この記事は2016年6月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。
東京のアーツセンターはここから始まった。夢の施設「にしすがも創造舎」の軌跡(1)理想の廃校を求めた創設前夜~稽古場利用開始
2004年8月20日、豊島区立旧朝日中学校を転用してオープンした稽古場施設「にしすがも創造舎」(東京・西巣鴨)。教室の稽古場利用から体育館の劇場化へと規模が広がり、東京国際芸術祭(TIF)からフェスティバル/トーキョー(F/T)と、二つの国際演劇祭をまたがって主会場にも利用されてきた。
当初は1年単位の契約更改で、あくまで暫定的な活用。廃校を転用した稽古場施設として有名な、京都芸術センター(京都・四条烏丸)のような防音設備もない。それでも、大道具等を置いて長期占有出来る稽古場は、東京の小劇場関係者にとって長年の夢だった。滞在制作ではなく、地元の稽古場施設がアーティストを長期支援するレジデントアーティストの考え方も、日本の小劇場界ではにしすがも創造舎が先駆けだったと言っていいだろう。私たちはにしすがも創造舎の誕生に狂喜し、レジデントアーティストに憧れ、その動向に目を見張った。にしすがも創造舎は、紛れもなく東京を代表するアーツセンターだった。
豊島区立巣鴨北中学校の建て替えに伴い、にしすがも創造舎は再び中学校の仮校舎として使われることになった。校舎は16年7月まで、体育館は16年12月が最後のプログラムとなる。このコンテンツは、にしすがも創造舎を運営するNPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)、NPO法人芸術家と子どもたちを、同施設誕生前から見つめてきたfringeの主要記事を再録したものだ。当時を振り返り、追記も入れた。創設前夜の03年から「F/T」へ移行していく08年までの記録である。
※記事は掲載当時の内容である。再録に伴い、旧連絡先等は削除した。リンクは移動先が判明したものは変更し、それ以外は削除した。
(関連リンク)
2003年、廃校探しを続けるアートネットワーク・ジャパンが
豊島区の演劇経験のある担当者と出会ったのが始まりだった
文部科学省が全国の廃校転用実態の詳細を発表、稽古場施設はまだ少数(2003/6/26)
文部科学省初等中等教育局施設助成課は、「廃校施設の実態及び有効活用状況等調査研究委員会」を設置して全国の廃校活用事例を調査していたが、その詳細を6月24日に同省ホームページで公開した。
調査では全国の実態と共にユニークな転用例50件を選び、「廃校リニューアル50選」としている。演劇人としては稽古場施設への転用に期待したいところだが、50選には京都芸術センター(京都市)と旧出石小学校(岡山市)が入っている。また、体育館が公演会場に使われることもある東京都港区の旧三河台中学校は、NPO法人への貸しオフィス(みなとNPOハウス)として紹介されている。
平成4年~13年の10年間に廃校となった公立学校は全国で2,125校。うち既存建物を活用しているのは1,298校、文化施設への転用は32校にとどまっている。都道府県別の廃校数は北海道248校、東京都165校、新潟143校の順。全国で年間150~220校が廃校となり、増加傾向にあるという。
詳細は同サイト参照。
東京・旧千川小学校の稽古場利用を伝える「アーツセンター千川」サイトに注目(2003/7/29)
全国で毎年増加している公立学校の廃校。中でも東京都は、この10年間に北海道に次ぐ165校が廃校となっているが、文化施設への転用は限られているのが現状だ(2003/6/26付本欄既報)。旧明倫小学校を再利用した京都市の京都芸術センターは成功例の代表のように伝えられるが、本来は京都芸術センターぐらいの公共稽古場施設が全国に無数になければいけないのであって、京都芸術センターが別格視される状況こそ日本の歪んだ姿だと思う。公共ホールと公共稽古場施設の数は、本来は逆でなければいけないとfringeは考える。
そんな東京で、ようやく廃校を利用した本格的な公共稽古場施設の話題がいくつか聞こえてきた。中でも注目すべき取り組みとして昨年から動いていたのが、豊島区の旧千川小学校だ。2002年3月末に廃校となった同施設を、東京国際芸術祭の運営母体として知られる特定非営利活動法人アートネットワーク・ジャパン(NPO-ANJ)が稽古場として試験利用し、03年4月に旧千川小学校利用者協議会へ「アーツセンター千川」名義で正式加盟。同施設3階の旧教室など9室を制作室として運営している(稽古場として使用可能は6室)。この間、豊島区に校舎の改造計画も提案したが許可が下りず、区と交渉を継続しているという。
