この記事は2016年9月に掲載されたものです。
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私がいま旗揚げカンパニーのチラシをつくるとしたらB5判でつくる。そのほうがA4判だらけのチラシ束で印象に残るから

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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ヨーロッパ企画『来てけつかるべき新世界』

舞台芸術のチラシは、1990年代前半まで映画と同じB5判が主流だった。A4判化が急激に進んだのは93年からで、A4判が多くなってくるとB5判が目立たなくなってしまい、現在ではA4判のほうが一般的になった。昔からのフォーマットを崩したくない一部カンパニーだけがB5判を続けている状態だ。

先日受け取ったチラシ束を見ると、分厚いのにB5判はヨーロッパ企画『来てけつかるべき新世界』だけだった。彼らは映像も活動の中心に置いているカンパニーなので、映画と同じB5判にこだわっているのだろう。今回の『来てけつかるべき新世界』は、串揚げ屋の店内を飛び回るドローンのビジュアルが素晴らしく、同カンパニーの歴代公演チラシでもベストだと思う(アートディレクション/堀口努、宣伝写真/有本真紀)。チラシ束に埋没することなく、光り輝いていた。

タイトルの背景や店内風景で白い部分が多いのも、目立つ理由になっている。演劇チラシの場合、全面カラーのものが多く、チラシ束でそんなA4判チラシが次に来ていると、白ベースのB5判チラシが浮き上がるのだ。B5判チラシをつくる際は、チラシ束で下のA4判をいかに〈借景〉にするかまで考えること。チラシはそれ一枚で完成した作品なので、チラシ束に折り込んだ状態まで考えているグラフィックデザイナーが少ないように私は思う。

とにかく、いまチラシをB5判でつくると目立つということだ。A4判がデファクトスタンダードと思われている環境で、わざわざB5判でつくるところに深い思慮や強い信念を感じる。多くの観客にとって、A4判はビジネスで使うサイズだ。気分転換したい劇場で、本当ならあまり出会いたくないサイズかも知れない。そんな中でB5判のチラシを見ると、なごみがあり、「舞台のチラシはこうであって欲しい」と思わせる効果がある。B5判にするだけで観客の好感度や注目度が上がるのなら、放っておく手はないだろう。

演劇チラシのサイズにA4判が多いのでは、決まりでもなんでもない。むしろ、変化を望まない制作者の悪習と言っていいかも知れない。かさばることを思えば、本当はB5判のほうがベターで、データ量(テキスト量)の増加とチラシ束への対応から、A4判が主流になったに過ぎない。みんなが真似をすれば、逆に目立たなくなる。トレンドは回帰していくものだ。いまこそ、逆にオシャレなB5判チラシを復活させるチャンスなのだ。

チラシ束を雑誌に例えると、特集関連のページを違う判型で中綴じする場合を思い浮かべてほしい。判型を小さくすることで逆に目立つ。用紙の選択に配慮すれば、分厚いA4判のチラシ束でも、そこで手を止めてもらえるようなB5判チラシをつくることは充分可能だと思う。

まだイメージの定まっていない旗揚げカンパニーやユニットは、チラシの判型をどうするか、最初にきちんと議論したほうがいい。もし、私がいま旗揚げカンパニーのチラシを手掛けるなら、団体の理念が伝わるようなB5判にするだろう。私自身が90年代前半にチラシをB5判からA4判に変える流れをつくった制作者の一人だ。だからこそ、今度はB5判に回帰するときではないかと感じるのだ。

『演劇ぶっく』も今月から誌名を『えんぶ』に改め、判型を従来のA4判からB5判にスリム化した。これもトレンドだと思う。

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(2016年10月10日追記)

A4サイズのチラシラックを備えた劇場だと、B5判だと重なって見えなくなるが、そうした劇場には底上げ用パーツを自作して持ち込めばよい。例えば、角2のマチ付き封筒の上半分をカットし、底面に高さ4cmの発泡スチロール角柱を接着したものに入れてセットすれば、下駄を履いた状態になって高さが揃う。