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にしすがも創造舎

●分割掲載です。初めての方は(1)から順にご覧ください。

東京を代表するアーツセンター、にしすがも創造舎(東京・西巣鴨)。2016年での終了に伴い、創設前夜の03年から「F/T」へ移行していく08年までを、fringeの主要記事から再録する。

※記事は掲載当時の内容である。再録に伴い、旧連絡先等は削除した。リンクは移動先が判明したものは変更し、それ以外は削除した。


融資を受けて体育館の正式劇場化工事に踏み切るも、
蜷川幸雄作品ロングランは延期・会場変更

東京・にしすがも創造舎体育館がロングランに向けて興行場法が認める劇場に改修(2006/4/19)

NPO法人アートネットワーク・ジャパンは、2006年10月から蜷川幸雄作品『エレンディラ』のロングランが決定しているにしすがも創造舎体育館(東京・西巣鴨)(2006/2/10付本欄既報)を興行場法で認められた劇場にするため、5月10日から1か月かけて防火扉や避難通路の工事を行なう。毎日新聞東京本社版4月15日付朝刊(東京版)が伝えた。

これまで同法の規定により、1公演は月4日までだった。工費は約4,500万円で、豊島区が一部損失補償する。単年度更新だった施設無償貸与を、2010年まで延長することも決定した。

それまでは消防法・興行場法で認められた正式な劇場ではなく、月4日までの開催か、その都度届出をする臨時興行場の扱いだった。上記に加え、雨天時の屋根の防音、客席工事などが必要となった。このため日本政策投資銀行と巣鴨信用金庫から各1,500万円、計3,000万円の融資を受けた。日本政策投資銀行のNPO法人への融資はこれが初めてで、豊島区の地域再生計画(文化芸術創造都市の形成「としまアートキャンバス」計画)に基づく東京都内における事業でも初のケースとなった。詳細はANJ事務局(現理事長)・蓮池奈緒子氏のインタビューが詳しい。
NPOWEB「ファンドレイザー奮闘記」
文化庁/市民から文化力ホームページ「Interview聴いて、Cool!」
日本政策投資銀行ウェブサイト/DBJ News「特定非営利法人アートネットワーク・ジャパンに対し東京都内初の地域再生推進に資する融資を決定」

東京・にしすがも創造舎体育館で今秋予定の蜷川幸雄作品ロングランが延期・会場変更(2006/5/18)

TBSとホリプロは5月16日、にしすがも創造舎(東京・西巣鴨)体育館で10月から2か月ロングランを予定していた蜷川幸雄作品『エレンディラ』の公演延期を公式サイトで発表した。

諸般の事情とされているが、日刊スポーツ5月17日付によると、「脚本の第1稿が完成し、演出プランを立ち上げる中で、作品の方向性と体育館という空間に食い違いが生じ『より良い舞台にするためには劇場で上演した方がいい』との結論に達し、公演延期を決めた」という。

同施設を管理運営するNPO法人アートネットワーク・ジャパンでは、このロングランに向けて約4,500万円をかけ、興行場法が認める劇場に改修する工事を行なっていた(2006/4/19付本欄既報)。

ホリプロオンラインチケット「『エレンディラ』公演延期のお知らせ」※掲載終了

nikkansports.com「蜷川幸雄舞台『エレンディラ』公演延期」※掲載終了

施設利用条件の緩和、演劇資料室・制作作業ルーム新設などが進み、
名実共に東京のアーツセンターへ

東京・にしすがも創造舎内に演劇資料室「舞台芸術アーカイブ」開設(2006/9/26)

東京都豊島区が、にしすがも創造舎(東京・西巣鴨)内に演劇資料室「舞台芸術アーカイブ」を9月25日開設した。2階の倉庫スペースを改装、書架・ガラスケースを配置し、寄贈を受けた演劇雑誌や専門書、公演パンフやビデオなど約1,500点を並べている。室内にはビデオデッキとモニターも置かれ、その場で視聴可能。

  • 利用時間
    平日11:00~18:00(事前予約制)

中日新聞ホームページ「地域演劇 歴史ひもとく きょう豊島区資料室オープン」※掲載終了

東京・にしすがも創造舎に制作作業ルーム開設、タタキ場の一般貸出もスタート(2007/6/12)

NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)が廃校を稽古場施設に転用した「にしすがも創造舎」(東京・西巣鴨)に、制作作業ルームが開設された。これまで稽古場利用団体のみに提供されていたタタキ場も、空きがある場合に一般受付を行なう。旧校長室を利用したミーティングルームも正式貸出が開始された。

制作作業ルームはコイン式コピー機、印刷機(有料)のほか、無料で使える紙折り機、裁断機、作業台などを揃える。ミーティングルームは2Fサロン向かいにある旧校長室を会議室利用するもので、サロン内のカフェも利用可。無線LAN環境も整備された。

  • タタキ場
    稽古場利用団体 1日2,000円、1週間12,000円
    一般      1日4,000円、1週間24,000円
    ※一般は稽古場利用団体決定の約1か月後から受付開始
  • ミーティングルーム
    稽古場利用団体 1時間500円
    一般      1時間1,000円

ANJ単独主催の東京国際芸術際は2008年で終了、
自治体との共催による「F/T」の時代へ

東京国際芸術祭が資金難でANJ単独主催は今回で終了、来年度以降は新たな枠組みへ(2008/2/25)

東京国際芸術祭2008(TIF2008、主催/NPO法人アートネットワーク・ジャパン=ANJ)が2月21日~3月23日の会期で開幕したが、ANJが単独主催する現在の形式は今回で終了する。最終日に開催されるシンポジウム「東京にはどんなフェスティバルが必要か? フェスティバルの10年を振り返る」(3/24、西巣鴨・にしすがも創造舎特設劇場)の告知で明らかにされた。

