Pocket

●分割掲載です。初めての方は最初から順にご覧ください。

5月12日開催の文化審議会第8期文化政策部会第5回で報告された「舞台芸術ワーキンググループ意見のまとめ」に基づき、審議経過報告の文案作成が進み、6月7日開催の文化審議会第51回総会で文化政策部会「審議経過報告」が行なわれた。この間の修正内容が下記でわかる。

文化庁サイト/文化審議会文化政策部会
「文化政策部会『審議経過報告』骨子(案)からの主な修正箇所(対比表)」(5/19案→5/24案)
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/seisaku/08_07/pdf/shiryo_5.pdf
「文化政策部会『審議経過報告』(素案)からの主な修正箇所(対比表)」(5/24案→6/2案)
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/seisaku/08_08/pdf/shiryo_4.pdf
「審議経過報告」(6/7)
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/shingikeikahoukoku22.html

議論の過程で出た各委員の意見が別途まとめられている。劇場法(仮称)を巡る議論で争点になる次の点についても言及されている。

  • あまり「国家」を強調すると「また中央集権か」という印象を与えかねない。文化は多様・多元的なものなので、地方・地域に配慮した記述を加えられないか。
  • 予算が拡充されれば良いが、仮に予算がカットされる場合にいかに生き残るべきか、国が示すべき。
  • 芸術家にとっては、支援してもらうばかりでなく、置かれた状況にいかに向き合うかという視点も必要である。

文化庁サイト/文化審議会文化政策部会「第7回文化政策部会における主な御意見(概要)」
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/seisaku/08_08/pdf/shiryo_3.pdf

「審議経過報告」では文化省創設を初めて明記した。朝日新聞東京本社版6月5日付朝刊によると、報告は政府が11年春に閣議決定する「文化芸術の振興に関する基本的な方針」第3次基本方針に反映されるが、文化政策を重視していた鳩山首相の辞任は痛手とした。記事では、鳩山首相の意向を受けた平田オリザ内閣官房参与の発言などに押され、報告の重点施策は「言い切りに近い強い表現」となったが、省庁再編が必要となる文化省創設、地方自治との兼ね合いがある劇場法(仮称)など、「実現は簡単ではない」としている。また、芸団協がビジョンをまとめた舞台芸術分野に比べ、他分野は具体策が乏しいとした。

asahi.com「文化『省』 格上げ提言 『首相交代、痛手』の声も」
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201006050182.html

「審議経過報告」に対し、文化庁はパブリックコメントを6月8日から7月9日締切で募集したが、7月7日に「より広く国民の皆様から御意見を頂くため」として、締切を7月23日に延長。文部科学省が09年11月16日~12月15日に募集した内閣府行政刷新会議「事業仕分け」に対するパブリックコメントでは、文化分野に11万件以上が集まったが、それに比べて少ないのではないかと思われる。

文化政策関連では、5月21日に財団法人地域創造が「事業仕分け」第2弾の対象となった。「地域の文化・芸術活動支援事業」「公共ホール活性化事業」が見直しとなり、財源の宝くじも問題が解決されるまで販売中止を求めたが、枝野幸男行政刷新担当相(当時)が5月25日に撤回。今後の助成制度全体に影響を与える可能性がある。

地域創造の創設に関わり、芸術環境部長を務めた小暮宣雄氏(京都橘大学教授)は、この「事業仕分け」を契機に大胆な改革と地域文化集権を求めている。地域文化集権とは、「文化政策を地域主導(地域イニシアティブ)で。中央政府から文化政策権限を地方政府及び非営利民間へ移管すべき」という意味。

Togetter – まとめ「@kogurenob #kogureCBS 小暮宣雄さんの『地域文化集権』論と国家・巨大組織・個人の解体・脱構築の諸々の話題についてのツイートまとめ 」
http://togetter.com/li/23326

文化政策の諸問題を調査研究する文化芸術研究会は、6月19日にシンポジウム「劇場法を巡って」を開催。パネラーを務めた坂手洋二氏は個人ブログで、戦前の演劇法(画策されたが未制定、映画法は1939年施行・45年廃止)と同一視するのではなく、「演劇・劇場の基盤整備について考えることは必要だし、支配・管理を恐れるなら、的確に反駁してゆくしかない」としている。

Blog of SAKATE「私が観ているとサッカーは負けるらしい」
http://blog.goo.ne.jp:80/sakate2008/e/3d992607feadc24cc971e260c5fb8c93

このシンポジウムに参加した魚沼市小出郷文化会館(新潟県魚沼市)の桜井俊幸館長は個人ブログで、「劇場法については総論賛成、各論反対者が多かった。地方の公立ホールの現状を踏まえてじっくり時間をかけて検討して欲しい!」としている。

