この記事は2010年9月に掲載されたものです。
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小劇場演劇(小劇場)の定義を再確認、「小劇団」なんて言葉はない

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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最近、「小劇団」という言葉をよく耳にするようになった。昔からこういう言い方をする人はいたが、あまりに増えると市民権を得てしまいそうなので、ここでダメ出しをしておきたい。なにが小さいのか不明だが、劇場のキャパシティや興行規模に関わらず、劇団は劇団だろう。大小などを付けるべきではない。

「小劇場演劇の劇団」を略しているつもりなら、それも違う。小劇場演劇(小劇場)は演劇のスタイルを示す言葉で、規模を表わしているのではない。「小劇団」などと言うと、意味がわからなくなってしまう。演劇人が自らを矮小化して口にするケースもあるようで、言葉の意味をよく考えて使ってほしい。

小劇場演劇(小劇場)はなにか言えば、fringeでは「このサイトについて」で次のように説明している。

小劇場演劇(小劇場)は、小さな劇場を意味する言葉ではありません。俳優中心に結成された新劇に対し、演出家中心に組織された集団であること。団体客に依存する商業演劇や、演劇鑑賞団体と不可分の新劇と異なり、個人客をベースにした手打ち興行であること。つまり劇場の大小ではなく、カンパニーという小さな組織で、演劇を個人で楽しむライフスタイルを体現したものが小劇場だと私は考えています。小劇場という言葉は決してマイナーを意味するのではなく、夢の詰まった演劇本来の姿だと感じます。小劇場からスタートしたカンパニーは、大劇場で公演するようになっても小劇場演劇なのです。

芸術面では演出家の存在、興行面では個人客中心であること――これが守られている限り、劇場が大きくなっても小劇場演劇(小劇場)だと私は思う。この定義は私自身が長年かけて熟成させてきたもので、共感していただける方は多いと信じている。マイナー感が漂うので、小劇場演劇(小劇場)という言葉を使いたくないという若い演劇人もいるようだが、それは全くの誤りである。

大劇場で上演しているのに小劇場というのは一般客が混乱するので、そこで敢えて小劇場という言葉は使わなくてもいいと思うが、「小劇場から大劇場へ進出」「小劇場を卒業」のように、キャパや興行規模だけで語るような使い方はやめてほしい。影響力のあるマスコミは特に注意すべきだろう。

私は、これからもプライドを持って小劇場演劇(小劇場)という言葉を使っていきたい。

(参考)
小劇場の定義