演劇の創客について考える/(13)書店の在り方を一から考え直す『これからの本屋』、演劇の世界に通じる発想だらけ

カテゴリー: 演劇の創客について考える | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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●分割掲載です。初めての方は(予告)から順にご覧ください。

本が売れなくなっています。書店自体もネット書店に押され、リアル書店は激減しています。出版科学研究所(公益社団法人全国出版協会)の調査によると、2015年の紙の出版物の推定販売額前年比は、1950年の調査開始以来最大の減少率5.3%で、850億円が失われた計算になります。これはジュンク堂や有隣堂クラスの大型チェーンが2社潰れたのと同じ規模だそうです。全国の自治体の17%が「書店ゼロ」だそうです。

エキサイトニュース「紙の出版物、落ち込みが止まらない。本屋も激減し、雑誌は前年比91.6%」

これは演劇業界に通じるものがあると思います。なにもしなければ、読者は減るだけです。そんな厳しい現状に対し、今年5月1日に発行されたのが北田博充著『これからの本屋』(書肆汽水域)です。

書肆汽水域という版元は聞いたことがないと思います。著者の北田氏が今年取次会社を退職し、自ら立ち上げた版元だからです。『これからの本屋』はその1冊目になります。

この本はワークブック形式で、書店の定義・空想・企画・独立について、様々な角度から考えていきます。店舗を持たない「エア本屋」や書店に属さない「フリーランス書店員」などの新しい働き方、こんな書店があったらという「理想の本屋」、北田氏が取次時代に実施した画期的な販売方法など、どれも刺激的な内容です。きっと創客のヒントになるでしょう。

北田氏のアイデアは、皆さんもすでに目にしているかも知れません。次の企画も北田氏が関わっていたものです。

『これからの本屋』あとがきには、こう書かれています。

 本屋というのは一体何者なのだろう。結局、答えは出ないままだ。でも、今なんとなく感じているのは、「本を売ること」だけが本屋を定義するものではない、ということだ。本屋という名称は「場所」をさす言葉ではなく、「人」をさす言葉なのではないだろうか。

(中略)

 本屋という「人」がやるべきことは、本と人とをうまく出会わせることだと思う。あの手この手で本の良さを引き出したり、本の新たな価値を見出したり、本と人とをマッチングさせたりすることで、本を読む人はどんどん増えていくのではないだろうか。ばくはそういう本屋になれればと思う。

制作者にも同じ言葉を贈りたいです。

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