私が選ぶベストワン2021

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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日本劇団協議会機関誌『join』の「私が選ぶベストワン2021」に参加させていただいた。3月末発行の102号に掲載されるそうだ。

前回に続きコロナ禍での選出になるが、演劇は元々上演された作品からしか選ぶことが出来ないし、観客は物理的にすべての作品を観ることは出来ない。だから、コロナ禍で選出がことさら不公平になるわけではなく、逆にそうエクスキューズすること自体が、選ぶ側の傲慢ではないかと私は思う。一方的に選出する演劇賞やアンケートが元々公平ではないことを自覚し、それを大前提にどんな作品を選び、どんな出会いがあったかを残すことしか出来ないのだ。特に、首都圏の選者は他地域で上演された作品の可能性を忘れてはならない。

舞台 『フェイクスピア』NODA・MAP
主演俳優 村岡希美 『老いと建築』阿佐ヶ谷スパイダース
助演俳優 亀田佳明 『ダウト~疑いについての寓話』風姿花伝プロデュース
演出家 谷賢一 『丘の上、ねむのき産婦人科』DULL-COLORED POP
スタッフ 吉田能
(分野:音楽)
あやめ十八番『音楽劇 百夜車』
団体 風姿花伝プロデュース 翻訳会話劇の醍醐味を伝え続ける小劇場公演のなんと贅沢なことか。
戯曲 『フェイクスピア』 野田秀樹
ノンジャンル 日本初演となった『Navy Pier 埠頭にて』PLAY/GROUND Creation

舞台と戯曲は『フェイクスピア』が別次元の存在感だった。21世紀以後の野田秀樹ベストワンではないだろうか。まさに言霊の力を実感した。「日本航空123便墜落事故」を基に、驚愕の構成で物語を真実に食らい付かせた渾身の大傑作である。観終わった瞬間、「今年のベストワンはこれだ」と確信した。緊急事態宣言の間隙を縫って東京・大阪で全ステージ上演出来たのは、大勢の観客に目撃させたいという演劇の神様の願いだったのではないかと思う。それほどまでに特筆される舞台だった。

主演俳優は『老いと建築』の村岡希美氏。『ダウト~疑いについての寓話』の那須佐代子氏と非常に迷ったが、村岡氏の存在そのものに魅了された。演出はDULL-COLORED POP以外も複数の外部演出を手掛けた谷賢一氏。男女の逆転バージョンを上演し、ジェンダーギャップを演劇的手法で可視化させた『丘の上、ねむのき産婦人科』を挙げておきたい。スタッフは戯曲と一体化した小劇場版オペラを現出させた吉田能氏とした。

風姿花伝プロデュースは毎年の完成度に驚かされるが、今年は特に観応えがあった。『ダウト~疑いについての寓話』で那須氏とやり合う亀田佳明氏を助演俳優とし(クレジットは亀田氏が先だが、主演と言えるのは那須氏)、このプロデュース公演を続ける団体としても挙げさせていただいた。劇場支配人が主演を務める姿からは、どんな境遇でも作品を発信し続ける決意がみなぎっていたと思う。

ノンジャンル『Navy Pier 埠頭にて』は日本初演のキャスト4名によるモノローグ劇。最初は不思議に感じたが、全体の構成がわかると戦慄が走る。この作品を発掘して紹介したこと自体を評価したい。

(参考)
私が選ぶ2005年ベストワン
私が選ぶ2006年ベストワン
私が選ぶ2007年ベストワン
私が選ぶベストワン2010
私が選ぶベストワン2016
私が選ぶベストワン2017
私が選ぶベストワン2018
私が選ぶベストワン2019

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