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芸術団体が助成金を探す方法をまとめました。
※任意団体のカンパニーをターゲットにしていますが、民間劇場や中間支援組織も参考になるでしょう。平成28年度から、日本芸術文化振興会「トップレベルの舞台芸術創造事業」が法人格必須となりました。一定規模の公的助成を受ける要件として、法人化による管理運営の適正化は必要だとfringeも考えます。公的助成を希望する芸術団体は法人化を進めることを強く推奨します。

  1. 他カンパニーのチラシやサイトをチェックする

    他カンパニーのチラシやサイトをチェックし、助成に関するクレジットやロゴ表示がないかを常に確認しましょう。新たな助成制度の気づきになるだけでなく、どのカンパニーがどんな助成を得ているかを把握することは、自分のカンパニーが申請する際の基準になります。地域在住で助成を得ている公演自体が周囲にない場合は、ネットで先端的なカンパニーのサイトやチラシ画像を調べましょう。

  2. 日本芸術文化振興会「芸術文化振興基金」「トップレベルの舞台芸術創造事業」に申請する(毎年11月に翌年度実施分を申請)
    ※平成28年度予算成立後、「トップレベルの舞台芸術創造事業」は「舞台芸術創造活動活性化事業」に移行予定

    「芸術文化振興基金」は、政府出資金と民間寄付金を独立行政法人日本芸術文化振興会が運用する助成金です。カンパニーが応募出来る区分は3種類あり、いずれも任意団体が申請可能です。

    • 地域の文化振興等の活動「アマチュア等の文化団体活動等」   ……都道府県・政令指定都市の文化行政部局経由で申請
    • 舞台芸術等の創造普及活動「現代舞台芸術創造普及活動(演劇)」……日本芸術文化振興会へ直接申請
    • 舞台芸術等の創造普及活動「多分野共同等芸術創造活動」    ……日本芸術文化振興会へ直接申請

    「アマチュア等の文化団体活動等」は、旅公演の旅費以外、応募団体の構成員に対する支出は助成対象経費になりません。企画制作料も一切認められず、外部のスタッフ・キャストを起用した場合であっても、ゲネプロ以外の稽古料は認められません。純粋なアマチュア活動のための助成金です。まずは「アマチュア等の文化団体活動等」に応募するカンパニーもあると思いますが、演劇活動で対価を求めるのなら、最初から「現代舞台芸術創造普及活動(演劇)」に応募すべきです。

    「トップレベルの舞台芸術創造事業」は、文化庁の文化芸術振興費補助金を使った日本芸術文化振興会の助成金です。このため、翌年度の国の予算編成に左右されます。下記の2種類がありますが、平成28年度からどちらも法人格を有する団体しか申請出来なくなりました。

    ※平成28年度予算成立後、「トップレベルの舞台芸術創造事業」は「舞台芸術創造活動活性化事業」に移行予定です。文化庁概算要求を見ると、年間活動支援型へのシフトが発表されているため、最初から公演単位支援型に絞った申請は競争率が高くなることが予想されます。年間活動支援型に申請したが、結果的に1作品しか採択されなかったため公演単位支援型になった、という流れになるのではないでしょうか。

    • 公演単位支援型……1作品ごとに支援(公演助成)
    • 年間活動支援型……年間で複数の作品を一括支援(団体助成)

    「芸術文化振興基金」と「トップレベルの舞台芸術創造事業」の違いですが、前者は公演費用の赤字を補填するもので、申請出来る上限金額も助成対象経費の1/2以内です。後者は公演以前の芸術創造活動に必要な費用への助成で、公演が赤字かどうかは無関係です(黒字になった場合でも返金不要)。その代わり、助成対象経費は公演前日までに発生したものに限られます。

    芸術文化振興基金
    「現代舞台芸術創造普及活動(演劇)」
    「トップレベルの舞台芸術創造事業」(演劇)
    劇場費 すべて対象 仕込み・リハーサル日は対象、公演日は対象外
    出演料 すべて対象 稽古は対象、本番は対象外、
    スタッフ人件費 すべて対象 プラン料や仕込みは対象、オペレーション料は対象外

