演劇の創客について考える/(5)中劇場協議会と自主事業中心の公共ホールが結束し、ブルーノート東京のようなフリーペーパーを発行出来ないか

カテゴリー: 演劇の創客について考える | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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●分割掲載です。初めての方は(予告)から順にご覧ください。

The Blue Note Tokyo

日本を代表するジャズクラブ、ブルーノート東京が発行している月刊スケジュールがあります。以前はタブロイド判のフリーペーパー「Blue Note Tokyo」でしたが、昨年3月からA4判のフリーマガジン「BLUE NOTE TOKYO JAM」に変わりました。私はタブロイド判の雰囲気が好きで、リンク先のeBookをぜひ見ていただきたいと思います。

発行日から2か月半先のスケジュールと見どころ、前号のライブリポートやインフォメーションが掲載されていますが、演劇もこのクオリティのフリーペーパーが出せれば、相当イメージが変わるのではないかと思います。

ブルーノート東京のフリーペーパーが充実して見える理由として、紹介するライブの数と情報量があると思います。ライブは長くても4日間なので、掲載期間中の公演は多数ありますし、それぞれを音楽ライターや評論家が丁寧な紹介記事にしています。概算ですが、1本の記事だけで一般雑誌の演劇欄全体に相当するくらいの文字数があるのではないでしょうか。選び抜かれた写真と共に眺めていると、たまにはジャズもいいと思えてくるのではないでしょうか。

これまでも、各劇場がスケジュールを共同編集したり、地域全体で「PLAYBILL」のようなフリーペーパーを出せないか、繰り返し議論されてきたと思います。「PLAYBILL」日本版は2006年に東京で創刊が試みられましたが、定着せずに休刊しています。私は、創客を考えるなら単に情報をまとめるだけでは効果がなく、ブルーノート東京のように、いかに付加価値のある紹介が出来るかだと感じます。ブルーノート東京のチャージは安いもので6千円、著名なアーティストなら数万円レベルです。これにフードやドリンク代がかかるわけで、中劇場以上のチケット代に相当します。言い換えれば、それに見合った宣伝物が必要なのです。

これを東京の演劇界で実現するなら、中劇場協議会と自主事業中心の公共ホールが結束し、直近2か月半から自信作を1~2本ずつ選び、濃密な取材記事で構成されたフリーペーパーを発行するイメージでしょうか。公共ホールの自主事業でも、チケット代6千円以上はめずらしくありませんので、もはや民間劇場の中劇場協議会と手を組み、一緒になって創客の活動を行なうべき時代だと思います。発行費用は、各劇場が独自に作成していた宣伝物を削減したり、貸館作品を紹介する場合はその主催者から宣伝費を出してもらってもいいと思います。

東急「二子玉川駅」ラック

東急「二子玉川駅」コンコースに設置された「BLUE NOTE TOKYO JAM」ラック

ブルーノート東京のフリーペーパーが優れている点として、その設置場所も挙げられます。劇場の宣伝物というと、どうしても劇場周辺に置かれがちです。その街の劇場なので当然のことかも知れませんが、本当に創客を考えるなら、最寄り駅の沿線ターミナルに置かれるべきですし、全く接点がないけれど注目される場所に置くべきだと思います。そうして通行人の目に触れ続けることで、いつの間にか意識の片隅に置かれるようになり、ふとしたきっかけでイベントの選択肢になるのではないでしょうか。

ブルーノート東京では、店頭以外に東京メトロの8駅、そして東急「二子玉川駅」に設置しています。東京メトロは都心ですが、二子玉川は23区の西端です。ブルーノート東京の最寄り駅が「表参道駅」になるので、東急田園都市線で乗り換えなしで行ける二子玉川に設置したのだと思いますが、都心から離れた二子玉川のコンコースで非常に目立ちます。他のフリーペーパーのようにすぐなくなることはありませんが、静かにジャズファンを増やすことに貢献しているのではないかと想像します。ラックは柱に埋め込まれ、チープさがないことも魅力です。

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