fringe[ナレッジ]に長期連載中の「カンパニーを進化させ集客へと導く具体的な方法」は、集客のコツを具体的事例を元に解説したものですが、これとは別に創客について考える連載を「fringe blog」で始めようと思います。
集客は、すでにある観劇人口のパイを奪えばいいのですから、動員の少ない若手カンパニーでも積極的に取り組めば必ず達成出来ます。同じ観客をリピーターにして、1公演で何回でも観てもらい、延べ動員数を増やす手もあります。「どんなカンパニーでも東京なら3,000人動員出来る」というのが私の持論です。
これに対し創客は、普段劇場に足を運ばない人に観劇体験をさせることです。非常にハードルが高いですが、これが実現しないと観劇人口のパイが増えることはなく、演劇をライブで観る人の数は「じり貧」になっていくでしょう。「観たい人だけが観ればいい」「わかってくれる人だけが観ればいい」という考えでは、演劇に明日はありません。演劇という表現を残したいのなら、演劇を愛しているのなら、創客について考えましょう。
観客の動向に関する統計では、ぴあ総合研究所『ぴあライブ・エンタテインメント白書』が小劇場も対象にした貴重なデータでしたが、2011年以降は業界関連団体の委託による非公開の調査となっています。11年の結果については、経済産業省の委託による「ライブ・エンタテインメントに関する調査研究報告書」が13年に発表されており、これが現在一般で入手可能な最新のものです。
これを見ると、ステージ全体(ミュージカル、演劇、歌舞伎/能・狂言、お笑い/寄席・演芸、バレエ/ダンス、パフォーマンス)では増加しているジャンルもありますが、演劇は明らかに減っています。ステージでキャパ200名未満(「100未満」「100以上200未満」の合計)の会場を見ると、05年から100万人を割ったままです。小劇場演劇の多くはここに該当すると思います。グラフにしてみると次のようになります。
創客の答えは一つではありません。単体の芸術団体や劇場が努力しただけで人の意識が変わるほど、簡単なものではないでしょう。演劇界全体の課題として、それぞれの人間がそれぞれの立場で出来ることを積み重ねていく――そうした性質のものだと思います。思考錯誤しながら、どんな可能性があるのか、ヒントを模索するような連載にしたいと思います。答えのない連載なので、場所は「fringe blog」がいいでしょう。
本連載は、カテゴリーを「演劇の総客について考える」とし、件名にも「演劇の創客について考える」を付けます。fringe「カンパニーを進化させ集客へと導く具体的な方法」は集客、fringe blog「演劇の創客について考える」は創客の連載です。