fringeは、2011年2月22日に開設10周年を迎える。
この10年間、小劇場演劇に対する創造環境整備は格段に進んだと思う。各地の劇場やサービスオーガニゼーションにより、研修・上演・交流の企画が大幅に増え、助成制度や稽古場施設も年ごとに充実してきた。カンパニー自身の意識も高まり、地域から全国へ目を向け、新たな観客を求めて積極的な旅公演を行なうようになった。こうした動きに、fringeもオンライン/オフラインの双方で貢献出来たと考えている。
その一方で10年前、いや20年前からほとんど進化していないことがある。それは首都圏以外の公演日数の短さだ。京阪神を含む地域の劇場では、未だ週末のみの公演が圧倒的で、これが観劇人口を始めとした演劇マーケットを改善出来ない要因となっている。週末だけの公演が〈負のスパイラル〉を生み出しているのだ。それ以前に、演劇というライブの表現に携わる者として、短い公演しか出来ないことを悔しがらねばならないだろう。
11年目からのfringeは、この公演期間延長の問題に真剣に取り組みたい。劇場やサービスオーガニゼーションが、いくらワークショップやセミナーを開催しても、いくら優遇措置のある演劇祭や上演企画を実施しても、その後カンパニー自身が手打ちできちんと長期公演出来なければ、本当の活性化とは言えない。首都圏以外の公演の長期化――これこそが小劇場演劇が取り組むべき最大の課題であると私は考える。
こうした議論になると、ロングランと普段の仕事の両立が必ず問題になる。無謀なロングランは劇団員の収入を奪い、カンパニーを疲弊させるという意見も耳にする。だが、これまでの議論はそこで止まっているのではないか。どうすればロングランへの可能性が開けるのか、具体的な検討もせずに否定することは単なる思考停止だ。地域の実情を踏まえ、その地域ならではのロングラン形態を探る段階に来ているはずだ。それを一緒に考えようではないか。
劇場法(仮称)や助成制度の見直しにより、これから地域の演劇環境も激変するはずだ。趣味の発表会なら構わないが、自分たちの表現を世の中に問いたいと考えているのなら、この変化にどう立ち向かうかが集団の存続に関わるだろう。地元での長期公演は、カンパニーが生き残るための基本的な要素になってくると思う。
私が演劇制作を手伝うようになった原点は、自分が出会った魅力的な作品を、もっと多くの人に知ってもらいたいという思いからだ。制作者なら誰もが同じ思いだろう。ならば公演期間を長くし、平日夜の開演時間を遅くするのは必然である。観客に少しでも足を運びたいと思わせる上演環境――それが私の原点であり、fringeの全コンテンツもその思想に基づいている。その原点に立ち返り、さらなる充実に努めたい。
(参考)
週末だけの公演にクチコミはない
ケーススタディ「ロングラン定着で小劇場演劇から〈負の連鎖〉を断ち切れ!」
本拠地できちんと入れる
いまの東京の小劇場界を盛り上がっていると感じている人は、大きな勘違いをしていると思う