来年度以降は行政との連携により、新たな枠組みでの開催を予定しているという。朝日新聞東京本社版2月21日付夕刊によると、「資金面などで続けることが難しくなった」としている。

同芸術祭は1988年に東京国際演劇祭として創設され、98年から現在の名称に変更。2000年からANJが運営を続けてきた。NPO法人が単独主催するフェスティバルとして、海外からの招聘など芸術性の高いラインナップで独自性を築いてきた。シンポジウムではTIFの後半10年を回顧しながら、フェスティバルの意義と展望を探り、新たな都市型フェスティバル像を考える。

詳細は公式サイト参照。

東京国際芸術祭の現体制での最終シンポジウムが詳細発表(2008/3/22)

NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)による単独主催が今回で最後となる東京国際芸術祭(TIF)は、最終日3月24日ににしすがも創造舎特設劇場(東京・西巣鴨)でシンポジウム「東京にはどんなフェスティバルが必要か? フェスティバルの10年を振り返る」を実施するが、その詳細が22日発表された。開催日はチラシ記載の3月23日から変更になっているので注意。

■パネリスト(50音順)
今村有策(東京都参与、トーキョーワンダーサイト館長)
上野仁志(豊島区文化商工部文化デザイン課長)
太下義之(三菱UFJリサーチ&コンサルティング文化政策センター長、東京都文化芸術評議会専門委員)
加藤種男(アサヒビール芸術文化財団事務局長)
曽田修司(跡見学園女子大学マネジメント学部教授)
高萩宏(世田谷パブリックシアター制作部長、東京都文化芸術評議会専門委員)
高山明(Port B主宰、演出家、にしすがも創造舎レジデントアーティスト)
桃原慎一郎(東京都生活文化スポーツ局参事・文化施設改革担当)
吉本光宏(ニッセイ基礎研究所芸術文化プロジェクト室長、東京都文化芸術評議会専門委員)
渡辺弘(埼玉芸術文化振興財団事業部長)
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市村作知雄(東京国際芸術祭エグゼクティブ・ディレクター、ANJ理事長)
蓮池奈緒子(東京国際芸術祭、ANJ事務局長)
相馬千秋(東京国際芸術祭プログラム・ディレクター)

当日は市村氏による講演「TIFの後期10年(TIF99~TIF2008)を振り返る」、今村氏らによる報告「フェスティバルのこれまでとこれから」に続き、会場を交えて討論を行なう。終了後は懇親会も予定している。入場無料だが要事前予約。ANJでは、来年度以降は関係行政機関と連携した新たな形のフェスティバルを予定している。

詳細は同サイト参照。

「F/T」のプログラムディレクターに相馬千秋氏就任、
さらなる国際共同制作の充実へ

東京国際芸術祭が来年から「フェスティバル東京」(仮称)へ、フェスティバルディレクターに相馬千秋氏(2008/4/12)

NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)が単独主催していた東京国際芸術祭(TIF)が、次回より東京都などとの共同開催による「フェスティバル東京」(仮称)になることが、3月24日のTIF最終シンポジウム(2008/3/22付本欄既報)で明らかにされた。

プログラムディレクターには、ANJ職員でTIF国際プログラム担当である相馬千秋氏が就任する。メールマガジン「週刊マガジン・ワンダーランド」(ワンダーランド)第87号は編集後記で、「彼女は30歳代前半。この若さと女性という点から国内では例を見ない抜擢と言われそうですが、海外ではそれほど珍しくないと言います。専門職としてのフェスティバルディレクターが活動の場を広げていけるよう期待しています」としている。

相馬氏はフランス・リヨン第二大学院でアートマネジメントを専攻。現場での活動を経て、2002年よりANJ勤務。急な坂スタジオ(横浜・野毛山)のディレクターも兼務している。

「週刊マガジン・ワンダーランド」第87号

「フェスティバル/トーキョー」(旧・東京国際芸術祭)ラインナップ第1弾発表(2008/10/18)

NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)が単独主催していた東京国際芸術祭は、2009年より行政等との共同開催に変わるが(2008/4/12付本欄既報)、その公式サイトが9月7日オープンした。名称は「フェスティバル/トーキョー」に決定し、第1回は東京芸術劇場(池袋)、あうるすぽっと(池袋)、にしすがも創造舎特設劇場(西巣鴨)を主会場に2月~3月に開催される。

主催はANJに加え、フェスティバル/トーキョー実行委員会、東京都、豊島区、財団法人東京都歴史文化財団、財団法人としま未来文化財団。2016年のオリンピック・パラリンピック誘致に向けて、東京都と東京都歴史文化財団が行なっている「東京文化発信プロジェクト」の一環として開催される。池袋西口公園を使った野外イベントも予定されている。

公式サイトではラインナップ第1弾として、主催演目9本、参加作品1本が発表された。演目は今後追加され、計20本程度になる模様。主催演目は4本が海外または国際共同制作で、国内も小劇場系からさいたまゴールド・シアター(演出/蜷川幸雄)まで幅広いラインナップとなっている。

SPAC秋のシーズン2007で話題となった飴屋法水氏14年ぶりの演出作品『転校生』(作/平田オリザ)再演や、平田オリザ、アミール・レザ・コヘスタニ(イラン)、シルヴァン・モーリス(フランス)の3氏が1幕ずつ作・演出する新作、マレビトの会新作(作・演出/松田正隆)など小劇場系注目の作品が多い。

第2回は09年10月~12月開催を予定しており、以後は毎年秋の開催となる。

詳細は同サイト参照。

こうして、現在も続く「F/T」が始まったのだ。

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