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fringeでは「ギフトチケット」の実現可能性と制度設計の参考とするため、「初めて舞台芸術を観る人に贈る『ギフトチケット』に関するアンケート」を実施しました。

調査対象:舞台芸術に関心のある方
調査期間:2020年11月1日~12月15日
調査方法:Googleフォーム
周知方法:サイト及びTwitterでの周知、チラシ宅配サービス「おちらしさん」への周知チラシ封入
有効回答:386件
回答者属性:
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アンケート結果の概要は下記のとおりです。回答の詳細については添付PDFをご覧ください。


日時指定をあとからするチケットがあれば、
自分自身・プレゼントともに使ってみたいが90%以上

舞台芸術で「購入する枚数だけ先に確保し、日時指定は本番数日前まで可能なチケット」があったとしたら、「使ってみたい」「場合によっては使ってみたい」と回答した方の合計は、「自分自身」「趣味・嗜好を理解している家族・友人へのプレゼント」とも90%以上でした。

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その条件として、座席が良席であることを指摘する方が目立ちました。あとから日時指定するので、売れ残り席だろうと思われている回答も散見されました。「ギフトチケット」は招待券と同じスキームなので、良席を前売開始前から全ステージ確保した上で販売することを前提としています。これが周知されれば、「ギフトチケット」の価値は増すものと思われます。代表的な自由回答を一つ挙げておきます。

初めて観劇する人が集中できる座席を選択可能な場合。オペラグラスを使用しないと見えない席や、前列の人で舞台が見えない席、マナーを守れない舞台関係者の近くの席などでは、成功体験からは遠ざかってしまうと思うので。


日時指定の締切は観劇日の7日前・3日前がほぼ同数、
第1希望が取れなくても過半数が許容

制度設計では、転売防止対策、日時指定の締切、第1希望が取れなかった場合の許容度、価格設定、特典などを詳しく質問しました。転売防止対策は「券面には購入者の氏名を印字し、使用者が異なる場合は券面に氏名を手書き」が最多だった一方、特殊な券種なので当日受付でのチケット引き換えにすれば抑止効果になるとの意見も目立ちました。日時指定の締切は「実際に観劇する日の7日前まで」「実際に観劇する日の3日前まで」が並びました。第1希望が取れなかった場合、第2希望を求められても「状況によっては仕方がない」と許容に傾く回答が過半数を超えました。現在の招待状の運用に近く、公演現場でのオペレーションは可能であると考えられます。

価格については、前述の「あとから日時指定しても良席が確保されている」が周知されていないこともあり、なにも特典が付かない場合は「前売料金の30%増を超えてよい」層は少数でしたが、希望する特典が付いた場合は、人気公演では過半数を超えました。

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具体的な特典は次のとおりです(複数選択可)。「購入後キャンセル料を払うことでキャンセル可能」が2位に入っていることが注目されます。プレゼントしたあとに使われない場合を考慮し、このような特典を希望されていると考えられます。

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プレゼントする側への特典は、あったほうがよいと「思う」「思わない」が並びました。具体的な特典は「限定グッズ」が最多でしたが、その他回答で「プレゼントした人との連席が取れる」「一緒に来れば割引」など、「贈る」だけでなく「誘う」を意識した回答が散見されました。


舞台芸術を観たことがない人に対する観点での
記事や情報が不足していると思うは70%

舞台芸術を観たことがない人にとって、「その作品がオススメかどうか」「最初の1本にふさわしいかどうか」の観点での記事や情報が不足しているかを質問したところ、不足していると「思う」が70.2%でした。舞台芸術関係者と観客の方で有意な差はありませんでした。

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舞台芸術を観たことがない人を劇場へ誘うために必要なことを自由回答で質問したところ、真摯な長文の回答が多数寄せられました。非常に読み応えのある内容で、回答いただいた方々に感謝いたします。代表的なものを挙げますが、PDFに詳細を掲載していますので、ぜひご覧ください。ここでも「贈る」だけでなく「誘う」ことの重要性を指摘する意見が目立ちました。「ギフトチケット」を導入する場合は、具体的な利用シーンを説明し、このチケットの味方になっていただくことが大切ではないかと感じます。

(舞台芸術関係者より)

