この記事は2011年9月に掲載されたものです。
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身内客には招待客も含まれる

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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fringe[ナレッジ]で連載中の「カンパニーを進化させ集客へと導く具体的な方法」の第3回「ロビーでの面会を禁止する」について、Next Online「News-Headline」が補足として、身内客にはマスコミや劇場関係者などの招待客も含まれると書いている。

これはそのとおりで、「カンパニーを進化させ集客へと導く具体的な方法」は集客に苦しむ若いカンパニーのために書いているものなので割愛したが、知名度が上がってきたカンパニーでは終演後にロビーが招待客であふれていることがある。

「News-Headline」では、その対策として「ロビー以外での面会」に加え、関係者向けの「プレビュー公演」「公開ゲネプロ」を提案している。素晴らしいアイデアだ。「プレビュー公演」「公開ゲネプロ」と聞くと、商業演劇やメジャーなカンパニーの専売特許のように聞こえるかも知れないが、伸び盛りの若手小劇場カンパニーでもどんどんやればいい。「News-Headline」が書いているとおり、一般客との分離につながるだけでなく、公演日程の最初に観ていただくので、その後のパブリシティや作品へのフィードバックも見込める。いいこと尽くめなのだ。そうして全席自由の座席に貼ってある「関係者席」の紙、あれを全廃しようではないか。

終演後のマスコミや劇場関係者は演出家が目当てだ。このため、演出家が俳優を兼ねずにロビーで見送りをするようなカンパニーで、この問題は起きやすい。注目を集めているカンパニーが、大きめの劇場で初公演するようなタイミングが最悪だ。ステージ数が減ってしまうため、普段の小劇場以上に招待客が偏るからだ。私もザ・スズナリの動線をふさいで話し込んでいる演出家、ここは招待客のサロンかと見まがうようなシアタートラムのロビーを何度も経験した。「News-Headline」の筆者も同じ思いではないか。

一度招待客に話しかけられると、むやみに話の腰を折るわけにもいかず、周囲を見渡せなくなってしまう。演出家にとっては、そこから新しい取材や企画が生まれることもあり、邪険に出来ない。だからこそ、一般客との分離を目指して知恵を絞るべきではないか。ロビーの雰囲気をよくして演劇ファンを増やすため、招待客自身も自覚を持つべきだろう。若手カンパニーの場合、こうしたことが未経験なので、劇場側も積極的にアドバイスすべきだと思う。

私の場合、招待されても動線をふさぎたくないので、ロビーで自分から話しかけることはない。終演後もすぐ帰るので、よく「作品がつまらないから帰った」と思われているようだが、そんなことはない。素晴らしい作品ほど、誰とも会話せず、一人で余韻を噛み締めたいタイプなのだ。追いかけてきて感想を訊こうとする制作者もいるが、やめていただきたい。終演後すぐに感想が言えるわけがない。