この記事は2010年3月に掲載されたものです。
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岐阜・可児市文化創造センター(アーラ)が進めるチケット販売改革による創客
可児市文化創造センター(岐阜県可児市、愛称・アーラ)が、自主事業のチケット販売改革を進めている。演劇評論家の衛紀生氏が2007年度の館長就任(07年度は非常勤、08年度から常勤)以来推進してきたもので、集客から創客への転換として、公式サイトのエッセイや連載でその詳細を語っている。
同劇場の販売チャネルは、窓口販売と電話予約に加え、07年度からスタートしたインターネット販売がある(ASP票券管理システム「Gettii」を使用)。08年度からは販売時期に応じて価格を変動させる「DAN-DANチケット」をGettii上で始めた。これは残席がある場合、公演2週間前から15%割引、公演当日の深夜0時から50%割引のハーフプライスチケットにするもの。Gettiiを使った割引販売はロングランプランニングが運営する「Confetti」が行なっているが、これを公共ホール単体で実施しているわけだ。衛氏は「日本ではおそらく他ではやっていない」としている。
DAN-DANチケット導入は観客の買い控えを招くのではないかとの危惧もあったが、ディスカウント購入者は15~19%に留まり、80%は定価で購入しているという。観客には良席で鑑賞したいという欲求が強くあり、ディスカウント販売で満席になれば、逆に定価購入者の「経験価値」をさらに高めることになるとしている。
ボリュームディスカウントとしては、年間の自主事業をジャンルごとにセット販売する「パッケージチケット」を07年度から開始。演劇ジャンルでは「演劇まるかじりパッケージチケット」として、10年度は4公演を定価12,000円から20%割引の9,600円で販売している。
パッケージチケットは2年連続購入で25%、3年連続で30%の割引となるほか、同伴者が1公演単位で20%割引になる「パートナーズ・チケット」も利用出来る。衛氏は「いったん手に入れた『特権』は経済的・時間的な制約があっても容易には手放さない」と分析、自筆の手紙を送って継続購入を働きかけているという。さらに10年度より、公演2週間前までなら購入金額の80%の劇場クーポン券と交換出来る「キャンセルサービス」も導入する。
パッケージチケットは劇場窓口のみの販売だが、08年度より窓口でのクレジットカード扱いを開始。公共ホール窓口でカードが使えるのはまだ少数だが、カードだと観客のメンタルアカウンティング(心理的会計区分)が働き、現金より財布の紐が緩みがちになる。試験導入では売上が6.59%伸びたという。現在ではパッケージチケット購入者全体の46%がカードを選択し、売上は確実に伸びているとしている。
団体割引に相当するものとしては、「ビッグコミュニケーションチケット」がある。4~5名で10%、6~7名で20%、8名以上で30%の割引となり、劇場を起点とした家族・友人とのコミュニケーションを狙っている。劇場に1人で訪れる観客は20%前後という調査結果があり、背後の需要を掘り起こすのが目的。単なる「団体売り」ではないということで、名称にもこだわりを見せている。
ほかにも同劇場では多数の取り組みを行なっており、チケット関連では劇場会員(アーラフレンドシップ)の誕生日を参照し、誕生月に来場した場合は座席にバースデーカードとバラの花を置いて衛氏自ら挨拶に赴く「バースディ・サプライズ」や、転入者への「お引越し祝いチケット」などがある。
詳細は同サイト参照。
可児市文化創造センターサイト「得得チケットサービス」
http://www.kpac.or.jp/tokutoku/