日本劇団協議会機関誌『join』の「私が選ぶベストワン2023」に参加させていただいた。3月発行予定の108号に掲載されるそうだ。
舞台 | 『Spring Grieving』(「桜川家の四兄弟」「春を送る」2本立て)PLAY/GROUND Creation | |
主演俳優 | 村岡希美 | 『Don’t freak out』ナイロン100℃ |
助演俳優 | 辻󠄀親八 | 『Spring Grieving』(「春を送る」)PLAY/GROUND Creation |
演出家 | 細川洋平 | 『あでな//いある』ほろびて |
スタッフ | 小沢道成 (分野:美術) |
『我ら宇宙の塵』EPOCH MAN |
団体 | PANCETTA | 目を見張る各種企画への応募・採択と、10周年公演『ゾウ』の成果。 |
戯曲 | 『Spring Grieving』(「桜川家の四兄弟」「春を送る」2本立て) | 須貝英 |
ノンジャンル | 公演の「再現」で演劇界に革命をもたらすEPADの8K定点等身大上映 |
「2023AICT会員アンケート」で作品の第1位に挙げたPLAY/GROUND Creation『Spring Grieving』(「桜川家の四兄弟」「春を送る」2本立て)を、舞台、助演俳優、戯曲のベストワンにした。主演俳優は圧巻の村岡希美氏。演出家の細川洋平氏は2年連続。それだけ心に残り続ける作用があるのだろう。
スタッフの小沢道成氏は、全面にLEDビジョンを使用した画期的な美術に対するもの。演劇人が経営する企業(SAPCEWA)の協力と、芸術文化振興基金とアーツカウンシル東京のW助成があればこそだと思うが、なによりもLEDビジョンと戯曲が一体化した表現が素晴らしかった。これまでも自ら多くの美術を手掛けてきた小沢氏を、優れた美術スタッフとして挙げたい。
EPOCH MAN『我ら宇宙の塵』。全体をLEDビジョンで囲んだ舞台は、小劇場では初めて見る。FunIQ/カムヰヤッセンだった辻貴大氏の会社が参画していると知り納得。プロジェクションマッピングとは別物の効果に目を奪われつつ、俳優主体からブレない演出が物語を屹立させる。配役も絶妙な真夏のノクターン。
— fringe (@fringejp) August 9, 2023
この作品はぜひ他地域でも上演したいということで、小沢氏自身もXで検討を呼び掛けていた。内容といい、サイズ感といい、本当にこうした作品が巡演出来ればいいと思う。読売演劇大賞では最優秀演出家賞、最優秀女優賞、優秀作品賞を受賞したが、それが買取公演の決裁権を持つ人々の背中を押してほしい。
団体のPANCETTAは、様々な上演企画への選出やザ・スズナリでの設立10周年公演『ゾウ』などの成果に加え、あらゆる公募への挑戦に感銘を受けた。主宰の一宮周平氏は、全国小劇場ネットワークの「第3回シアターホームステイプロジェクト」に応募して札幌でワークショップを行ない、「藤枝ノ演劇祭3」の滞在劇作家に応募して短編戯曲を書き、団体としてもロームシアター京都×京都芸術センターU35創造支援プログラム「KIPPU」公演準備の傍ら、世界遺産の富岡製糸場西置繭所を借りての一人芝居、TA-net「全国への舞台手話通訳派遣」の活用、金沢市民芸術村ドラマ工房での「百万石演劇大合戦」参加など、出来ることをすべてやった感がある。若手カンパニーが公演以外も含めて道を切り開いていく過程を見せてもらった一年だった。
ノンジャンルのEPADの8K定点等身大上映は、コロナ禍の苦しみが生み落とした最も未来へつながる出来事だと感じる。繰り返し書いているが、画角が大きすぎても小さすぎてもダメで等身大に限る。等身大で上映すると、「上映」ではなく「再現」になるのだ。
8K定点等身大と立体音響による上映が本格化すれば、安価なチケット代で人気公演が全国の劇場で繰り返し「再現」可能になります。これまで上演されることがなかった街でも「再現」が可能になり、演劇の魅力を体験出来るのではないでしょうか。リアルに劇場に足を運べる観客には物理的上限がありますが、この「再現」が加わることで、演劇の構造的課題だった「公演」収入だけで食べることが可能になっていくかも知れません。長年の夢だったパラダイムシフトが起きようとしているのです。
(参考)
私が選ぶ2005年ベストワン
私が選ぶ2006年ベストワン
私が選ぶ2007年ベストワン
私が選ぶベストワン2010
私が選ぶベストワン2016
私が選ぶベストワン2017
私が選ぶベストワン2018
私が選ぶベストワン2019
私が選ぶベストワン2020
私が選ぶベストワン2021
私が選ぶベストワン2022