この記事は2003年12月に掲載されたものです。
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全席自由で受付が場内の混雑を把握する方法
入場者数の把握は受付の基本
全席自由の公演でよく問題になるのが、いま場内に何名のお客様がいるか正確に把握出来ず、まだ来場されていない前売券用にどれだけ席を確保しておけばいいのか、あと何枚当日券・当日精算券を売っていいのかが不明になることです。受付業務の基本中の基本ですが、若手カンパニーには試行錯誤しているところが少なくないようです。fringeでは決定版として、下記の方法を推奨します。
前売券・招待券は日時指定が原則
全席自由であっても、本来なら前売券・招待券は日時指定にすべきです。映画などと異なり、演劇興行では前売券は日時指定以外あり得ないのです(「当日精算券から前売券への移行」参照)。ただし、若手カンパニーの場合、期間中有効の前売券でないと売りにくいため、どうしても日時指定に踏み切れないところがあります。基本的にそれは間違っている、おかしいことだと認識してください。
日時指定に出来ないなら販売枚数の把握を
前売券を期間中有効にしている場合、正確な販売枚数を受付が把握してください。それをステージ数で割り、1ステージの平均を出します。もちろんお客様が均等に来場されるとは限らないので、平日は少なめに、土日は多めに調整を加えます。お客様の来場パターンは客層や会場によって異なりますので、カンパニーの過去の動員記録を参考に検討してください。創生期の若手カンパニーでは、使用する劇場が固定化されていることが多いと思いますので、来場傾向は必ずつかめるはずです。劇場側にアドバイスを受けてもいいでしょう。この公演日程ならどの回にお客様が入るか、劇場側はよくわかっているはずです。
こんな風に考える……前売券販売数327枚÷5ステージ=平均65.4枚 | ||
11/14(金) | 7:30 | 65枚→40枚(平日なので減) |
11/15(土) | 2:00 | 65枚→65枚 |
7:30 | 65枚→80枚(土曜ソワレなので増) | |
11/16(日) | 1:00 | 65枚→65枚 |
5:00 | 65枚→80枚(千秋楽なので増) |
前売券も絶対に受付を経由させる
前売券が期間中有効になっているにもかかわらず、前売券のお客様が受付を通らずに、直接もぎりを受けて入場されてしまう公演を見かけます。これでは受付が「いま前売券のお客様が何人来られているか」のリアルタイムな把握が出来ません。もぎった半券をまとめて受付に渡すのでは対応が遅すぎます。また、半券は様々な券種が混在しているため、混雑した現場ではカウント間違いも懸念されます。「当日券をあと何枚出せるか」の判断を迫られている場合、このような対応では甘すぎます。どのような券種であろうと、全員必ず受付を経由させて、受付がリアルタイムの来場者を把握する必要があるのです。
整理券を開演まで全員に発行し続ける
全席自由の公演では、整理券を発行するのが一般的です。当日券・当日精算券のお客様はもちろん、期間中有効の前売券では券面に整理番号を印字出来ませんから、前売券のお客様にも整理券を発行します。ここまではどの若手カンパニーもやっていることですが、問題は開場後の対応です。多くのカンパニーが開場後は整理券の発行をやめてしまい、単に客席入口でチケットをもぎるだけになってしまいます。
ここが最大のポイントですが、整理券は開場後もお客様全員に最後まで発行し続けるべきです。整理券の番号を連番にしておけば、その整理番号が現在の来場者数を示すことになり、受付がリアルタイムで場内の混雑具合を把握出来るからです。販売数をメモったり、もぎった半券をカウントする必要は一切ありません。単に劇場キャパシティの分だけ整理券をつくっておき、それを発行し続けるだけでよいのです。もちろん、整理券は欠番がないようステージごとにチェックし、欠番があればその場で補充します。
受付と客席入口が近い劇場だと、開場後は受付でもらった整理券を数秒後にもぎりに渡すという、一見奇妙な流れになりますが、それで構いません。受付でチケットはもぎってしまうのですから、どんなに近くても整理券を渡しておかないと、入場前にトイレに行ったお客様をもぎりでチェックする方法がなくなってしまいます(半券の提示は紛失や不正侵入を招くので、好ましくありません)。整理券は場内にいる人数を把握するためのカウンターなのですから、そのためだけに整理券を発行し続けるべきなのです。
開場前の整理券はお客様の入場順を示すものですが、それとは別に来場者数のカウンターの機能も担っています。開場時の客入れでは、整理券が何番まで出ているかを意識しながら客並ばせをするはずです。その機能を開場後も続ければいいのです。
実際のオペレーション
キャパ120名の劇場で、前売券の来場予測を80名にしていた回があったとします。開演15分前に整理券が100番まで出ていて、前売券がお客様が60名しか来ていないとしたら、これ以上当日券・当日精算券を出すのは危ないと瞬時に判断出来ます。この判断があれば、場内整理の指示を出して桟敷を広げる一方、当日券・当日精算券を希望するお客様には「場内の様子を見ながら発券いたしますので、あと5分お待ちください」と的確なアナウンスをすることも出来ます。
開演10分前になって前売券のお客様が65名(整理券は105番)なら、他の回に流れたと判断して、当日券・当日精算券のお客様をあと10名追加することが出来るでしょう。
本来、前売券を期間中有効にするのは間違いであると最初に書きました。どうしても期間中有効にしたいのなら、整理券でリアルタイムな入場者数を把握してください。このどちらもせずに、受付が情報不足になっている若手カンパニーが多すぎるのではないでしょうか。
もう一度繰り返します。整理券を発行するなら、開場後も発行し続けてください。