『シアターアーツ』「2023AICT会員アンケート」関係者全員が集客・創客を〈自分ごと〉に

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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4月発行予定のAICT(国際演劇評論家協会)日本センター『シアターアーツ』(晩成書房)68号に掲載される「2023AICT会員アンケート」に参加させていただいた(以下、敬称略)。

今回は「演劇とエコロジー」が特集として組まれるので、年間回顧でもコメントが求められ、後半に記載した。いきなりエコロジーの話になるのはそのためである。「新人アーティスト」のカテゴリーが復活したため、村田青葉を挙げた。全国規模の3大若手コンクール(若手演出家コンクール、かながわ短編演劇アワード、せんがわ劇場演劇コンクール)すべてでファイナリストとなった演劇ユニットせのび以外に考えられない。岩手からの新風、配信で観た盛岡劇場メインホールでの『Home,sweet home.』もよかった。

「優れていた作品」、PLAY/GROUND Creation『Spring Grieving』とPANCETTA『ゾウ』は、両団体とも旗揚げ以来のベストではないかと思う。前者は繊細な人間模様を確かな言葉で紡ぎ、絶妙な距離感の2本立てで思いがさざ波にように広がる。後者は笑いのオブラートに包みながら、隠された物語を観客に想ゾウさせる戦慄の構成。こうした作品に出会うため、私は劇場に通っているのだ。ほろびて『あでな//いある』とコンプソンズ『愛について語るときは静かにしてくれ』は、ロシアのウクライナ侵攻を背景に、対立や分断、戦争へ演劇的なアプローチで迫る。テイストは全く違うが、どちらも演劇を上演することの意味を再確認させられる。NODA・MAP『兎、波を走る』は、横田めぐみさんの北朝鮮拉致問題に挑んだ作品。日本航空123便墜落事故を扱った『フェイクスピア』に続き、野田秀樹の覚悟が伝わる。社会派を謳う演劇人が取り組むべきテーマは、まだまだあるのではないか。

年間回顧、最後の部分はホリプロ『ねじまき鳥クロニクル』アフタートークの成河の発言について。言いたいことはわかるが、あり得ない例えで、この文脈であの言葉が出てくること自体に潜在的な問題があると思わざるを得ない。研修などをきちんと受けるべき。観客との新しい関係性を切り開いていける人と思っていただけに、残念でならない。

■優れていた作品(5本、順位あり)
(1)PLAY/GROUND Creation『Spring Grieving』(「桜川家の四兄弟」「春を送る」2本立て)サンモールスタジオ
(2)NODA・MAP『兎、波を走る』東京芸術劇場プレイハウス
(3)PANCETTA『ゾウ』ザ・スズナリ
(4)ほろびて『あでな//いある』こまばアゴラ劇場
(5)コンプソンズ『愛について語るときは静かにしてくれ』OFF・OFFシアター

■優れていたアーティスト(3名まで)
○ケラリーノ・サンドロヴィッチ(劇作家・演出家/ナイロン100℃)
○生田みゆき(演出家/文学座、理性的な変人たち)
○一宮周平(劇作家・演出家・俳優/PANCETTA)

■新人アーティスト(1名)
○村田青葉(劇作家・演出家・俳優/演劇ユニットせのび)

■年間回顧(400字程度)
 コロナ禍が終息しても小劇場系への観客の戻りは鈍い。チケット値上げが逆に観劇を遠ざける悪循環。そのままでは「業」になり得ない演劇を育てるためにはどうしたらよいか、いまこそ関係者全員が〈自分ごと〉として考えてほしい。演劇人はよい作品をつくるためなら、千穐楽まで修正を加えていく。それと同じ情熱を集客・創客に注いでほしい。俳優座劇場、こまばアゴラ劇場の閉館が発表され、残された時間は少ない。希望はEPADの8K定点等身大上映。演劇を「再現」し、興行を変えていくと期待している。
 エコロジーについては、まず目先のリアルな問題に取り組むことが重要。舞台美術を始めとするリユースの促進、その前提となる創造環境を風通しよくするため、ハラスメントへの意識改革が喫緊の課題。他者を理解出来ない者に環境が理解出来るだろうか。大規模なカルチベートチケットや芸術監督公開トークでの進行が際立っていた人気俳優の失言が本当に残念。観客との関係を強く意識していたはずなのに。

■年間の観劇本数
約70本