この記事は2010年5月に掲載されたものです。
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劇場法(仮称)に関する議論まとめ(2010年5月16日現在)
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可児市文化創造センター(岐阜県可児市)館長兼劇場総監督の衛紀生氏は、公式サイトに劇場法(仮称)に関する提言を4月9日掲載。劇場法(仮称)で配置される芸術監督・経営監督・技術監督を常勤に近い形にしないと、「芸術家が好き勝手に自分の芸術的野心を達成するだけに地域を利用するなら、住民から乖離したプログラムがいたずらに繰り返され、結果として劇場・ホール運営が破綻するのは火を見るより明らかです」と指摘している。
可児市文化創造センターサイト/館長の部屋
「地域劇場の現場からの提言―劇場法と芸術支援に向けての私見。」
http://www.kpac.or.jp/kantyou/essay_85.html
芸団協は「実演芸術の将来ビジョン2010(第一次案)」を4月16日発表。劇場法(仮称)の具体的提案を行ない、劇場・音楽堂を下記2分類とした。
- 創造・制作機能を重視した「創造型」
- 鑑賞機会提供と教育普及事業を中心とした「提供型」
いずれも経営責任者(館長)、芸術責任者(芸術監督・プロデューサー)、技術責任者の配置を義務づけ、技術職員の技能認定制度と教育普及事業の責任者配置も明記した。予算は公益法人会計基準による標準公共劇場会計を確立し、創造事業・提供事業・教育普及事業に国の補助金が拠出されるとした。
提案では新たな助成制度構築も求めており、2カテゴリーからなる助成プログラムの開発、表現分野の特性に応じたパターン別助成策、助成額を寄付金額と比例させるマッチンググラントの試行が明記された。劇場・音楽堂への支援もその一環とされている。
- 年間事業総合評価プログラム(団体助成に相当) ⇒マッチンググラント試行
- 先行投資型(演劇、オペラ、ダンス、バレエ)
※初演・再演で助成率差別。演劇は団体規模が幅広いため、別枠にすることも検討。 - 人財活用型(オーケストラ) ⇒先行導入(公益法人格を有し、活動と経費の関係が明瞭なため)
- 人財活用型(伝統芸能、大衆芸能)
- 劇場・音楽堂型
- 先行投資型(演劇、オペラ、ダンス、バレエ)
- 単位事業評価プログラム(公演助成に相当)
- 公演活動への定額支援
- 巡回公演への旅費等助成
- 新作委嘱(脚本・作曲)助成
- 制作等スタッフ人件費助成
いずれも従来の赤字補填ではない、一定割合や定額の事業助成となる。年間事業総合評価プログラムには新公益法人の会計基準と情報公開原則が求められ、カンパニーの公益法人化が促進されるとしている。その他、芸術文化振興基金の独立、国際交流基金との統合も視野に入れるとした。
芸団協サイト「実演芸術の将来ビジョン2010」
http://www.geidankyo.or.jp/02shi/vision2010/
芸団協では合意形成のため、4月22日~23日に公的支援についてのジャンル別ラウンドテーブル、4月30日~5月1日に劇場法(仮称)についてのラウンドテーブル(ネット中継あり)、5月12日に平田オリザ氏を招いた将来ビジョンについての講演会を開催した。5月25日も将来ビジョンについてのラウンドテーブルが予定されている。
劇場法(仮称)についてのラウンドテーブルについては、当日のPowerPoint資料とUSTREAMの4月30日中継アーカイブが公開されている。
芸団協サイト/芸団協ラウンドテーブル「劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!」
http://www.geidankyo.or.jp/12kaden/04pro/manage/gekijo_rt100430html.html
このラウンドテーブルに参加した高崎大志氏(NPO法人FPAP、本拠地・福岡市)は、5月1日付の個人ブログで想定問答集を記している。
PINstage高崎の「さくてきブログ2」「『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』勝手に想定問答」
http://sakuteki.exblog.jp/11038009/
セゾン文化財団とこまばアゴラ劇場は、4月26日から隔週ペースで20回に渡り、都内で「創造型劇場の芸術監督・プロデューサーのための基礎講座」を開催している。定員40名だが、応募者多数によりネット配信によるサテライト受講30名を追加した。「若い演劇人の皆さんへ」と題した案内文で平田氏は、「地方の公共ホールが芸術監督を置いて演劇創作に乗り出すようになれば、各劇場は真剣に観客動員を考え、先進性と大衆性のバランスをとるようになります」とし、アート系だけでなくエンタメ系にも劇場法(仮称)が身近な存在になるとしている。
セゾン文化財団サイト「創造型劇場の芸術監督・プロデューサーのための基礎講座」
http://www.saison.or.jp/topics/01.html
文部科学大臣及び文化庁長官の諮問機関である文化審議会の文化政策部会は、舞台芸術ワーキンググループを4月13日~26日に開催。劇場法(仮称)について「早急に具体的な検討を行う必要がある」とし、5月12日開催の文化政策部会に報告した。支援制度の抜本的見直しなど、内容は芸団協「実演芸術の将来ビジョン2010」に沿った形となっている。
