作成者別アーカイブ: 荻野達也

払い戻しではなく次回公演への振り替えに出来ないか

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震災時の公演の可否について考えてきたが、今回のような大震災では、公演を続行しても「こんなときに観劇する気持ちになれない」「余震や停電が心配で外出したくない」という人が多数いる。公演が続行されると前売券の払い戻しはないため、こういう人にとっては「なぜ公演するのか」という心境だろう。このようなケースでは、他ステージへの振り替えで対応することが多いが、短期間では状況が変わらないかも知れない。結果的に「あのカンパニーは払い戻しをしたくないために公演した」と思われ、お互いしこりを残すことになる。残念なことだと思う。

どの業界でもそうだが、決済後の払い戻しは大きな痛手となる。演劇の場合、ほとんどのカンパニーが自転車操業で、ギリギリのキャッシュフローで演劇製作をしている。公演中止でも多額の支払いが待っている。そこで観客に払い戻しすると、プレイガイドへの手数料も上乗せされ、カンパニーの存続自体が危うくなる。

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専門誌が伝える演劇界と映画界の動き

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東日本大震災後の演劇界と映画界の動きを、『シアターガイド』6月号と『キネマ旬報』5月上旬号がそれぞれ特集した。

『キネマ旬報』の緊急特集「3月11日以降の映画界」は、第1部「映画界ではなにが起こったか」で映画館の施設被害、作品の公開延期や中止、各社の動きなどをまとめ、阪神・淡路大震災を体験した大森一樹監督の談話を掲載。印象的なコメントを発表した宮崎駿監督にも触れている。第2部「映画作家、ジャーナリストと考える原発、これからのエネルギー問題」は、『ミツバチの羽音と地球の回転』が公開中の鎌仲ひとみ氏が、本橋成一氏、上杉隆氏と突っ込んだ議論をする骨太の企画だ。

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自粛からはなにも生まれない

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東日本大震災では、被災地以外で自粛の風潮が広まった。今回は比較的早い段階で、被災地から「過度な自粛は経済を萎縮させ、復興を逆に妨げる」と訴えてくれ、一定の歯止めがかかったと思う。それでも早々と中止を決めた伝統行事やイベントなど、疑問を感じることが少なくない。

企業からの協賛金が集まらない、仮設トイレが出払っている、節電対策で電車が増発出来ないなど、やめる理由はいくらでもあるだろう。だが、本来なにもないところから生まれるのが祭りやイベントのはずだ。それを楽しみに人々は日常を営み、それを業にしている人もいる。本当に復興を願うのなら、やめる理由を数えるのではなく、規模を縮小してでもやれる方向を考えるのが、私たちがいますべきことだと思う。

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東京で上演し続けることの意味

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あの大地震があった翌朝、私がいちばん勇気づけられたのは、いつもどおり近所の豆腐屋が店を開き、美容院のスタッフが掃除をしていることだった。この時点で東京は直接的被害が少なかったが、東北の甚大な被害は報道を通じて刻々と伝わり、原発事故も不気味さを増していた。私自身も今後が見通せない漠然たる不安を抱えていた。そんな状況の下、昨日までと同じ風景が目の前にあるだけで癒される思いだった。失ってから初めてその価値に気づくものは少なくないが、普段は意識することのない近所の風景も、その一つだということを思い知らされた。

震災後の演劇公演については、その是非を巡って様々な意見があったが、東京という演劇が日常の風景になっている都市では、劇場施設や交通機関に問題がない限り、その上演を継続するのが当然だと私は思う。演劇の持つ力や公共性を訴えるつもりは全くない。むしろ震災直後の演劇は無力に近い。そんなことより、純粋に業として上演しているのだから、プロフェッショナルとして粛々と上演を続けるのが当然だと思うからだ。

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有川浩氏『シアター!2』はなぜロングランに消極的なのか

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制作者の視点から小劇場界の構造的欠陥を描いた有川浩氏『シアター!』(メディアワークス文庫)。その続編『シアター!2』(2011年1月発行)を読んだ。

