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新聞各紙の報道によると、7月19日に記録的な集中豪雨(午前2時~3時に79.5ミリ)に見舞われた福岡県飯塚市では中心部が胸のあたりまで浸水。江戸時代の歌舞伎様式を伝える芝居小屋、嘉穂劇場も高さ約1メートルの舞台や花道まで水に浸かり、客席桝席は固定されていないため浮き上がった。

西日本新聞では同劇場・伊藤英昭氏の「午前5時半ごろ目が覚め、急いで事務所1階のソファなどを机に上げたが、30分もしないうちに水が押し寄せた」との声を伝えている。昭和6年開業の同劇場で初めての体験だという。

同劇場では9月13日から第10回全国芝居小屋会議を開催し、9月15日にはその記念公演としてギンギラ太陽’s(本拠地・福岡市)の『ひよ子侍 隠密和菓子旅』特別公演が上演されるはずだったが(2003/3/30付ケーススタディ既報)、この被害により年内の全公演が中止となった。毎日新聞は「舞台や客席が使えず、このままでは廃業するしかない」とのコメントも伝えている。

Yahoo!ニュース(西日本新聞)「JR博多駅また冠水 記録的豪雨 交通網を寸断」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030719-00000073-nnp-kyu

Yahoo!ニュース(毎日新聞)「<豪雨>嘉穂劇場が水害で壊滅的打撃 廃業の危機」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030720-00002047-mai-soci

ギンギラ太陽’sでは、今回公演は「嘉穂劇場だけでの公演」との位置づけだったので、公演そのものを中止することを発表。チケット払い戻しについては、決まりしだいハガキとサイトで知らせていくという。

主宰の大塚ムネト氏は7月20日付の公開日記で、「急にぽっかり穴が空いてしまいボー然としている自分もいるが、『お客様が混乱しないように、早く状況を知らせなければ!』と、自分奮い立たせてあちこちに連絡して今後の打ち合わせをしている」と綴り、「公演中止もたまらないが、『嘉穂劇場が廃業かも』というのもスゴク心配だ。何としても復活してもらって『復活記念公演』として今回の作品を上演したい。何としても上演したい! 修復には数億円かかるとのことで、先は大変だろうけどギンギラで協力出来ることは何でも協力して、少しでも力になれたらと思っている」としている。

ギンギラ太陽’sオフィシャルホームページ
http://www4.osk.3web.ne.jp/~gingira/

過去の西日本新聞の連載を見ると、1979年の消防法改正で防火設備の設置が必要になったとき、県が嘉穂劇場への助成を決めていたという。このときは消防署が「少しずつ整えていけばいい」と柔軟な態度を示したため助成は受けなかったが、いまこそ行政が民間劇場に助成すべきときではないか。

The Nishinippon WEB「【連載】伊藤英子“一座”の物語」(2001年の設立70周年時に、嘉穂劇場のスタッフを紹介した連載)
http://www.nishinippon.co.jp/media/news/0102/kaho/kaho-ren.html

集中豪雨で劇場が浸水して公演中止になった例としては、98年9月の高知県立美術館ホールがある。美術館全体で被害総額は10億円を超えたという。この被害で高知公演中止となった南河内万歳一座(本拠地・大阪市)は、翌99年に公演を果たしている。嘉穂劇場の再起を祈りたい。

高知新聞ホームページ/検証’98高知豪雨「美術館水没 遊水池の不安現実に」
http://www.kochinews.co.jp/rensai99/gouken14.htm