03年5月20日にリニューアルしたNPO-ANJサイトでは、アーツセンター千川のサイトが設けられ、制作室の紹介とその利用諸注意、工事中だが使用状況のページも用意されている。これまでは、アーティスティック系やコンテンポラリーダンスのカンパニーを中心とした限られた利用だったが、情報が広く行き渡り、稽古場不足に苦しんでいる多くのカンパニーの希望の施設になってほしい。同施設の利用時間は9時~22時(完全退出)で、防音設備がないため21時以降は音量に注意。週1回の掃除当番やゴミの完全持ち帰りなども定められている。
同サイトには、このプロジェクトを担当したNPO-ANJ・蓮池奈緒子氏(同氏はリージョナルシアター・シリーズも担当)のドキュメント「廃校プロジェクト裏話」も連載中だ。04年のリージョナルシアター・シリーズ5周年特別企画コラボレーション(3/5~3/7、東京芸術劇場小ホール2)(2003/5/10付本欄既報)の稽古も、セゾン文化財団の助成により同施設で予定されている。
■旧千川小学校
171-0043 東京都豊島区要町3-54-16
地下鉄有楽町線「千川駅」徒歩3分
東京都豊島区要町3-54-16
文化デザイン課を新設した豊島区が「文化特区」を目指し、
2004年に旧朝日中学校の稽古場施設化を発表
東京都豊島区が廃校利用の新稽古場施設開設を発表、3年後には舞台芸術専用劇場も(2004/2/9)
東京都豊島区は平成16年度予算案で、廃校となった旧朝日中学校(西巣鴨)を活用した演劇や音楽の練習施設を設けるため、1千万円を計上した。
ここは1942年まで大都映画巣鴨撮影所があった芸術ゆかりの地でもある。現在は校舎2棟(4階+2階)と体育館が残されている。周辺が国道・寺院等に囲まれていること、特別教室が地下に配置されていることから、騒音が問題となる演劇・音楽の練習に最適な立地。芸術NPO等の活動スペース・事務室等も予定されている。運営は芸術NPOに任せる方針で、廃校を活用した芸術拠点を今後も増やしていく方針。
豊島区では2007年1月に、東池袋四丁目地区の再開発ビル業務棟内にプロセニアム形式の舞台芸術専用劇場(キャパ300名)も開設するが、新たに「舞台芸術プロデューサー」を置く。同予算案では、まずは委員会等にアドバイザー参加するための24万円を計上、来年度以降に事業企画や運営のプロデュースを委託する。
両事業とも、豊島区が03年度から新設した文化デザイン課が主管する。朝日新聞東京本社版2月5日付朝刊(都内版)は、豊島区が独自の「文化特区」実現のため、空き教室の活用、芸術NPOとの連携など、区レベルで可能な規制緩和を進めていくと紹介している。
旧朝日中学校
東京都豊島区西巣鴨4-9-1
都営三田線「西巣鴨駅」前
東京都豊島区西巣鴨4-9-1asahi.com「空き教室 芸術の拠点に」※掲載終了
JIAMウェブサイト/メールマガジン「インタビュー:豊島区保健福祉部 部長 東澤昭さん(上)」
JIAMウェブサイト/メールマガジン「インタビュー:豊島区保健福祉部 部長 東澤昭さん(下)」
アートネットワーク・ジャパンが旧朝日中学校内に移転、新稽古場運営スタートへ(2004/6/17)
特定非営利活動法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)が、6月16日に渋谷・道玄坂から西巣鴨・旧朝日中学校内に移転した。
ANJは特定非営利活動法人芸術家と子どもたち(6月16日に旧朝日中学校内に移転)と共同で豊島区から旧朝日中学校全体を借り受け、稽古場の運営を開始する(2004/2/9付本欄既報)。貸出先はこれまでANJが運営してきたアーツセンター千川(旧千川小学校)(2003/7/29付本欄既報)と同様、セレクトされたものになる模様。
ANJでは、今後ワークショップやドラマリーディングの開催、カフェの運営なども計画してるという。
■特定非営利活動法人アートネットワーク・ジャパン
170-0001 東京都豊島区西巣鴨4-9-1 旧朝日中学校内
詳細は同サイト参照
名称が「にしすがも創造舎」に決定、
東京では破格の好条件で稽古場利用団体の公募へ
廃校活用の東京・旧朝日中の名称が「にしすがも創造舎」に決定、稽古場利用団体の公募準備中(2004/8/9)
NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)が稽古場運営を準備中の豊島区・旧朝日中学校(東京・西巣鴨)の名称が、「にしすがも創造舎 Nishi-Sugamo Arts Factory」に決定した。8月9日にANJのメールマガジンで発表された。