1巻が主宰の兄から見た制作談義中心だったのに対し、今回は劇団員それぞれの群像劇となっている。カンパニーにエピソードは尽きないわけで、この辺はいくらでも転がっていく感じだが、売れるグッズとはなにか、カンパニーという組織の不思議さ、身内客だけで回っている客席など、小劇場界へのダメ出しは変わらず随所に散りばめられている。エンタテインメントを否定する中劇場の嫌味な支配人も登場し、これは誰をモデルにしたのだろうと勘ぐってしまう。1巻に続き、興味深い内容だ。

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2010年に最も注目したポストパフォーマンストーク

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時間堂『月並みなはなし』

小劇場のポストパフォーマンストークと言えば、演出家や周辺の演劇人によるものが圧倒的に多いが、時間堂が2010年3月に上演した『月並みなはなし』には驚かされた。JAXA(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)の後援で、同機構の月・惑星探査プログラムグループに所属する松本甲太郎氏をゲストに招いたのだ。

この公演は第7回杉並演劇祭参加作品として座・高円寺2を使用したもので、オープン間もない同劇場を無料で7日間借りられる絶好のチャンスだった。チラシには、その杉並演劇祭やイープラスのロゴと並んで、JAXAの青いロゴが印刷されている。月への移民者を選考する物語なので、確かにJAXAと関連はあるのだが、社会派ではないエンタテインメント作品である。よくJAXAにアプローチしたなというのが率直な感想だ。

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身内客・常連客との関係性

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「創り手と観衆との距離が縮まったが為に死んだ批評性」に関連して、身内客・常連客に対する私自身の考えを改めて紹介しておきたい。

まず、ナレッジ「身内客から一般客へ移行するためのロードマップ」で書いているように、身内客そのものは重要な存在である。カンパニーの初期はどうしても劇団員の手売りに頼らざるを得ないわけで、その意味で旗揚げを支えてくれた恩人と言っていい。重要なことは、観客が増えるに従って一般客が疎外感を抱かないよう、その存在感を薄くしていくことである。これは身内客をないがしろにするわけではなく、接遇のテクニックを使って、それぞれのサービスレベルをきちんと両立させるのだ。

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「創り手と観衆との距離が縮まったが為に死んだ批評性」

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Twitter上で1月22日~23日にかけ、新宿シアター・ミラクル支配人の星英一氏と、観客のK_OSANAI氏のあいだで、たいへん興味深い意見交換があった。私の書いた「いまの東京の小劇場界を盛り上がっていると感じている人は、大きな勘違いをしていると思う」にも通じるところが多いと感じるので、Togetterでまとめさせていただいた。

Togetter – 「演劇コミュニティを巡る星英一氏とK_OSANAI氏の意見交換」

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原点回帰

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fringeは、2011年2月22日に開設10周年を迎える。

この10年間、小劇場演劇に対する創造環境整備は格段に進んだと思う。各地の劇場やサービスオーガニゼーションにより、研修・上演・交流の企画が大幅に増え、助成制度や稽古場施設も年ごとに充実してきた。カンパニー自身の意識も高まり、地域から全国へ目を向け、新たな観客を求めて積極的な旅公演を行なうようになった。こうした動きに、fringeもオンライン/オフラインの双方で貢献出来たと考えている。

その一方で10年前、いや20年前からほとんど進化していないことがある。それは首都圏以外の公演日数の短さだ。京阪神を含む地域の劇場では、未だ週末のみの公演が圧倒的で、これが観劇人口を始めとした演劇マーケットを改善出来ない要因となっている。週末だけの公演が〈負のスパイラル〉を生み出しているのだ。それ以前に、演劇というライブの表現に携わる者として、短い公演しか出来ないことを悔しがらねばならないだろう。

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私が選ぶベストワン2010

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多忙で2年見送っていた日本劇団協議会機関誌『join』71号特集「私が選ぶベストワン2010」に参加させていただいた。3月31日発行予定。

当然ながら、私が知り得る限られた範囲からの選択である。全国には、まだまだ素晴らしい作品が埋もれているかも知れない。

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