私が選ぶベストワン2017

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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日本劇団協議会機関誌『join』の「私が選ぶベストワン2017」に参加させていただいた。2月末発行予定の90号に掲載されるそうだ。

当然ながら、私が知り得る限られた範囲からの選択である。全国には、まだまだ素晴らしい作品が埋もれているかも知れない。

舞台 『ちょっと、まってください』ナイロン100℃
女優 百花亜希 キコ/qui-co.及び小栗剛の各作品
男優 山内健司 『心中天の網島―2017リクリエーション版―』木ノ下歌舞伎
演出家 赤澤ムック 『人間の条件』劇作家女子会。
スタッフ Mrs.fictions
(分野:プロデュース)
『15 Minutes Made Anniversary』
団体 風琴工房 新たな展開を目指して名前を変える風琴工房の生き方そのもの。
戯曲 『粛々と運針』 横山拓也
ノンジャンル 花まる学習会王子小劇場「ディレクターズワークショップ」の活動

3年ぶりの新作となったナイロン100℃は、見事な不条理劇で現代社会を風刺した。メッセージ性にあふれる作品で、私が演劇に期待する要素が詰まっていた。心に残る作品は多数あるが、一本だけ選ぶとしたらこれになるだろう。

女優は百花亜希氏を選んだ。以前から活躍が目立つが、2017年は小栗剛作品での存在感が素晴らしかった。その人がいることで成立している作品は少なくないが、小栗作品における彼女の姿は、それを超越しているように思える。小栗作品の世界で生きる彼女の姿を目撃したいがために、劇場に足を運んでいる自分がいる。

男優は「その役を演じるために生まれてきた」と感じた俳優が複数いたが、それとは別の巧さで山内健司氏の演技に魅了された。作品自体の魅力もあるのだが、全身全霊でエロ親父を歌い上げた姿そのものに痺れた。この魂の演技を選びたい。

演出については、どこまでが演出家の成果なのかをいつも考えるが、上位に挙げたい作品のうち、この演出家がいたからこそと思えた『人間の条件』を選んだ。音楽・後藤浩明氏の集大成とも言えるミュージカルで、スタッフワーク全体の完成度にも驚愕したが、だからこそ演出の役割は重く、赤澤ムック氏だから成し得た成果だったと思う。

スタッフはその後藤氏を入れるべきか悩んだが、fringeならではの人選をすべきだと思い、他の選者が選ばないと思われる、プロデューサーとしてのMrs.fictionsを挙げた。10周年を迎えた「15 Minutes Made」の功績は、首都圏の小劇場関係者なら誰もが認めるところだろう。ブッキングの妙と継続性で、まさにショーケースイベントのお手本である。

風琴工房は個々の作品も上位に挙げたいが(特に『アンネの日』)、この劇団名での活動を終えることを思うと、胸に去来するものがある。fringeと共に活動したことも多く、作風を変化させながら新たな道を歩んでゆく姿にエールを贈りたい。主観的すぎるかも知れないが、詩森ろば氏の生き方そのものに団体賞を。

戯曲は全く迷わなかった。17年はこれしかない。『粛々と運針』の岸田戯曲賞受賞を望む。『ハイツブリが飛ぶのを』が文化庁芸術祭賞新人賞なら、『粛々と運針』は岸田戯曲賞だと思う。

ノンジャンルは敢えて非公開のワークショップを挙げた。残念ながら開催中の第6回で終了とのことだが、俳優ではなく演出家のための無料ワークショップを6年間に渡って開催し、小劇場演劇の底上げを図った功績は大きい。こうした活動は記録に残されるべきである。

(参考)
私が選ぶ2005年ベストワン
私が選ぶ2006年ベストワン
私が選ぶ2007年ベストワン
私が選ぶベストワン2010
私が選ぶベストワン2016