    「トップレベルの舞台芸術創造事業」が赤字補填でない点は画期的ですが、長期間の旅公演を行なう場合などは、必ずしも「芸術文化振興基金」より助成金額が多いとは限りません。どちらに申請すべきかは作品ごとに綿密なシミュレーションが必要です。複数の作品を「芸術文化振興基金」「トップレベルの舞台芸術創造事業(公演単位支援型)」に分けて申請することは可能です。同一作品の併願は出来ません。

    (参考)2015年度実績
    応募 採択 採択率
    地域の文化振興等の活動「アマチュア等の文化団体活動等」 190件 110件 58%
    舞台芸術等の創造普及活動「現代舞台芸術創造普及活動(演劇)」 357件 152件 43%
    舞台芸術等の創造普及活動「多分野共同等芸術創造活動」 41件 16件 39%
    「トップレベルの舞台芸術創造事業」(演劇) 187件 105件
    年間活動支援型25件
    公演単位支援型80件
    56%
    (参考)2014年度実績
    応募 採択 採択率
    地域の文化振興等の活動「アマチュア等の文化団体活動等」 202件 116件 58%
    舞台芸術等の創造普及活動「現代舞台芸術創造普及活動(演劇)」 372件 158件 42%
    舞台芸術等の創造普及活動「多分野共同等芸術創造活動」 56件 17件 30%
    「トップレベルの舞台芸術創造事業」(演劇) 191件 116件
    年間活動支援型26件
    公演単位支援型90件
    61%
    日本芸術文化振興会「芸術文化振興基金」「トップレベルの舞台芸術創造事業」の募集案内トップページは下記です。
    説明動画やどの助成金を選んだらよいかのガイドもあります。
    日本芸術文化振興会ホームページ/芸術文化振興基金「助成対象活動について」
    平成28年度募集案内の特設ページは下記です。
    日本芸術文化振興会ホームページ「平成28年度の助成金対象活動の募集が始まります。」

  3. 文化庁「劇場・音楽堂等活性化事業」の「劇場・音楽堂等間ネットワーク構築支援事業」に申請する(毎年12月に翌年度実施分を申請)

    「劇場・音楽堂等活性化事業」は、文化庁の文化芸術振興費補助金を使った文化庁直轄の助成金です。このため、翌年度の国の予算編成に左右されます。このうち「劇場・音楽堂等間ネットワーク構築支援事業」は、巡演にかかる旅費・運搬費を補助するもので、劇場側またはカンパニーが申請出来ます。任意団体も申請可能です。複数都道府県の劇場で上演することが条件ですが、東京偏重の鑑賞機会を是正することが目的なので、東京都内の公演は対象外となります。

    日本芸術文化振興会「芸術文化振興基金」「トップレベルの舞台芸術創造事業」と重複して補助を受けることは出来ませんが、全国を巡演する大規模ツアーなどは第三の選択肢になる場合があります。

    (参考)2015年度実績
    応募 採択 採択率
    劇場・音楽堂等活性化事業「劇場・音楽堂等間ネットワーク構築支援事業」 83件 55件 66%
    (参考)2014年度実績
    応募 採択 採択率
    劇場・音楽堂等活性化事業「劇場・音楽堂等間ネットワーク構築支援事業」 72件 56件 78%
    文化庁「劇場・音楽堂等活性化事業ホームページ」は下記です。
    文化庁「劇場・音楽堂等活性化事業ホームページ」

  4. セゾン文化財団「現代演劇・舞踊対象公募プログラム」に申請する(毎年9月~10月に翌年度実施分を申請)

    公益財団法人セゾン文化財団による現代演劇・舞踊領域への助成です。若手の劇作家、演出家、振付家を「セゾン・フェロー」に選定して年間の活動全般を直接支援するもので、作品助成ではありません。「サバティカル(海外での休暇・充電)」も用意されています。稽古場施設「森下スタジオ」(東京・森下)を有し、資金提供以外にスタジオ貸与なども行なっています。海外からのレジデンスプログラム、渡航費を支援する「フライト・グラント」を除くと、下記の5プログラムがあります。

    • 芸術家への直接支援「セゾン・フェロー」
      ……ジュニア・フェローは35歳以下で3作品以上の公演実績がある劇作家、演出家、振付家
    • 芸術家への直接支援「サバティカル(海外での休暇・充電)」
      ……5年以上の活動歴がある劇作家、演出家、振付家
    • 創造環境イノベーション「課題解決支援」
      ……現代演劇・舞踊界が現在抱えている問題点を明らかにし、その創造的解決を目指した事業
    • 創造環境イノベーション「スタートアップ支援」
      ……現代演劇・舞踊界に変化をもたらすことが期待出来る新規事業を立ち上げから支援
    • 国際プロジェクト支援
      ……国際交流事業全般が対象(日本・海外の事業パートナーが決定しており、国際交流事業の実績があること)

