サイトやSNSではしていると思いますが、リマインドメールでも改めて触れるとよいでしょう。そうすることで、場所を間違えていた場合の気づきになるからです。人は一度思い込んでしまうと、なかなか間違いに気づきません。違和感のある交通案内やお店が書かれていることで気づきになるのです。

御礼メールのメリットは、なんと言っても次回公演につながることです。これがあるかないかで、観客の心象はずいぶん違うのではないでしょうか。プロデュース公演主体となった現在の小劇場演劇では、ともすれば観客の関心が上演団体自体から俳優中心になりがちです。ここで御礼メールを送って次回につなげていくことが、俳優が変わっても上演団体自体への関心を継続していくことになると思います。

御礼の挨拶だけでなく、作品の後日譚やプロダクションノートへの限定公開リンクを貼れば、御礼メール自体が特典になります。会場で配布する当日パンフとは別の楽しみ方が提供出来るのではないでしょうか。もちろん作品は会場で完結するものですが、こうした〈あとがき〉的要素はあってもよいと思います。ここで関心を深めてもらえれば、メールマガジンの登録、グッズ通販、有料配信視聴などにつなげていけるかも知れません。

御礼メールには今回の観客動員数、これまでの動員数の遷移を載せましょう。動員数は上演団体の成長を見える化するので、観客と団体の歩みを共有出来ます。動員が落ち込んだ場合も隠さず記載しましょう。作品の出来がよかったのに動員が落ちていれば、それを知った観客の方が「次回は広めたい」と思ってくれます。最近は必ずしも動員数を求めない風潮もあると思いますが、演劇を広めていくのに動員数は欠かせない指標です。動員数が少ないと観客が感じたら、観客自身が動いてくれます。そのためにも動員数を共有しましょう。

ソーシャルチケットサービスで決済まで行なう場合は、割引コード(クーポン)が活用出来るのも大きな魅力です。公演期間が長ければリピート観劇や友人知人への紹介に使える割引コードを発行したり、御礼メールで次回公演で使える割引コードを先に決めて周知することも可能です。

これだけのメリットがあるリマインドメール、御礼メールですが、なぜ活用されていないのかを考えると、公演期間中は制作者の手がそこまで回らないのが最大の理由だと思います。公演後も疲れ果ててしまい、御礼メールを送る余裕がないのでしょう。だったら、公演前の余裕がある時期に文面を用意しておき、最低限の更新だけで送れるようにすればよいと思います。御礼メールなら、動員数の部分だけダミーの数字を入れ、公演前に文面を仮の状態まで持っていきましょう。手が回らないのであれば、どうすれば回るのかを考えましょう。

前の記事 演劇の創客について考える/(35)演劇の宣伝でいますぐ出来るのは、サイトやチラシに人物相関図を載せること