この記事は2011年9月に掲載されたものです。
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いまこそ劇場法(仮称)への意見を持つとき

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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「ネットTAM」の「アートマネジメント事始め」に、「劇場法(仮称)入門」を連載させていただいている。概要と経緯を書いた2回分が掲載済みで、次回が課題となる。これを機に、更新していなかった「劇場法(仮称)に関する議論まとめ(2011年9月25日現在)」を掲載した。劇場法(仮称)は、早ければ2010年秋の臨時国会に提出されると言われていただけに、前回が最後の更新と思っていたが、実際には「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)」に沿って検討会がつくられ、現状の分析が続いている。この時間を利用して、劇場法(仮称)について演劇人全員が認識を深めてほしいと思う。

課題の執筆のため、私も繰り返し劇場法(仮称)の功罪を考えている。原稿はすでに書き終えたが、現在進行形のテーマだけに、直前まで推敲したいと思う。「入門」なので客観性を心掛けているが、課題を並べてみると、この法律に対する議論がまだまだ不足しているように感じてならない。総論賛成各論反対と言われるその各論部分を、推進派と慎重派が真摯に話し合うべき時期だと思う。民主党政権発足と共に劇場法(仮称)の可能性が高まって約2年、芸団協や平田オリザ氏の活躍で内容への理解も深まった。いまは各人が意見を持ち、それを表明する時期だと思う。

「まとめ」にも記したが、様々な企画を通して現場の声も届くようになった。先進的と思えるホールで芸術監督制に慎重な意見が目立ったり、劇場の新たな役割を提言するなど、推進派にとって意外な展開もあった。こうした意見に耳を傾け、芸団協も必要に応じてアクションを起こすべきである。例えば、私自身は芸術監督は常勤が絶対条件だと思っている。非常勤の芸術監督を迎えるくらいなら、その原資で制作スタッフを複数雇って育成すべきだと思う。けれど、そうした勤務条件まで条文に書くべきか疑問だし、そもそも本当に芸術監督は不可欠なのかを、推進派と慎重派が討論する場があっていいのではないか。

私は劇場法(仮称)は必要だと考えているが、不要という意見も無視してはならないと思う。表現の自由に関わるだけに、新たな法律の制定に慎重になるのは当然のことだ。推進派の中には時代遅れと笑う人もいるが、むしろそれくらいの意識で臨んだほうがいいのではないか。そして、どう説明すれば相手が納得するかを考えるべきだ。具体的な条文案ももっと出てきていいと思う。確かに法案づくりは特殊な能力が必要だが、具体的な文言がなければ議論が進まないからだ。

各論部分の参考になればと思い、「劇場法(仮称)は必要だと思いますか?」というミニアンケートを設けた。理解も深まったいまこそ問うべきと考えたからだ。「必要だが課題あり」「不要」と答えた方には、その理由も選んでいただいている。選択肢はこれまで出てきた各論部分から代表的なものを網羅した。「必要」と答えた方も、この選択肢に対して反駁出来るかを考えていただきたい。

可能な方は検討会を傍聴するのもいいだろう。開催数日前に文化庁サイトで発表され、メールで申し込む形式だ。どのような雰囲気で進んでいるのか、推進派の方にこそ知っていただきたい。