この記事は2001年5月に掲載されたものです。
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楽屋担当の役割
鏡前は事前に決めておく
楽屋担当の役割は楽屋割りと楽屋づくり、公演期間中の準備と片付け、楽屋番と面会客の案内、バラシの掃除などです。ケータリングと兼務することも多いようです。
楽屋担当は、公演前に楽屋図面を元に楽屋割表を作成します。これは俳優一人一人の楽屋と鏡前の位置を決めるものです。中劇場クラスになると、楽屋は様々な広さのものが4~5室あるのが普通ですから、俳優の格に合わせて不満の出ないように配慮します。また、1室は外部スタッフが休憩するためのスタッフルームに割り当てます。
小劇場クラスでは男女別に楽屋を設ける程度だと思いますが、それも難しいなら楽屋内に更衣室を特設するなど工夫します。俳優の数が多い場合は、廊下に長机を置くなどして楽屋に使えるようにします。楽屋に鏡が完備されている場合は問題ありませんが、不足する場合や楽屋を特設する場合は、カンパニーでその分の鏡を用意しなければなりません。備品として自立出来る手鏡を多めに準備しておきましょう。
舞台と楽屋が離れていて衣裳の早変わりがある場合は、そのための袖楽屋を特設しなければなりません。稽古段階から舞台監督、衣裳スタッフと相談しましょう。
楽屋づくりの流れ
仕込みでは、まず楽屋の一時的な配置を指示します。楽屋は仕込み中、衣裳・小道具の作業場所や私物置き場に使われることが多いので、最も合理的な使い方を判断します。舞台監督は楽屋の配置までは介入しませんので、作業をスムーズに進められるよう、舞台監督に尋ねられたら即座に配置を答えられるようにしておきましょう。
トラックからの搬入が終わり、各パートに分かれて仕込み作業が始まったら、劇場事務所から必要な備品を借ります。なにが借りられるかは、事前の制作打ち合わせで確認しておきます。灰皿、ポット、湯のみなどの用意があるのが普通です。どの劇場でも灰皿の管理には神経を遣っており、厳しいところでは毎日小屋入りのときに必要枚数を貸し出し、退出時に返却しなければなりません。楽屋担当はどの楽屋に何枚灰皿を置いたかを記録しておきましょう。
次にゴミ袋の準備です。劇場指定の分別方法でゴミ袋を用意し、舞台や各楽屋に設置していきます。可燃・不燃などはわかりやすくマジックで書いておきましょう。
楽屋には衣裳のアイロンスペースやハンガーラックも入りますので、衣裳スタッフと相談しながら配置します。それが決まれば、楽屋割表に基づいて各俳優の鏡前に名札を貼っていきます。同じ楽屋内でも出番の多少や喫煙の有無に配慮しましょう。机や鏡を拭き、劇場やカンパニーの備品を置きます。カンパニーよって様々だと思いますが、目安としてはティッシュペーパー、ゴミ袋、灰皿を2名に一つ程度、メイク落としを4~5名に一つ程度だと思います。
カンパニーの備品として、救急箱も一つ用意しておくとよいでしょう。頭痛薬、胃腸薬、感冒薬、歯痛止、湿布薬などを常備しておきます。
退出時は灰皿管理の徹底を
楽屋担当が毎日の退出の際に最も注意しなければならないのが、灰皿の回収です。たとえ劇場事務所に返却しなくてもよい場合でも、管理がおろそかになることを防ぐため、カンパニー側で毎日回収して確認しましょう。吸殻は所定の方法で処理し、灰皿を洗って枚数を確認します。清掃業者がいる劇場以外は、ロビーの灰皿からも吸殻を集めましょう。
どの劇場も空き缶を灰皿代わりに使うことは厳禁のはずですが、そうしたことをしている者がいないか、よく確認しましょう。万一、劇場で禁止されている行為をする者がいれば、たとえ外部スタッフであっても注意しましょう。喫煙場所や灰皿の使用法については、毅然とした態度で臨んでください。
退出準備は遅くとも退出時間の30分前から始まるようにしましょう。舞台監督の指示がなくても、自分で時計を見て準備を始めるようにしてください。ケータリング担当と協力して各楽屋を見回り、その日のゴミは出来るだけその日に処理出来るような体制で片付けます。劇場の定めた退出時間は、その時間に完全退出していること(劇場敷地外へ出ていること)が鉄則です。遅れると有無を言わさずシャッターが下りたり、延長料金を請求される場合があります。劇場側の心象もたいへん悪くなります。タイムスケジュールどおり退出するように、関係者全員に徹底しましょう。
楽屋番を置く
楽屋を狙った窃盗を楽屋荒らしと呼びます。本番中に楽屋が無人になった隙に、楽屋口から侵入する手口です。俳優の外出用に楽屋口を持つ劇場がほとんどですので、本番中は必ず内側から施錠しておきましょう。原則として楽屋口はクローズし、そこから出るときはすぐに内側から施錠してもらうように徹底することが重要です。本番中に財布を抜かれたのでは、俳優の演技にも影響を与えてしまいます。
人数に余裕があれば、公演期間中は楽屋専門の楽屋番を配置するのが望ましいでしょう。これは楽屋に常駐して不審者を入れないことが目的ですが、終演後の面会客を楽屋に案内する役割も担っています。ロビーから楽屋手前まではフロントスタッフが案内し、そこから奥は楽屋番に引き継ぐのがよいと思います。楽屋番は制作者でなく、演出助手やお手伝いさんでも構いません。
借りる前よりきれいにして返す
バラシでは仕込みと同様に作業用に一時的な楽屋配置を決め、私物を1か所に集中させます。鏡と机を拭き、床には掃除機をかけます。ドーランや血糊で汚れている場合は拭き掃除も必要です。清掃業者のいない小劇場の場合は、トイレなどのスペースも清掃します。バラシの精神は「現状復帰」ではなく、「借りる前よりきれいにして返す」です。これを実践出来るカンパニーなら、どの劇場も喜んで貸してくれることでしょう。