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助成団体にクレームをつけることは、助成を受けている側にはなかなか出来ないことだが、財団法人地域創造の助成事業に付けられている、あの金太郎マークはなんとかならないのだろうか。赤い金太郎のイラストと共に、「宝くじは豊かさ築くチカラ持ち。宝くじは、広く社会に役立てられています。」の文字が全体のレイアウトを崩す大きさで表示されている。地域創造が助成対象とする公共ホールの自主事業チラシで、たびたび見かけることがあるはずだ。

地域創造の財源はジャンボ宝くじだ。ジャンボ宝くじを所管する総務省(旧自治省)の外郭団体・財団法人自治総合センターが同くじの普及宣伝費(売上金の3%)を扱っており、その使途の一つである地域文化振興事業を地域創造経由で行なっている(地域限定の宝くじの普及宣伝費は財団法人日本宝くじ協会)。そのため、金太郎マークが付くのである。同センターが直接手掛ける各種助成事業にも付くが、劇場で目にすることが多いのは地域創造経由の助成である。自治総合センターではこの金太郎をコミュニティマークと呼んでおり、公式サイト上でデザインマニュアルをPDFで公開している。この呪縛に苦しめられたデザイナーも多いことだろう。

財団法人自治総合センター「コミュニティマークについて」

助成事業にロゴマーク等を表示することは、多くの助成団体が義務づけている。それ自体は当然のことだが、この金太郎マークはまずサイズの制約が厳しい。天地14ミリ未満での使用を禁じている。宝くじ普及広報事業の場合はこれにキャッチフレーズが加わるので、サイズはさらに巨大化する。極め付けが目立たせるための余白で、天地左右に厳密に規定されている。余白内に他の文章や写真が入ることは「絶対にできません」としている。用紙そのものが白以外の場合などは許されるようだが、普通のチラシの4色表面に入れる場合は、背景そのものを白にしなければならないようだ。そんなバカな、背景が淡い色なら認められるのではと私も疑ったが、実際に担当したデザイナーが確認したそうだ。

マニュアルには「余白をきちんと取ることが、デザインの効果を高めるうえで、とても重要です」と強調されているが、大規模な企画では複数の助成金申請をすることが当たり前になっている現在、宝くじ普及広報事業だけに大きなスペースを割くのは難しい。私たちが購入したジャンボ宝くじが財源になっているという公共性の高さはあるが、税金が原資になっている文化庁の助成制度や芸術文化振興基金に、このような制約はない。両者を並べて表示した場合の違和感は誰もが感じるだろうし、それ以前に金太郎マーク自体がデザインを台無しにするという感性を自治総合センター、地域創造の人々が持たないのは異常である。公共ホールが主催する舞台芸術の印刷物に入れられるという想像力が欠落しているとしか思えない。

こうしたことは私が指摘するまでもなく、内部の職員も感じているはずだ。地域創造の設立メンバーで、初代芸術環境部長の小暮宣雄氏(現・京都橘女子大学文化政策学部助教授)はこう語っている。

チラシには「読売新聞大阪発刊50年」のマークが小さくあって共催者であるからそれはまだ何も問題がないのだが、右端に「宝くじは豊かさ築くチカラ持ち。~宝くじは、広く社会に役立てられています。」という宣伝が金太郎のいかにもお役所が作ったイラストともに白く右下隅を占領している。

それはそれは実に興ざめで(宝くじの宣伝費を使っているという財団法人地域創造の限界が見え見えで)、これが地域創造の助成の見返りとしてやっていることの証でもあるわけで・・。ああなんていう恥ずかしさだろう(ぼくはもちろん当時財団内にいたときにこのマーク強制について反対というか不快表明はしたのだが)。もう自分の経歴からこの財団を設立したメンバーであるなんて書かないでおこうと思うほどの俗悪さである。

地域創造の生みの親がこう言うぐらいである。本当になんとかならないのだろうか。地域創造の数々の実績は誰もが認めるところだが、それだけに最も身近な金太郎マークの改革が出来ないことが、どうしようもない矛盾に感じられるのだ。