慶応義塾大学准教授でドラマトゥルクの平田栄一朗氏が、11月25日に『ドラマトゥルク 舞台芸術を進化/深化させる者』(三元社)を上梓した。長島確氏にドラマトゥルクと名乗ることを勧めた、あの平田氏である。
ドイツ演劇研究を専門とする平田氏が、長期取材を踏まえてドイツ演劇界におけるドラマトゥルクの全体像をまとめたもので、こうした体系的な書は日本初ではないかと思われる。制作分野と密接な関わりのあるドラマトゥルク(ドラマターグ)への知見を得るため、制作者もぜひ目を通しておきたい。
本書に対しては、すでにブログで優れた書評が複数書かれている。下記2本は非常に参考になるので、紹介しておきたい。
雄鶏とナイフ「平田栄一朗『ドラマトゥルク』を読む」
ella and louis BLOG「ドラマトゥルク 舞台芸術を進化/深化させる者」
どちらも本書の意義を評価した上で、問題点をきちんと指摘しているのが好感が持てる。後者はオペラ関係者の方だが、
本当に必要なのは、劇場システムの違いを優劣で論じたり、システム全体が丸ごと導入されない現実に対して「ないものねだり」をしたりすることではなく、どうしてそのような違いが生まれているのかを分析し、両者のエッセンスをどう結びつけるか、ということを考えていくことだろう。
という意見には共感を覚える。海外のシステムがいかに優れているかを力説する識者は少なくないが、日本で創造環境整備を進めるためには、このようなアプローチが必要ではないかと私も考える。
ドラマトゥルク―舞台芸術を進化/深化させる者
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平田 栄一朗
三元社
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