青山劇場・青山円形劇場の存続について思うこと――劇場という「施設」を残す議論ではなく「機能」を残す議論に

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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大規模修繕の工事費が確保出来ず、2015年2月に閉館したこどもの城(東京・青山)。公益財団法人児童育成協会が管理運営する施設で、併設された青山劇場・青山円形劇場も閉館となり、演劇界に大きな衝撃を与えたことは記憶に新しい。舛添要一前知事が構想していた跡地への都立広尾病院移転拡充が小池百合子知事になって白紙撤回され、建物自体は修繕すれば使えるはずということで、存続を求める声が高まっている。

「こどもの城、青山劇場、青山円形劇場の存続を願う有志の会」には、演劇人も多数名前を連ねており、fringeも12年の閉館発表直後にお誘いを受けたが、参加はしていない。11月23日には有志の会によるシンポジウム「未来のために、こどもの城『どうしたい?こうしたい!』会議」も開催される。よい機会なので、ここで本件に関する私の考えをまとめておきたい。

最初に強調しておきたいのは、小劇場演劇を長年愛してきた者として、私も青山円形劇場は大好きだということだ。1985年にオープンした同劇場の黄金期である「青山演劇フェスティバル」(1987年~2001年)をリアルタイムで体験したわけで、古いファンほど同劇場の素晴らしさを熟知していると言っていいだろう。また、私が歴代の小劇場系カンパニーでいちばん好きなのは、ここにも書いているとおり遊◎機械/全自動シアターである。そのホームグラウンドである同劇場への思いは強い。舞台機構の魅力は言うまでもなく、日本初の完全円形劇場として演劇人なら誰もが憧れる空間だろう。東京公演は青山円形劇場の完全円形で、大阪公演は近鉄アート館の四方客席(四方囲み)でツアーというのが、90年代の小劇場関係者の夢であり、それが実現出来なかったことは私自身の心残りになっている。

それだけの思いがある青山円形劇場だが、一方で私には「都市部に貸館中心の公共ホールは要らない」という信念がある。青山劇場・青山円形劇場が貸館中心かどうかは意見が分かれる点だと思うが、都心の一等地にあり、自治体の公共ホールのような長期利用の制約もない夢のような施設だからこそ、他劇場では出来ない画期的な企画を打ち出していかなければならない。その代表が青山劇場の「青山バレエフェスティバル」(1986年~2000年)、青山円形劇場の「青山演劇フェスティバル」だった。職員の方には失礼な言い方になるかも知れないが、外部から見ていると、こどもの城劇場事業本部は高谷静治事業本部長、能祖将夫プロデューサーという人材が培ってきた財産で、00年代以降を過ごしていたような印象を受けるのだ。

もちろん後継企画もあったが、青山円形劇場で言えば「Aoyama First Act」「青山演劇LABO」「青山円劇カウンシル」が機能して、第二の遊◎機械/全自動シアターやZAZOUS THEATERを育てたかと言うと、そこまでは到達していないと思う。中劇場に挑戦するジャンプアップとしての機能も、三鷹市芸術文化センター、世田谷パブリックシアター、吉祥寺シアター、座・高円寺、そして東京芸術劇場が担うようになった。90年代に青山円形劇場と言えば、本当にキラキラと輝く宝石のような響きがあったものだが、近年の同劇場にそこまでの存在感があったかについては、冷静に検証すべきだと思う。閉館が決まってから、ファイナル企画として14年に「青山演劇フェスティバルSPECIAL」、15年に「青山バレエフェスティバル―Last Show―」が開催されたが、なぜこれがもっと早く実現出来なかったのかと思う。

また、こどもの城劇場事業本部の元々のミッションは「舞台芸術を通して、子どもの情操を高める」である((財)児童育成協会について≪事務・事業説明資料≫)。だとしたら、子供向け・親子向けの演劇企画の多くも、こどもの城が発信源になるべきだと思うが、他の公共ホールで開催されているものが多い。例えば「TACT/FESTIVAL」など、東京芸術劇場ではなくこどもの城が主会場になるべきものではなかっただろうか。

青山劇場に関しては、ミュージカルに最適な全床スライド機構を備え、プロダクションの需要も高く、改修して利用する価値があるだろう。だが、青山円形劇場の場合は表現のハードルが高く、完全円形で上演されていない作品も多い。この劇場の魅力を最大限に引き出すには、上演団体と劇場が企画を練り上げていくことが重要で、単なる貸館が最もそぐわない劇場なのだ。全公演が少なくとも提携公演以上で、それを実現するための制作者チーム、プロデューサーが劇場に必要だと思う。この劇場こそ、芸術監督が必要なのではないだろうか。

青山劇場・青山円形劇場を語るとき、どうしても劇場機構の魅力が中心になるが、劇場の価値を決めるのはそこで上演される作品であり、そのクオリティを担保するのが劇場の運営だ。特に青山円形劇場の存続について、有志の会が劇場機構や稼働率を強調しているのに、私は違和感がある。存続を願うなら、演劇界でどういう役割を担っていくべきなのかを語ってほしい。東京都の施設になるのなら、公益財団法人東京都歴史文化財団が東京芸術劇場と一体運営し、企画を棲み分けて使っていくという考え方もあるだろう。劇場を残すことは目的ではなく手段である。劇場という「施設」を残す議論ではなく、劇場という「機能」を残す議論にすることが重要だと思う。

青山円形劇場を完全円形で使いこなす作品が次々と現われ、14年に甦った近鉄アート館とのツアーが行なわれ、次の世代の遊◎機械/全自動シアターが生まれる小劇場界を目指すのなら、私も存続に賛成したい。