この記事は2021年7月に掲載されたものです。
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「アイホールの存続を望む会」に賛同します

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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7月21日、下記の記事が報じられ、「アイホールの存続を望む会」が活動を開始した。

毎日新聞ニュースサイト「関西の小劇場拠点アイホール、伊丹市が用途転換検討 存続へ署名活動」
神戸新聞NEXT「市立演劇ホールの存続へ会発足、署名活動を展開 伊丹の『アイホール』」

公共ホールの存続についての議論はこれまでもあったが、自主企画を中心とした運営体制が伴わない場合、fringeでは賛同を見送ってきた。だが、今回は違う。AI・HALLは全国のお手本となるべき運営を続けており、地元だけではなく、関西を代表する創造型劇場の役割を担っている。

もちろん、1988年11月の開館から32年以上が経過し、バブル期に建てられた豪華な劇場の大規模改修をどうするかという現実的な課題はある。当時の財政を支えた尼崎競艇(伊丹市は競艇施行者)からの繰入金は激減している。しかし、関西全体の創造型劇場とも言えるAI・HALLを、伊丹市の人口だけを基準にした公共施設マネジメントで語るのは、どうしても釈然としない。AI・HALLの専門的な評価を伊丹市民の誇りにつなげ、その専門性を街の魅力とする視点・指標が必要なのではないだろうか。「伊丹モデル」とも言うべき、新たな施策が出来ないものだろうか。

これらを踏まえ、「アイホールの存続を望む会」に賛同し、下記のコメントを送った。

財源が豊かであった時代に建てた文化施設が大規模改修を迎え、専門性の高さから市民の利用度が低いという課題は、今後全国で多く発生する事案だと思います。私たちはこれを伊丹市だけのことではなく、自分事として考えていかなければならないと思います。

AI・HALL(アイホール)の実績は、舞台芸術関係者なら誰もが認めるところだと思います。ならば、それをどうやって市民の誇りにつなげるか、どうやって継続するための財源を確保するかを考えるべきだと思います。最初から用途転換ありきのサウンディング型市場調査をかけるのは、本末転倒ではないでしょうか。これでは、駅前の一等地は文化施設にはもったいないと判断しているのと同義になってしまいます。

AI・HALLが果たしてきた創造型劇場の役割は、本来なら他の関西の大都市が担うべきところを、一手に引き受けてきた感があります。近年は地域住民に向けたプログラムも充実し、存在そのものが全国の公共ホールのお手本になっていると思います。これは施設だけでなく、長年培われた運営能力の高さの賜物です。

80年代後半から90年代前半にかけ、次々と専門文化施設をオープンさせた伊丹市は、関西に住んでいた私にとって憧れの街でした。大都市のベッドタウンではなく、文化の街として独自性を発揮していこうとする矜持を感じました。その専門性の高さが専門人材を育て、利用者の評価を生み、伊丹市の名前を全国に響かせているのだと思います。こうした強みを、いまこそ活用すべきではないでしょうか。

利用者に占める市民の比率が約15%という数字は、ベッドタウンにも関わらず、他地域からの集客を得ているわけで、AI・HALLが観光資源であることを示しています。採算性や大規模改修の課題は、全国の舞台芸術ファンに向けて、ふるさと納税や基金の設立を呼び掛けるべきではないでしょうか。駅前の立地は、全国から観劇と観光を組み合わせたツアーに最適ではないでしょうか。これだけの施設を長年維持されてきた伊丹市に感謝すると共に、これからはその負担を全国で分かち合えばいいと思います。

AI・HALLは伊丹市だけでなく全国の宝です。その宝を守り続けるための施策を、ぜひ考えていただきたいと思います。

荻野達也
fringeプロデューサー