この記事は2010年11月に掲載されたものです。
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候補作が上演台本中心となったいま、白水社は岸田戯曲賞の推薦・選考時期をずらすべきではないか

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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演劇関係者による岸田戯曲賞候補の推薦締切が今週だった。例年12月下旬に最終候補作が発表され、1月下旬~2月上旬に選考会が開かれて決定するスケジュールだが、そうなると11月下旬~12月に上演された作品はどうなるのだろうか。

白水社の公式サイトでは、「選考対象は、原則として1年間に雑誌発表または単行本にて活字化された作品とする。ただし、画期的な上演成果を示したものに限って、選考委員等の推薦を受ければ、生原稿・台本の形であっても、例外的に選考の対象とすることがある」とあるが、近年は小劇場系の上演台本が多数を占めており、そうなると11月下旬~12月に上演された作品の扱いが気になる。

これはと思われる戯曲があれば、上演前でも白水社や選考委員に送って読んでもらう手はあるが、それなりにコネがないと難しいだろう。となると、無名の若手が12月に素晴らしい作品を上演しても、通常の推薦ルートは締め切られていることになる。結果的に岸田戯曲賞の対象にならないことになる。

その1年間の作品を対象にするのなら、そもそも12月下旬に最終候補作を発表するのが早すぎるのではないか。活字化された作品が中心だった時代は、早めにゲラなどが入手出来ただろうが、いまや最終候補作すべてが上演台本となっている。「例外的に選考の対象とすることがある」ではなく、上演台本のほうが普通なのだ。12月末までの上演作品を観た上で、1月上旬に推薦締切、2月下旬に最終候補作発表、3月下旬に選考会とすべきではないか。

いまのままだと、岸田戯曲賞狙いの意欲的な作品は11月下旬以降は上演されないことになるかも知れないし、実際この時期を避けている劇作家もいるかも知れない。戯曲賞によって上演時期が左右されるなんて、本末転倒な話だと思う。そしてなによりも、こうしたことを知らずに12月に素晴らしい作品を上演する無名の若手にチャンスを与えたい。