文化庁サイト/文化審議会文化政策部会「舞台芸術ワーキンググループ意見のまとめ」
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/seisaku/08_05/pdf/shiryo_4.pdf
公明党文化芸術振興会議は4月29日に「新たな文化芸術振興ビジョンへの提言」を発表。劇場法(仮称)制定により、100~200の拠点を選ぶとした。同時に助成制度を抜本的に見直し、根拠法として文化芸術振興助成法(仮称)を制定、芸術文化振興基金を日本版アーツカウンシルに改組すべきとした。
公明党サイト「新たな文化芸術振興ビジョンへの提言(全文)」
http://www.komei.or.jp/news/detail/20100429_2027
5月中旬に流通した日本劇団協議会機関誌『join』68号は、3月1日に平田氏へ実施したロングインタビューを掲載。4月1日に青年団サイトに掲載された「新年度にあたって 文化政策をめぐる私の見解」をより詳しくした内容となっている。平田氏は「文化予算の総額を増やしたい」「劇団への助成金は減らさずに劇場への助成金を増やしていきたい」と説明している。編集後記で同協議会広報委員の白川浩司氏(テアトル・エコー、本拠地・東京都渋谷区)は、演劇界の何十年来の課題に対し、「新政権下の文化政策が『突破口』となる可能性を秘めていることは間違いありません」としつつ、「観客論については、全国の演劇鑑賞会を回り、地域の方と芝居の喜びや苦しみを噛み締めている身としては違和感が残りました」と記している。
平田氏は5月7日に早稲田大学演劇博物館グローバルCOEプログラム「演劇・映像の国際的教育研究拠点」芸術文化環境研究コースフォーラム、5月15日に精華小劇場(大阪・難波)の精華演劇祭フォーラムで講演。精華小劇場は約150名が参加し、関西でも劇場法(仮称)に対する関心が高まっている。6月23日には京都芸術センター(京都・四条烏丸)でも開催予定。5月7日のTwitterがまとめられている。
Togetterまとめ「『舞台芸術環境の未来を考える』2010/5/7」
http://togetter.com/li/19421
文化政策研究者のあいだでは、劇場法(仮称)の制定手続き等について意見が出ている。野田邦弘氏(鳥取大学教授)は従来の文化政策への反省を国民的議論で経ない限り、「文化芸術振興基本法の成立過程と同じ轍を踏むことになる」と指摘。片山泰輔氏(静岡文化芸術大学准教授)は、「劇場等の文化施設に国が直接補助金を出すという政策は、地方分権の観点から問題」とし、国は自治体(劇場側)ではなく芸術団体側に支援し、それが劇場等を拠点として使用出来る形に持っていくべきと提言している。
文化政策提言ネットワーク(CPネット)公開メーリングリスト
5月3日付「劇場法の議論について」(野田邦弘氏)
http://groups.yahoo.co.jp/group/cpnet-info/message/2948
5月5日付「劇場法をめぐる議論に関しての私見」(片山泰輔氏)
http://groups.yahoo.co.jp/group/cpnet-info/message/2953
大澤寅雄氏の書いた個人ブログには、4月22日に高萩宏氏(東京芸術劇場副館長)が回答する形でコメントを寄せた。
「劇場法」または「芸術拠点整備法」について 100416 高萩メモ
http://toraodoc.blogspot.com/2010/04/blog-post_01.html?showComment=1271923798174#c8017262151522577824
大澤氏はこれを受けて、劇場法(仮称)の狙いは公共ホールを指定管理者制度の適用外に位置づけることではないか、先に国立劇場や新国立劇場を「劇場・音楽堂」の条件に見合うものにすべきではないか、などと考察している。
TORAO.doc「高萩さん、コメントありがとうございます」
http://toraodoc.blogspot.com/2010/04/blog-post_23.html
風琴工房(本拠地・東京都中野区)主宰の誌森ろば氏は、原点に立ち戻って公的助成の在り方について連載を続けている。完結が待たれる。
LIVESTOCK STYLE
「劇場法のこと(1)」
http://ameblo.jp/shimorix/entry-10495262275.html
「劇場法のこと(2)」
http://ameblo.jp/shimorix/entry-10497792594.html
「劇場法のこと(3)」
http://ameblo.jp/shimorix/entry-10497792829.html
fringe自体の劇場法(仮称)に対する現時点の考えは、下記のとおりである。
fringe blog「劇場法(仮称)に対する私の考え」
http://fringe.jp/blog/archives/2010/05/16144813.html※Twitter用に要約するとこうなる。
劇場法(仮称)提言はfringeの主張と重なり賛成だが、合意形成にもっと時間を。推進側は演劇界の温度差を埋める努力を。法と助成の枠組みが異なる点はもっと説明を。日本の演劇文化を育んだ民間劇場にリスペクトを払い、非課税措置の同時実現を。
(この項続く)
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