舞台鑑賞は堅苦しいものではなくエンターテイメントとして楽しめるものだと認識してもらうこと。生身の人間が同じ空間でパフォーマンスしていることの特別性。チケット代は確かに安価ではないが、それに見合う体験を受け取れる場であると体感してもらうこと。小劇場の場合は、劇場が内輪で盛り上がる雰囲気だけではなく知り合いがいないお客さんでも行きやすい雰囲気があること。

プレゼントできる事も大事ですが、初めて行くのに一人で行くと言うのは本来とても心細い事だと思います。なので、チケットの安い/高いもありますが、作品に関するティーチインがあったり、アフターでの解説があったりする事が大事だと思いますし、プレゼントする側と一緒に観劇して気軽に意見を言い合える事がとても大事だと思います。そう言う意味ではTwitterなどではなくて、いろんな人の感想が気軽に交換しあえるウェブ空間があるともっといいのかも知れません(既にあるけど活性化されていないと言う問題でもあるのかも知れませんが)。

舞台を観たことがないひとを誘うには、まずは自分が「舞台愛」を語ったうえで、当日もエスコートするのが一番だと思う。例えば、宝塚歌劇団に興味がなかった私が宝塚の舞台を観に行こうと思ったのは、友人の「愛ある宝塚プレゼン」がきっかけで、当日もしっかり友人にエスコートしてもらい、楽しめた。「ギフトチケット」は、初めて舞台芸術を観るひとに向けてのサービスというより、舞台芸術ファンの友人や家族に喜んでもらえそうなサービスのように思う。「ぜひ観てほしから、ギフトチケット贈るよ。自分で予約してひとりでいってね」は、観劇初体験にはちょっとハードルが高いように感じる。

(観客の方より)

チケットの取りやすさ(1週間前までは目的の日時の席が取れるようにしてほしい、3ヶ月や半年以上先の観劇のためにチケット代だけで5000円以上払うのが当たり前になっている現状のシステムは負担が大きすぎる)、価格の安さ(演劇は上演地域が東京に偏るため遠方からの観客の割合も大きい。カンパニーの利益とは関わりのないことを承知しているが地方の人間は交通費・場合によっては宿泊費と時間を捻出していることを考慮してほしい)

ローカルルール、暗黙の了解、常連の台頭等、初めての人が疎外感を感じたり、気後れをしてしまったりするような事がない観劇環境が必要。全ての観客を平等に扱い、全ての観客が観劇マナーや観劇の常識等を何も知らないという前提において高いホスピタリティをもって接客することが大切。それができてない公演は多い、特に小劇場。

舞台芸術のイメージを変える、あまり現実的な言い方じゃないかもしれませんが舞台芸術はみんなのものだという感覚だと思っています。お金持ちじゃなくても、学生でも、立派な洋服を持ってなくてもこの作品が気になるなと思ったら博物館や美術館を訪れるのと同じような感覚でアクセスできれば良いと思っています。現実的なものとしては、①今上演しているものが全てまとめてあるサイト(どこの劇場なのか、どんな作品か、チケットはまだ入手することはできるのかなど一目でわかるようになっていると簡単かなと思います。ミュージカル・演劇・歌舞伎など全てまとめてあって日付を押すとその日に見ることのできるものが時間順で並んでいる。映画館のサイトのような感じです)②初日あけてもチケットが取れる状況(自分が見て良いな、これはあの子好きだろうな、誰かに勧めたいなと思ってもチケットがないとどうしようもならないからです)

結局のところ、「やったことがないことに足を踏み出させる」ための強い動機付けがないと難しい。多くの場合それは好きな俳優やタレントが出ている、ということが多く、作品そのものの力で引っ張るのは相当困難だということを実感している。作品そのものの力で新規客を誘うには新作はハードルが高すぎ、ある程度名の知れたレパートリー作品、再演作品にならざるを得ない。小劇場においても再演に足る作品は数々あると思うが、それらをできるだけ長期のスパンで上演し、かつ再演の機会を増やすことを考えてほしい。

(舞台芸術を観たことがない、またはほとんど観ない方より)

映画や海外の演劇のように希望する座席を選んで購入できること、座席のエリアにより料金設定を変えること(私の場合これがなくて値段の割に不本意な席に割り当てられることに不公平感を感じるためよほどでない限り観劇に行かないので)、当日券(立ち見の安い券含む)の枠をあらかじめ確保しておくこと