七色館長「文化芸術研究会」
http://nanairokancho.sblo.jp/article/39048837.html

6月22日発売の第三次『シアターアーツ』43号(発行/国際演劇評論家日本センター、発売/晩成書房)は、「[論考]劇場と制度」として柾木博行氏(ステージウェブ主宰)「劇場法による創作環境の変化」、米屋尚子氏(芸団協芸能文化振興部次長)「演劇への支援をめぐって──芸術創造の現場を豊かにするには」を掲載。前者は平田氏、流山児祥氏に劇場法(仮称)、佐藤信氏、花光潤子氏(元・藤沢市湖南台市民シアター、現・魁文舎)、生田萬氏に芸術監督の黎明期や現状を聞いている。後者は新たな支援制度の枠組みについて俯瞰。

平田氏は「プロデューサーが足りない」として、「東京でくすぶっている若い制作者がどんどん地方に行くきっかけになる。だから劇場法の最大の効果は、JターンやIターンが増えることだと思っています」と語っている。これに対し流山児氏は、考え自体は理解出来るとしながらも、「(助成金を増やせと言うほど)演劇は社会に必要とされているのか疑問がある」「劇場法が役人の天下りをなくしたとしても、一部の演劇人が地方の劇場を支配する“天上がり”が起きるんじゃないかという問題もある」と懸念している。

芸団協が4月30日~5月1日に開催したラウンドテーブル「劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!」について、「しのぶの演劇レビュー」がまとめページを6月28日完成。全体の議事録となっている。

しのぶの演劇レビュー/【レポート】芸団協2010「ラウンドテーブル『劇場法(仮称)で何が変えられるのか?!』【まとめ】」04/30-05/01芸能花伝舎1-1
http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2010/0613225550.html

これについて、Twitterで6月28日~7月2日にかけて議論が起きている。

Togetter – まとめ
「劇場法(仮称)についてのqueequegさん、masanori_okunoさん、caminさんの議論」
http://togetter.com/li/32936

上記と一部重複するが、5月下旬から劇場法(仮称)関連のツイートが継続的にまとめられている。

Togetter – まとめ「@ChiikiBunka #kogureCBS 劇場法についてのツイートまとめ」
http://togetter.com/li/25000

演劇人の反応が少ないことは、演劇人自身も感じているようだ。田辺素子氏(劇団銅鑼、本拠地・東京都板橋区)は6月20日の個人ブログで、パブリックコメントで意見しないと伝わらないとし、現在の助成制度(赤字補填)を変えること、子供たちが舞台芸術に親しむ機会を増やすことを切望している。

田辺素子のブログ「文化庁意見公募中。」
http://blog.canpan.info/motot77/archive/637

谷賢一氏(DULL-COLORED POP主宰、タイニイアリスプロデューサー)は7月3日の個人ブログで、「声をかけられなければ仕事がない」立場として政治的な発言は慎重にならざるを得ないが、「でも『知っていること』は大事だろう」と綴っている。

PLAYNOTE「最近考えていることなど」
http://www.playnote.net/archives/001592.html

芸団協は特設サイト「もっと文化を!」を7月1日開設。4月16日に第一次案を発表した「実演芸術の将来ビジョン2010」(2010年6月版)を実現するため、国家予算に占める文化予算の割合0.11%を0.5%にするキャンペーン開始。請願署名を求めている。

もっと文化を!
http://motto-bunka.com/

高萩宏氏は、文化政策研究者間で劇場法(仮称)に対する「議論が深まる様子がない」として、文化政策提言ネットワーク(CPネット)公開メーリングリストへ7月6日「高萩メモ」最新版を投稿。劇場法(仮称)に出されている疑問4点に回答する形で考えを述べている。

  1. 国家統制につながる危険がある。
    ⇒法律の具体的文言案に対して議論すべき。
  2. 地方分権への逆行ではないか。
    ⇒自治体の裁量に任せられる。大学への競争的資金(科学研究費)と同様に考えられないか。
  3. 関係者の盛り上がりに欠ける。
    ⇒公共ホールにいる舞台芸術関係者の数が少なすぎること自体が問題。
  4. 民間劇場が置き去りにされる。
    ⇒公共の役割が決まれば民間劇場の生きる道も見えてくる。優遇税制は別途考えていくしかない。

文化政策提言ネットワーク(CPネット)公開メーリングリスト
7月6日付「劇場法(仮称)に関して」(高萩宏氏)
http://groups.yahoo.co.jp/group/cpnet-info/message/3030

TAGTAS(Trans-Avant-Garde Theater Association)は、「劇場法に関する問題提起声明」を7月7日発表。現時点で下記2点の問題を提起するとしている。