ANJでは、8月中旬以降に2004年10月~3月の利用団体公募を開始する予定。fringeでは、ANJ主催による「にしすがも創造舎」稽古場内覧会を組み込んだ緊急トークセッション「fringeオフライン」を8月15日(日)に開催する。公募開始前に現地をじっくり見ることが出来るチャンスである。詳細は募集ページ参照。※掲載終了
稽古場公募については、fringeでも詳細に紹介する予定である。関心のある制作者は、毎日チェックを怠らないでほしい。
緊急トークセッション「疾走するプロデューサー・倉迫康史~Ort/Ort-d.dの4年半~」(2時間)
同時開催:西巣鴨・旧朝日中の新稽古場施設内覧会(1時間)
東京・にしすがも創造舎が稽古場利用開始案内を発表(2004/8/13)
NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)が廃校を活用した稽古場運営を準備中のにしすがも創造舎(東京・西巣鴨、旧朝日中学校)(2004/8/9付本欄既報)。その利用開始案内リーフレットが完成し、関係者に発送された。
詳細な応募方法は8月中旬以降に発表されるが、現時点で公表されている概要は次のとおり。この稽古場利用は豊島区文化芸術創造支援事業として実施され、松下電器産業株式会社が協賛している。
- 利用時間
10:00~22:00- 利用期間
原則として2か月以内
※基本的に専有稽古場とするが、状況により共同使用あり。- 応募資格
- 芸術の創造・普及活動について活動実績があり、常に独創性と高い意識をもち創作活動に臨んでいる団体または個人。
- 今後の活動計画を提示でき、具体的な公演時期または作品の発表が決定していること。
- 地域住民やアーティスト同士の交流に積極的であること。
- 創作場所の確保に困難をきたしていること。
- 利用規約を遵守できること。
貸出施設 普通教室 音楽室 体育館
数 5 1 1 面積 約55m2(床板張り) 約90m2(床板張り)
※段差面あり、フラット面は約62m2約556m2(床板張り) サイズ 6.7m×8.2m
(天井高3.0m)6.7m×13.5m
(天井高3.0m)18.6m×29.9m 利用料 1日 2,500円 4,000円 未定 1週間 15,000円 25,000円 1か月 60,000円 100,000円 ※料金は演劇・ダンス等の稽古場利用の場合。他は別途相談とする。小教室など、他の場所の利用も別途相談。
- 応募方法
詳細は8月中旬以降にANJサイトで発表。
- 提出書類(予定)
申請書、申請団体概要、今後の活動計画(1年半程度)、過去の活動の記録等- スケジュール(予定)
8 /20(金) 公募開始 ※2004年10月1日~2005年3月末使用分
9 / 6 (月) 公募締切
9 /15(水) 決定通知 ※ANJが設置する審査会で選考・決定
10/ 1 (金) 使用開始
東京・にしすがも創造舎が稽古場利用募集開始、使用料支払いは公演後でOK!(2004/8/19)
NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)が廃校を稽古場施設に転用した「にしすがも創造舎」(東京・西巣鴨、旧朝日中学校)(2004/8/13付本欄既報)。2004年10月1日~05年3月末使用分の利用募集が8月20日から開始されることが、8月19日正式発表された。ANJでは専用サイトをオープン、詳細を公開した。応募締切は9月6日(月)消印有効・持参締切。持参の場合は18時までとなる。
今回の公募は普通教室のみ。稽古場利用の団体に限り、作業場やタタキ場を低料金で貸し出す計画も発表された。作業場は普通教室で1日1,000円、タタキ場は地下の技術室を使用して1日2,000円。
さらに同施設の使用料については、前払いではなく、公演終了後2週間以内とすることが決まった。公演収入が入ってからの支払いになるため、資金繰りの面でこんなにありがたいことはないだろう。稽古場ジプシーに苦しんでいた東京の制作者にとって、救世主と言える存在だ。多数の応募が予想されるが、今後の長期計画やカンパニーの理念・実績をしっかりと示し、審査を勝ち抜いていただきたい。
なお、8月15日のfringeオフラインでも開催した同施設内覧会が、募集開始に当たり別途開催される(参加無料)。
- 日時
8/24(火)15:00、8/30(月)19:00、9/2(木)15:00- 参加方法
団体名・代表者名・希望日時・人数を明記の上、**********まで。詳細は同サイト参照。
(この項続く)
次の記事 東京のアーツセンターはここから始まった。夢の施設「にしすがも創造舎」の軌跡(2)東京国際芸術祭の体育館公演~劇場需要の高まり