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重要文化財である東京国立博物館表慶館(東京・上野)で上演中のOrt-d.d(本拠地・宮崎市+東京都立川市)+東京国立博物館『四谷怪談』が全ステージ前売完売となり(当日券は各ステージ15枚発売)、千秋楽の7月7日マチネに追加公演を決定した(2004/6/21付本欄既報)。本来は暗闇にライトアップされた重厚なファサードを堪能してから入館したいところだが、マチネでも作品世界は充分楽しめることだろう。

本企画の特徴は、劇場以外の公演で見られがちな会場を借景に見立てての舞台ではなく、可能な限り手を入れて建築との相乗効果を図っていること。吹き抜けのドーム直下での上演という、台詞劇としては致命的な反響音を逆手に取った創意あふれる演出。倉迫康史氏が培ってきた様式美、台詞や所作の遊びが随所に盛り込まれ、演出のダイナミズムを改めて実感させられることだろう。特に反響音は建物の構造を活かした音響効果と連動しており、デメリットをメリットに変えた公演として、演劇の歴史に残る快挙である。これらを具現化したキャスティングの妙とスタッフワークの素晴らしさ、表慶館での上演を可能にしたプロデュース能力に敬意を表したい。

首都圏では、こうした若手演劇人による画期的な試みが意欲的に続けられている。中でも本企画は完成度の高さから「伝説」となるだろう。fringeでは、特に閉塞感を抱いている地域の演劇関係者にこの作品を薦めたい。演劇を変えていくのは個人の志であることを、本企画は雄弁に物語っているからだ。新幹線代、飛行機代以上のものを持ち帰ることが出来るだろう。

■追加公演
日時:7/7(水)15:00 ※40分前より受付
料金:一般/3,000円、学生/1,500円(予約・当日とも)
予約:090-5204-8941 ort@m78.com