平成16年度下半期(第132回)の芥川賞は阿部和重氏、直木賞は角田光代氏が取ったわけですが、ご存知のとおり両氏は演劇と深い関係があります。阿部氏は渋谷シードホール勤務、角田氏も早稲田で学生劇団に入っていました。
角田氏は「剣菱」を清酒の銘柄と知らず、公演祝いに先輩から「剣菱に」と言われたのを「のし紙をかけろ」の意味だと思い込み、以後10数年間、酒屋でワインや焼酎やウイスキーを「ケンビシにしてください」と言い続けてきたそうです(エッセイ『これからはあるくのだ』より)。ネタのような話ですが、本当のようです。
作品のモチーフにも演劇が使われています。これなら演劇人と呼んでもいいはずで、私は「芥川賞・直木賞は演劇人独占!」「演劇人が文壇を牛耳る!」などという見出しが踊るのを楽しみにしていたのですが、発表から2か月、ここに焦点を当てた記事は見かけませんでした。
残念だなあ。世間がもっと小劇場に注目するように、演劇人はすごいんだぞ、演劇関係者は才能の宝庫だぞ、と私は叫びたい。仕方がないので、ここに改めて書きます。今回の芥川賞・直木賞は小劇場育ちです。