    ジュニア・フェローは、小劇場演劇やコンテンポラリーダンスの気鋭がブレイク直前に選ばれることが多いようです。狭き門ですが、画期的な助成制度で小劇場演劇を支えてきた存在であり、申請して面接を受けること自体に意義があると考える演劇人も多いようです。決してアーティスティック系の人材ばかりが選ばれるわけではなく、エンタテインメント系の人材も抜擢されていますので、物怖じせずに挑戦してください。

    ※2016年度より、パートナーシップ・プログラム「創造環境整備」「国際プロジェクト支援」がそれぞれ独立し、「創造環境整備」は創造環境イノベーション「課題解決支援」「スタートアップ支援」に分かれました。「課題解決支援」は年度ごとにテーマが設定されます。

    (創造環境イノベーション「課題解決支援」テーマ)

    • 2016年度「舞台芸術の観客拡大策」

    「創造環境整備」は採択率が高く、制作者がイベントを開催するのに最適でした。小劇場演劇の制作ワークショップなどを企画する場合、公演を伴わない純粋な講座が助成対象となるのは、このセゾン文化財団を含めてごくわずかです。JCDN(NPO法人Japan Contemporary Dance Network)、ON-PAM(舞台芸術制作者オープンネットワーク)も、「創造環境整備」による助成が創生期を支えました。小劇場演劇・コンテンポラリーダンスの制作環境を育ててきたのはセゾン文化財団と言って過言ではありません。

    (参考)2015年度実績
    応募 採択 採択率
    芸術家への直接支援「ジュニア・フェロー」 79件 13件 16%
    芸術家への直接支援「シニア・フェロー」 22件 9件 41%
    芸術家への直接支援「サバティカル(海外での休暇・充電)」 2件 0件 0%
    パートナーシップ・プログラム「創造環境整備」 27件 11件 41%
    パートナーシップ・プログラム「国際プロジェクト支援」 35件 12件 34%
    (参考)2014年度実績
    応募 採択 採択率
    芸術家への直接支援「ジュニア・フェロー」 78件 11件 14%
    芸術家への直接支援「シニア・フェロー」 24件 8件 33%
    芸術家への直接支援「サバティカル(海外での休暇・充電)」 0件 - -
    パートナーシップ・プログラム「創造環境整備」 19件 13件 68%
    パートナーシップ・プログラム「国際プロジェクト支援」 23件 15件 65%
    セゾン文化財団「現代演劇・舞踊対象公募プログラム」の募集案内トップページは下記です。
    助成申請書の請求締切と申請書類の提出締切の2回締切があるので注意してください。
    セゾン文化財団ホームページ「助成申請」

  5. 文化庁「戦略的芸術文化創造推進事業」に申請する(毎年11月に翌年度実施分を申請)

    助成金ではなく、文化庁が業務委託する事業があります。申請団体は原則として法人格を持つことが求められますが、任意団体でも申請可能な場合があります。例えば、「戦略的芸術文化創造推進事業」は任意団体でも申請可能で、公演の少ない地域での追加公演や離島での公演、地域と東京の芸術団体による共同制作などが対象です。

    (参考)2015年度実績
    応募 採択 採択率
    「戦略的芸術文化創造推進事業」 73件 27件 37%
    (参考)2014年度実績
    応募 採択 採択率
    「戦略的芸術文化創造推進事業」 151件 28件 19%
    文化庁「戦略的芸術文化創造推進事業」の募集案内トップページは下記です。
    文化庁ホームページ「戦略的芸術文化創造推進事業」

    これ以外にも、文化庁の事業が新設される場合があります。文化庁ホームページを常時ウォッチする癖をつけましょう。

  6. 民間の助成制度を検索する

    民間の助成制度を探すための代表的データベースです。分野やキーワードを絞れば、演劇が対象の助成金も多数見つかります。

    継続的に演劇への助成を行なっている民間の助成団体としては、下記があります。

    演劇に特化した公益信託基金としては、下記があります。

(この項続く)

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