日本劇団協議会機関誌『join』の「私が選ぶベストワン2022」に参加させていただいた。間もなく発行される105号に掲載されるそうだ。
舞台 | 『悪いのは私じゃない』MONO | |
主演俳優 | 水沼健 | 『悪いのは私じゃない』MONO |
助演俳優 | 葛堂里奈 | 『心白』ほろびて |
演出家 | 細川洋平 | 『苗をうえる』『心白』ほろびて |
スタッフ | 綿貫凜 (分野:プロデュース) |
オフィスコットーネ全作品 |
団体 | 劇団チョコレートケーキ | 「生き残った子孫たちへ 戦争六篇」上演の偉業達成に対して。 |
戯曲 | 『Secret War―ひみつせん―』 | 詩森ろば |
ノンジャンル | 公演8か月前に文学座『文、分、異聞』の魅力を伝えた中日スポーツ |
舞台と主演俳優は迷うことがなかった。前身のB級プラクティス時代からMONOを観続けているが、今回がベストと言っても差し支えないと思う。水沼健氏のキャラクターを最大限に活かし、今日的なテーマに当てはめた内容は、まさに傑作だと思う。
MONO『悪いのは私じゃない』。重い題材を扱いながら全編笑いが絶えない、このカンパニーの真骨頂が炸裂。その絶妙感を具現化する水沼健マジック。ハラスメントという言葉を一切使わず自省を求める姿勢に、演劇の現場も含めて向き合う土田英生氏の強い意思を感じた。ここまで作品に投影する熱意に感動。
— fringe (@fringejp) March 19, 2022
ほろびて『苗をうえる』『心白』も心に刺さる作品だったが、どちらもまだ先を目指せる可能性を感じる部分もあった。そのため、今回は演出と助演俳優とした。現時点では、今年1月に上演された『あでな//いある』がその到達点だと考えている。岸田戯曲賞を取る日も近いと確信している。
スタッフは、故人として紹介するのが口惜しい綿貫凜氏。近年は大竹野正典戯曲の紹介で評価されているが、カンパニーとは独立した小劇場系制作会社の先駆けとして、数々の作品を送り出してきた功績はあまりにも大きい。もっと評価されるべきだと思う。私に出来ることは、こうした機会にお名前を出すことだけだが、その名が長く語り継がれることを願っている。
団体は、劇団チョコレートケーキが東京芸術劇場シアターイースト/シアターウエストを同時使用した「生き残った子孫たちへ 戦争六篇」とした。コロナ禍でどうなることかと思われた企画だが、全ステ上演出来たことに、2021年のNODA・MAP『フェイクスピア』と同じく演劇の神様の存在を感じた。
劇団チョコレートケーキ「生き残った子孫たちへ 戦争六篇」大千穐楽『ガマ』。平時でも困難な企画を無事完走。やはり演劇の神様はいるのではないかと思う。大和田獏氏はトム・プロジェクト『Sing a Song』つながりだと思うが、この配役が既視感のある設定を劇チョコならではの深みに昇華させていた。 pic.twitter.com/CuIBOrfpNZ
— fringe (@fringejp) September 4, 2022
serial number『Secret War―ひみつせん―』は、東日本大震災後のエンタメ路線とは別に、詩森ろば氏が描き続ける人と科学の物語。詩森作品の通奏低音として流れる科学への希望の源流がなんなのか、その答え合わせが出来た戯曲だった。
ノンジャンルは毎回様々な回答が寄せられているので、今回は作品を離れ、作品への興味を掻き立ててくれた新聞記事を挙げた。邪道かも知れないが、優れたメディアが評価されてもよいのではないか。『喜びの琴』事件を描いた作品が、同じ文学座アトリエで上演されることを8か月も前に知らせた詳細な記事。無記名だが、その熱意が新しい観客を少なからず増やしたと思う。
ここに挙げたのは「ベストワン」なので、次点や新人をどう考えていたかは、「2022AICT会員アンケート」を見ていただきたい。
(参考)
私が選ぶ2005年ベストワン
私が選ぶ2006年ベストワン
私が選ぶ2007年ベストワン
私が選ぶベストワン2010
私が選ぶベストワン2016
私が選ぶベストワン2017
私が選ぶベストワン2018
私が選ぶベストワン2019
私が選ぶベストワン2020
私が選ぶベストワン2021