  1. 各公共劇場に配属される芸術監督選抜の審査委員は誰が決定するのか。
  2. そもそも芸術を一様に判断することができるのか。

注目すべき指摘として、芸術への助成が芸術家の雇用またはその賃金の保障制度を目指すものなら、社会的なセーフティネット構築による貧困・格差政策、基礎所得保障(ベーシックインカム)制度の実験こそ優先すべきであると主張している。

TAGTASサイト「劇場法に関する問題提起声明」
http://d.hatena.ne.jp/tagtas/20100707/1278505217

平田氏は管政権でも内閣官房参与留任。全国で新たな文化政策について説明を続けている。6月23日に京都市(主催/京都国際舞台芸術祭2010実行委員会)、7月5日に札幌市(主催/北海道文化財団)、7月7日と15日に名古屋市(主催/愛知芸術文化センター)、7月11日に兵庫県豊岡市(主催/豊岡市ほか)、7月20日に沖縄市(キジムナーフェスタ2010=2010国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ、主催/沖縄市ほか)、7月24日に鳥取市(第17回BeSeTo演劇祭鳥取、主催/鳥の劇場ほか)、7月28日に岐阜県可児市(主催/可児市文化芸術振興財団)、8月11日に岡山市(主催/NPO法人アートファーム)。

平田氏は札幌で、伝統芸能以外の国立劇場が東京にしかないことを指摘。「国民の税金を使いながら、享受できるのは首都圏の住民だけなのはおかしい。札幌や福岡など全国に五つほどの国立劇場を設置し、健全な競争状態をつくるべきではないか」と語った。

札幌の新劇場については、既存公共ホールが多機能ホールだとして、北海道文化財団の磯田憲一理事長が呼び掛け人となった「北海道に国立劇場の創設を願う有志会議」が創造拠点の新設を求めている。6月23日に第1回勉強会を開催し、大和滋氏(芸団協芸能文化振興部長)が劇場法(仮称)の必要性を説明した。

Doshin web(北海道新聞)
「『国立劇場 札幌にも』 平田オリザさんが提言」
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/culture/240207.html
「道内に国立劇場を 有志会議が勉強会」
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/culture/238189.html

こうした場は関係者中心になりがちで、観客への説明機会が少ないのが現状だ。札幌では観客の方が聴講し、個人ブログで率直な感想を述べている。地元でアート支援をする建設関連企業の経営者で、演劇にも理解のある方だが、「政府がしなければならない仕事全般におけるバランスは、その道しか歩んでこなかったプロに任せるには危険」だとし、当日の受付スタッフにも問題があったとしている。

別冊 社内報「【講演】平田オリザ(アート・マネージメント・ゼミ「劇場 / 新時代への展望」)
http://syachou.exblog.jp/14721762/

劇場法(仮称)制定をにらんだ経過措置として注目されている、平成22年度文化庁「優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業」採択結果が7月5日発表。平成22年度文化庁芸術拠点形成事業採択結果も発表。文部科学省は09年12月25日発表の「事業仕分け結果・国民から寄せられた意見と平成22年度予算(案)における対応状況・詳細」で、「地域の芸術拠点形成事業を2年で廃止する」としている。

文化庁サイト
「平成22年度『優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業』採択について」
http://www.bunka.go.jp/geijutsu_bunka/chiikibunka/shinkou/sisaku/pdf/geijutsu_ongaku_saitaku.pdf
「平成22年度芸術拠点形成事業採択一覧」
http://www.bunka.go.jp/geijutsu_bunka/chiikibunka/shinkou/sisaku/pdf/22_geijutsu_kyoten.pdf

朝日新聞東京本社版7月8日付夕刊によると、政府は次期文化庁長官に駐デンマーク大使の近藤誠一氏を起用する方針。7月末発令。初の外務省出身者で文化交流部長などを歴任。芸術文化振興基金と国際交流基金の統合が進むか。

asahi.com「文化庁長官、駐デンマーク大使の近藤氏起用へ」
http://www.asahi.com/politics/update/0708/TKY201007080243.html

第17回BeSeTo演劇祭関連イベント「PLUS STREAM」では、7月15日に「劇場法(仮)オープンディスカッション」をネット中継する。日本劇団協議会は、意見交換会「新しい文化庁支援制度の検討」を7月16日に開催。

関西で劇場法(仮称)に関する関心がしだいに高まる。京都の演劇フリーペーパー『とまる。』2010夏号は劇場法(仮称)の特集。杉山準氏(NPO法人劇研)にインタビュー。7月15日配布開始。大阪現代舞台芸術協会(DIVE)は、劇場の在り方と芸術監督の役割について学ぶ講座を7月24日~10月30日開催。

(この項続く)

次の記事 劇場法(仮称)に関する議論まとめ(2011年9月25日現在)
前の記事 劇場法(仮称)に関する議論まとめ(2010年5月16日現在)